アブルッツォ州

アブルッツォ州
Regione Abruzzo
アブルッツォ州の州旗アブルッツォ州の紋章
アブルッツォ州の州旗アブルッツォ州の紋章
イタリアの旗 イタリア
地域イタリア南部
州都ラクイラ
面積10,794 km²
人口1,342,366 [1]2011-01-01
人口密度124.4 人/km2
ラクイラキエーティ
ペスカーラテーラモ
コムーネ305 (一覧
公式サイト[1]

アブルッツォ州: Abruzzo)は、イタリア共和国中部のアドリア海沿岸にあるアブルッツィAbruzzi)とも呼ばれる。州都はラクイラ

地理[編集]

位置・広がり[編集]

イタリア半島の中部、アドリア海側に位置する州。州都ラクイラは州北西部に位置する内陸都市で、首都ローマから北東へ約92km、ペルージャから南東へ約118km、アンコーナから南へ約141km、ナポリから西北西へ約182kmの距離にある。

隣接する州は以下の通り。

ローマのあるラツィオ州の北東に位置し(州域西端はローマから50kmほどの距離である)、地理的には中央イタリアに分類されることもある。中世から長年にわたってナポリ王国の領域にあったことから、文化・経済面は南イタリアとの結びつきが非常に強い。国立統計研究所(ISTAT)が用いる統計上の区分ではイタリア南部Italia Meridionale)に分類されている。

地勢[編集]

グラン・サッソ
アブルッツォ州の地勢。山岳・丘陵の割合を示す

アブルッツォ州は、イタリア半島を縦断するアペニン山脈の中央部からアドリア海までの広がりを持ち、土地は山がちで不毛である。内陸部は広い台地によって占められている。州の最高峰はグラン・サッソ山塊のコルノ・グランデ(2,912 m)であり、このほかにマイエッラ山 (Maiella(2,793 m) などの山が連なる。海岸は、北部では長い砂浜が特徴であり、南部の海辺では小石が多いのが特徴となっている。

主要な都市[編集]

アブルッツォ州

人口4万人以上のコムーネは以下の通り。人口は2011年1月1日現在[1]

歴史[編集]

アブルッツォ州地域の歴史的行政区分。紫の線は紀元前27年に設置された古代ローマのイタリア本土第4行政区サムニウム (it:Regio IV Samnium

アブルッツォという地域名は、ラテン語の Aprutium から来ており、これは現在のテーラモ付近にいた Praetutii という氏族に由来する。

中世にはシチリア王国(のちナポリ王国)の統治下に入った。1231年、シチリア王(神聖ローマ皇帝でもあった)フリードリヒ(フェデリーコ)2世は、地方に司法・行政を掌る「司法官」 (it:Giustiziere (funzionario)を配置することを定めた。1233年、領土最北部の司法官管区 (it:Giustizieratoとしてアブルッツォ (it:Giustizierato d'Abruzzoを置いた(首府:スルモーナ)。1273年、この区画はカルロ1世(シャルル・ダンジュー)によって、アブルッツォ・ウルトラ (it:Abruzzo Ultra(首府:ラクイラ)とアブルッツォ・チトラ (it:Abruzzo Citra(首府:キエーティ)に分割された。「ウルトラ」と「チトラ」は、アテルノ=ペスカーラ川 (it:Aterno-Pescaraの「越えた側」・「手前側」を意味する。

1806年、ナポレオン時代のナポリ王国(当時の国王はジョゼフ・ボナパルト)の行政改革に際して、アブルッツォ・ウルトラが東の「第一」 (it:Abruzzo Ulteriore Primo(首府:テーラモ)と西の「第二」 (it:Abruzzo Ulteriore Secondo (首府:ラクイラ)に2分割された。この地域のアブルッツォと冠する行政区画はイタリア統一によって両シチリア王国(1816年成立)が消滅するまで維持された。

1861年に成立したイタリア王国は、地方行政区画として県を置いたが、おおむねアブルッツォ・チトラがキエーティ県、アブルッツォ・ウルトラ第一がテーラモ県、アブルッツォ・ウルトラ第二がラクイラ県(当時はアクイラ・デッリ・アブルッツィ県)に引き継がれた。

1927年、郡 (it:Circondario (Regno d'Italia)の廃止や県の統廃合といった行政区画の再編が行われたが、この際、19世紀後半から急速に発展したキエーティ県下の港湾都市ペスカーラを県都とするペスカーラ県が発足した(キエーティ県とテーラモ県の一部を分割)。また、アクイラ・デッリ・アブルッツィ県の一部(チッタドゥカーレアマトリーチェなど)が割出され、ローマ県下にあったリエーティを県都とするリエーティ県(現在はラツィオ州所属)が編成されている。

第二次世界大戦後の1948年、アブルッツィ・エ・モリーゼ州 (it:Abruzzi e Molise(州都:ラクイラ)が編成された。1964年1月、アブルッツィ・エ・モリーゼ州が分割され、アブルッツォ州とモリーゼ州が成立。

2009年4月6日、ラクイラ県を中心としてラクイラ地震が発生し、イタリア中部に大きな被害がもたらされた。同年7月のイタリアがホスト国となる主要国首脳会議は、国際的な被災地支援を呼びかけるため、開催地を急遽ラクイラに変更して開催された。

行政区画[編集]

アブルッツォ州と各県

アブルッツォ州は以下の4県からなる。

左端の数字はISTATコード、アルファベット2文字は県名略記号を示す。人口は2011年1月1日現在[1]。面積の単位はkm²。

県名 綴り 県都 面積 人口
066 AQ ラクイラ県 L'Aquila ラクイラ 5,035 309,820
067 TE テーラモ県 Teramo テーラモ 1,948 312,239
068 PE ペスカーラ県 Pescara ペスカーラ 1,225 323,184
069 CH キエーティ県 Chieti キエーティ 2,588 397,123

文化[編集]

言語[編集]

ナポリ語の諸方言
ナポリ語の諸方言。Iがアブルッツォ方言
中央イタリア方言の諸方言
中央イタリア方言の諸方言。IVがサビーノ方言

2006年の国立統計研究所(ISTAT)の統計によれば、6歳以上の住民の家庭内での会話における言語状況は以下の通り[2]。イタリア語(Italiano)、地方言語(Dialetto)、他の言語(Altra lingua)についてのデータで、左列が全国平均、右列がアブルッツォ州の数値である。

家庭内の会話における使用言語 全国
イタリア語のみ、あるいは主にイタリア語 45.5% 37.1%
地方言語のみ、あるいは主に地方言語 16.0% 20.7%
イタリア語と地方言語の双方 32.5% 38.3%
他の言語 5.1% 2.6%

アブルッツォ方言イタリア語版ナポリ語の方言と分類される。州西部では中央イタリア方言サビーノ方言イタリア語版が話される。ラクイラおよびその近郊では、サビーノ方言の小区分であるラクイラ方言が話されている。

食文化[編集]

キタッラでつくられるスパゲッティ・アッラ・キタッラ

アブルッツォ料理 (it:Cucina abruzzeseの代表的なものの1つは、スパゲッティ・アッラ・キタッラ(マッケローニ・アッラ・キタッラとも) (it:Spaghetti alla chitarraである。この特徴的なパスタは、キタッラと呼ばれる弦を張った器具の上に、薄く伸ばしたパスタ生地を置き、麺棒で押して切ったもので、長い細い麺はスパゲッティと類似している。パスタはトマト・ベースのソースとともに供され、しばしばトウガラシ豚肉ガチョウ肉、羊肉などが加わる。

付け合わせとして地域ごとに特徴のあるサイドディッシュが出される。例えば、サーニェ・エ・ファジョーリ(sagne e fagioli) (Pasta e fagioliとして知られている豆とパスタのスープなどで、このスープは、トマト、ニンニク、オリーブオイルとペペロンチーニで風味をつけている。

トリュフの名産地でもあり、トリュフ犬という訓練されたイヌを使役して収穫が行われている[3]

スポーツ[編集]

サッカー[編集]

州内に本拠を置くプロサッカークラブとしては以下がある。所属リーグは2012-13シーズン現在。

5部リーグ(アマチュア最上位リーグ)のセリエDでは、エミリア=ロマーニャ州マルケ州モリーゼ州のチームとともにジローネFに属する。アブルッツォ州の地方リーグ(6部リーグ)として、エッチェッレンツァ・アブルッツォ (it:Eccellenza Abruzzoがある。

交通[編集]

主要な道路[編集]

アウトストラーダ

主要な鉄道[編集]

空港[編集]

アブルッツォ空港

主要な港湾[編集]

ペスカーラ港

人物[編集]

著名な出身者[編集]


関連項目[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c 国立統計研究所(ISTAT). “Total Resident Population on 1st January 2011 by sex and marital status” (英語). 2012年11月22日閲覧。
  2. ^ 国立統計研究所(ISTAT). “La lingua italiana, i dialetti e le lingue stranieri” (pdf) (イタリア語). p. 5. 2012年12月10日閲覧。
  3. ^ トリュフ犬30頭が毒殺被害 巨額が動く業界の裏事情”. CNN (2023年12月1日). 2023年12月2日閲覧。

外部リンク[編集]