あへん煙に関する罪

あへん煙に関する罪
法律・条文 刑法136条-141条
保護法益 公衆の健康
主体 人、138条に関しては税関職員(不真正身分犯)
客体 あへん煙、あへん煙を吸食する器具
実行行為 輸入・製造・販売・所持・吸食等
主観 故意犯、所持に関しては目的犯
結果 抽象的危険犯
実行の着手 各類型による
既遂時期 各類型による
法定刑 各類型による
未遂・予備 未遂罪(141条)
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あへん煙に関する罪(あへんえんにかんするつみ)とは、刑法に規定された犯罪類型の一つである。「第十四章 あへん煙に関する罪」に規定があり、あへん煙の吸食やそれを助長する行為等を内容とする。未遂犯も処罰される(141条)。

概要[編集]

公衆の健康を保護法益とする抽象的危険犯であり、社会的法益に対する罪に分類される。薬物犯罪については、各種特別法が整備されており、現在、本罪の規定が活用される場面はほとんどないが、薬物犯罪の基本法である。なお、改正刑法草案では、刑法典からあへん煙に関する罪が削除されており、すべて特別法に委ねている。

本罪にいう「あへん煙」とは、吸食用として製造されたあへん煙膏をいい、その原料である生あへんを含まない。生あへんについては、あへん法で取り締まられている。また、本罪とあへん法における犯罪は一部重複しており、あへん法に定める罪と競合する場合には、法定刑が重い方によって処罰される(あへん法56条)。

犯罪類型[編集]

あへん煙輸入等罪[編集]

あへん煙を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、6ヶ月以上7年以下の懲役に処せられる(136条)。

なお、あへん法には、あへんの輸入や営利目的の譲渡に関して1年以上10年以下の懲役(営利目的の輸入は、1年以上の有期懲役)に処すると定めており(あへん法51条1項3号、2項、及び52条1項、2項)、これらに該当する場合は、法定刑の重いあへん法によって処罰される。

あへん煙吸食器具輸入等罪[編集]

あへん煙を吸食する器具を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、3月以上5年以下の懲役に処せられる(137条)。

税関職員によるあへん煙輸入等罪[編集]

税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したときは、1年以上10年以下の懲役に処せられる(138条)。輸入規制を徹底するため、税関職員を特に重く処罰する規定である(輸入罪は不真正身分犯、輸入許可罪は真正身分犯である)。したがって「税関職員」とは、税関に勤務する職員すべてではなく、特にあへん煙等の輸入に関する事務に従事する職員をいう。

あへん煙吸食罪[編集]

あへん煙を吸食した者は、3年以下の懲役に処せられる(139条1項)。

なお、あへん法でもあへんの吸食を禁じており(あへん法9条)、法定刑は7年以下の懲役と定められているため(あへん法52条の2)、これに該当する場合は法定刑の重いあへん法に従って処罰される。

あへん煙吸食場所提供罪[編集]

あへん煙の吸食のため建物又は室を提供して利益を図った者は、6月以上7年以下の懲役に処せられる(139条2項)。 「あへん煙の吸食のため」とは、「吸食の用に供するため」という意味であり、行為者の目的を意味するのではない。また、実際に利益を得たかどうかは問わない。なお「あへん煙の吸食のため建物又は室」とは具体的にはすなわちあへん窟のことを暗に指しているものと思われる。

あへん煙等所持罪[編集]

あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を所持した者は、1年以下の懲役に処せられる(140条)。吸食の際に使用するあへん煙等の所持はあへん煙吸食罪が成立するにとどまり、重ねて本罪が成立することはない。ただし、以前からあへん煙等を所持していた者がそれを用いて吸食した場合は、吸食罪と本罪は併合罪である。

なお、あへんの所持はあへん法で7年以下の懲役と定められている(あへん法52条)ため、これに該当する場合は法定刑の重いあへん法に従って処罰される。

関連項目[編集]