イガ・シフィオンテク

イガ・シフィオンテク
Iga Świątek
2019年全仏オープンでのイガ・シフィオンテク
基本情報
国籍 ポーランドの旗 ポーランド
出身地 同・ワルシャワ
生年月日 (2001-05-31) 2001年5月31日(22歳)[1]
身長 176cm[1]
利き手
バックハンド 両手打ち
ツアー経歴
デビュー年 2018年
ツアー通算 19勝
シングルス 19勝
ダブルス 0勝
生涯獲得賞金 27,068,071 アメリカ合衆国ドル
4大大会最高成績・シングルス
全豪 ベスト4(2022)
全仏 優勝(2020・22-23)
全英 ベスト8(2023)
全米 優勝(2022)
優勝回数 4(仏3・米1)
4大大会最高成績・ダブルス
全仏 準優勝(2021)
全米 2回戦(2019)
4大大会最高成績・混合ダブルス
全豪 ベスト8(2020)
キャリア自己最高ランキング
シングルス 1位(2022年4月4日)
ダブルス 29位(2022年2月14日)
2024年3月18日現在

イガ・ナタリア・シフィオンテクポーランド語: Iga Natalia Świątek[2], [ˈiɡa ˈɕfʲɔntɛk]; 2001年5月31日 - )は、ポーランドワルシャワ出身の女子プロテニス選手。WTAツアーでシングルス19勝、自己最高ランキングはシングルス1位、ダブルス29位。右利き、バックハンド・ストロークは両手打ち。

ポーランド人選手初のグランドスラム優勝者。グランドスラム4勝、WTA1000トーナメント8勝。

選手経歴[編集]

ジュニア時代[編集]

父はソウルオリンピックに出場したこともある元ボート競技者で、子供たちにも競技者になってほしいという思いと、姉が先に始めていたことから、5歳でテニスを始める[3]。ジュニア時代はキャティ・マクナリーと組んだ2018年全仏オープンジュニア女子ダブルスと2018年ウィンブルドン選手権ジュニア女子シングルスで優勝した。また、ポーランド代表としてジュニアフェドカップや2018年ブエノスアイレスユースオリンピックのダブルスも制している。[4]

2016-18年 ITF7度の決勝進出[編集]

2016年よりITF女子ワールドテニスツアーでプレーし、15歳で3回優勝。2018年末までに7回進んだ決勝では無敗。

2019年 ツアー初の決勝進出[編集]

2019年からWTAツアーのみに絞り、年始のハイネケン・オープンは予選落ちしたが、2019年全豪オープンの予選を突破して四大大会でWTAツアーデビューとなり、初白星も挙げた。その後は本選出場当落線上にいたが、4月のレディース・オープン・ルガーノで決勝進出のブレークスルーを見せ、17歳でトップ100入り。2019年全仏オープンは4回戦まで進出した。その後は元世界1位のキャロライン・ウォズニアッキを下したロジャーズ・カップの3回戦が最高だが、8月19日付のランキングで49位を記録してトップ50入りを果たしている。足の手術を受けるため、早めにシーズンを終えた[5]。年間最終ランキングは61位。

2020年 GS初制覇[編集]

2020年は全豪オープンで4回戦進出。3月より新型コロナウイルス感染症流行の影響でツアーが中断されたのち、再開後の全米オープンは3回戦まで。続くクレーコートシーズン、BNLイタリア国際は初戦敗退だったが、全仏オープンでは初戦で第15シードのマルケタ・ボンドロウソバを下すと、4回戦で第1シードのシモナ・ハレプをも圧倒し、勢いそのままに決勝では同年全豪覇者のソフィア・ケニンを6-4, 6-1で破り、ツアー初優勝にしてグランドスラム初優勝を成し遂げた[6]。グランドスラム制覇はポーランド人選手として初、同大会女子の10代優勝は1997年のイバ・マヨリ以来23年ぶり、ノーシード優勝は2017年のエレナ・オスタペンコ以来史上2人目の快挙である[7]。また、ダブルスではベスト4に入った。そのままシーズンを終え、年間最終ランキングは17位。

2021年 WTA初優勝 全仏ダブルス準優勝 世界4位[編集]

2021年全豪オープンも4回戦進出。続くアデレード国際では失セット0で決勝進出を果たすと、決勝でも第2シードのベリンダ・ベンチッチ相手に6-2, 6-2の完勝を収め、優勝した[8]

2021年5月に行われたBNLイタリア国際では、準々決勝ではエリナ・スビトリナに6-2, 7-5、準決勝ではコリ・ガウフに7-6(3), 6-3で勝利し、1日2試合を制した。そして続く決勝では同大会2019年優勝・前年準優勝のカロリナ・プリスコバ相手に6-0, 6-0のダブルベーグルで完勝し、自身初のWTA1000優勝を果たした[9]。この優勝により5月17日付のランキングで9位を記録。自身初のトップ10入りを果たした。

ディフェンディングチャンピオンとして挑んだ全仏オープンは、順調に勝ち進みベスト8入りするも、準々決勝でマリア・サッカリに4-6,4-6のストレートで敗れ、連覇はならなかった。また、ダブルスにおいても、第1シードのエリーズ・メルテンス/謝淑薇らを破って決勝に進出する強さを見せたが、決勝では第1シードで本大会単覇者のバルボラ・クレイチコバ擁するペアに屈し、準優勝に留まった。なお、この結果でダブルスでもトップ50入り。

東京オリンピックに出場し、39年前の父親と親子二代にわたるオリンピアンとなった。シングルスは2回戦敗退[10]、混合ダブルスはベスト8。

ウィンブルドン選手権と全米オープンで4回戦進出。WTAファイナルズに初出場した。

2022年 全米初優勝 37連勝 世界1位[編集]

2022年シーズンはまず全豪オープンでベスト4まで駒を進めると、2月のカタール・トータル・オープンで今季初優勝。以降シングルスで連戦連勝の快進撃を見せ、BNPパリバ・オープンマイアミ・オープンで連続優勝する"サンシャイン・ダブル"を史上最年少で達成[11]。4月4日に、アシュリー・バーティの引退に伴い世界1位に就く形となったが、一気に名実ともにナンバーワンとなった[12]。クレーシーズンでも勢いは止まらず、BNLイタリア国際で優勝して全仏オープンに乗り込み、6大会連続・全仏2度目の優勝を果たした[13]。この時点で破竹の35連勝となり、ビーナス・ウィリアムズが保持していたWTAの連勝記録に並んだ。グラスシーズンは、クレーシーズン途中から言及していた肩の違和感で前哨戦を欠場し[14][15]ウィンブルドン選手権は1回戦勝利で記録を更新したが、3回戦で敗れ、歴代最長記録となる連勝は37で止まった[16]

その後は3大会で4勝4敗とやや調子を落としたかに見られたが、全米オープンではオンス・ジャバーを6-2, 7-6(5)で降し初優勝[17]。ハードコートの全米で優勝したことで、「限界はないということを確認できたようにも思う」と話した[18]。続くオストラヴァ・オープンは準優勝、その次の南カリフォルニア・オープンで優勝。WTAファイナルズはベスト4だった。最終的に、年間最終ランキング1位、8大会優勝、マッチ68勝の圧倒的な成績を記録し、WTA年間最優秀選手を初受賞した[19]

プレースタイル[編集]

アグレッシブなオールラウンダー。ウィナーとアンフォーストエラーを量産する。クレーにおける自身の武器を「ビッグサーブ、トップスピン、バックハンド」としている[20]2020年全仏オープンにおいて、フォアハンドストロークの最高球速は参加者中2番目の127 km/hに達し、スピン量も3,453 rpmと、ラファエル・ナダルに匹敵する多さだった[21]。バックハンドの最速122 km/hは、男子最速のドミニク・ティエムに並ぶ速さだった[22]

タッチ技術も高く、ダブルスの経験からボレーが優れていることもさることながら、ベースラインからのドロップを不意打ちで出すなど戦術の幅も広く、このショットは2019WTAショット・オブ・ザ・イヤーに選出された[23]

人物[編集]

メンタルヘルス問題を重視しており、2021年には50,000ドルを、2022年にはオストラヴァ・オープンの獲得賞金全額を世界メンタルヘルスデーに寄付することを公表している[24][25]

趣味は読書と音楽視聴。読書は、アガサ・クリスティジョージ・オーウェルアレクサンドル・デュマ・ペールなどを好み、本は大会への集中とスマホ過剰使用を抑制する効果があるとしている[26]。音楽はロック好きで、ピンク・フロイドABBAAC/DCのファンである[20]

WTAツアー決勝進出結果[編集]

シングルス: 23回 (19勝4敗)[編集]

大会グレード
グランドスラム (4–0)
WTAファイナルズ (1–0)
WTA1000トーナメント (8–2)
WTAエリート・トロフィー (0–0)
WTA500トーナメント (5–1)
WTA250トーナメント (1–1)
結果 No. 決勝日 大会 サーフェス 対戦相手 スコア
準優勝 1. 2019年4月14日 スイスの旗 ルガーノ クレー スロベニアの旗 ポロナ・ヘルツォグ 3-6, 6-3, 3-6
優勝 1. 2020年10月10日 フランスの旗 全仏オープン クレー アメリカ合衆国の旗 ソフィア・ケニン 6-4, 6-1
優勝 2. 2021年2月27日 オーストラリアの旗 アデレード ハード スイスの旗 ベリンダ・ベンチッチ 6-2, 6-2
優勝 3. 2021年5月16日 イタリアの旗 ローマ クレー チェコの旗 カロリナ・プリスコバ 6-0, 6-0
優勝 4. 2022年2月27日 カタールの旗 ドーハ ハード エストニアの旗 アネット・コンタベイト 6-2, 6-0
優勝 5. 2022年3月21日 アメリカ合衆国の旗 インディアンウェルズ ハード ギリシャの旗 マリア・サッカリ 6-4, 6-1
優勝 6. 2022年4月3日 アメリカ合衆国の旗 マイアミ ハード 日本の旗 大坂なおみ 6-4, 6-0
優勝 7. 2022年4月24日 ドイツの旗 シュトゥットガルト クレー (室内) ベラルーシの旗 アリーナ・サバレンカ 6-2, 6-2
優勝 8. 2022年5月15日 イタリアの旗 ローマ クレー トルコの旗 オンス・ジャバー 6-2, 6-2
優勝 9. 2022年6月4日 フランスの旗 全仏オープン クレー アメリカ合衆国の旗 コリ・ガウフ 6-1, 6-3
優勝 10. 2022年9月11日 アメリカ合衆国の旗 全米オープン ハード トルコの旗 オンス・ジャバー 6-2, 7-6(7-5)
準優勝 2. 2022年10月10日 チェコの旗 オストラヴァ (室内) ハード チェコの旗 バルボラ・クレイチコバ 7-5, 6-7(4-7), 3-6
優勝 11. 2022年10月17日 アメリカ合衆国の旗 サンディエゴ ハード クロアチアの旗 ドナ・ベキッチ 6-3, 3-6, 6-0
優勝 12. 2023年2月19日 カタールの旗 ドーハ ハード アメリカ合衆国の旗 ジェシカ・ペグラ 6-3, 6-0
準優勝 3. 2023年2月26日 アラブ首長国連邦の旗 ドバイ ハード チェコの旗 バルボラ・クレイチコバ 4-6, 2-6
優勝 13. 2023年4月23日 ドイツの旗 シュトゥットガルト クレー (室内) ベラルーシの旗 アリーナ・サバレンカ 6-3, 6-4
準優勝 4. 2023年5月7日 スペインの旗 マドリード クレー ベラルーシの旗 アリーナ・サバレンカ 3-6, 6-3, 3-6
優勝 14. 2023年6月10日 フランスの旗 全仏オープン クレー チェコの旗 カロリナ・ムホバ 6-2, 5-7, 6-4
優勝 15. 2023年7月31日 ポーランドの旗 ワルシャワ ハード ドイツの旗 ラウラ・シグムント 6-0, 6-1
優勝 16. 2023年10月8日 中華人民共和国の旗 北京 ハード ロシアの旗 リュドミラ・サムソノワ 6-2, 6-2
優勝 17. 2023年11月6日 メキシコの旗 カンクン ハード アメリカ合衆国の旗 ジェシカ・ペグラ 6-1, 6-0
優勝 18. 2024年2月17日 カタールの旗 ドーハ ハード カザフスタンの旗 エレーナ・リバキナ 7-6(10-8), 6-2
優勝 19. 2024年3月17日 アメリカ合衆国の旗 インディアンウェルズ ハード ギリシャの旗 マリア・サッカリ 6-4, 6-0

4大大会シングルス成績[編集]

略語の説明
 W   F  SF QF #R RR Q# LQ  A  Z# PO  G   S   B  NMS  P  NH

W=優勝, F=準優勝, SF=ベスト4, QF=ベスト8, #R=#回戦敗退, RR=ラウンドロビン敗退, Q#=予選#回戦敗退, LQ=予選敗退, A=大会不参加, Z#=デビスカップ/BJKカップ地域ゾーン, PO=デビスカップ/BJKカッププレーオフ, G=オリンピック金メダル, S=オリンピック銀メダル, B=オリンピック銅メダル, NMS=マスターズシリーズから降格, P=開催延期, NH=開催なし.

大会 2019 2020 2021 2022 2023 2024 通算成績
全豪オープン 2R 4R 4R SF 4R 3R 17–6
全仏オープン 4R W QF W W 28–2
ウィンブルドン 1R NH 4R 3R QF 9–4
全米オープン 2R 3R 4R W 4R 16–4

脚注[編集]

  1. ^ a b WTAプロフィールより
  2. ^ Buenos Aires 2018 - Tennis - Women’s Doubles” (英語). International Olympic Committee (2018年10月24日). 2020年10月14日閲覧。
  3. ^ Swiatek follows father's footsteps 38 years later”. ausopen.com. 2020年10月10日閲覧。
  4. ^ Iga Swiatek Juniors Singles Activity”. www.itftennis.com. 2020年10月10日閲覧。 Iga Swiatek Juniors Doubles Activity”. www.itftennis.com. 2020年10月10日閲覧。
  5. ^ Swiatek follows father's footsteps 38 years later”. ausopen.com. 2023年2月10日閲覧。
  6. ^ 「なにが起きているのかわからない!」世界54位、19歳のシフィオンテクが全仏OPでツアー初優勝の偉業”. ニフティニュース. 2020年10月10日閲覧。
  7. ^ 全仏V「何が起きているのか」”. テニス365. 2020年10月10日閲覧。
  8. ^ 全仏女王シフィオンテクがアデレード国際制覇、ツアー2勝目”. www.afpbb.com. 2021年2月28日閲覧。
  9. ^ 5年ぶりの偉業!シフィオンテクがダブルベーグルで優勝[WTA1000 ローマ]”. テニスデイリー. 2021年6月15日閲覧。
  10. ^ 「イライラした」オリンピック2回戦敗退に涙のシフィオンテク [東京2020]”. tennismagazine.jp. 2023年2月10日閲覧。
  11. ^ 決勝での強さを発揮したシフィオンテクが史上4人目となる『サンシャイン・ダブル』を最年少で達成、文句なしの新世界ナンバーワン誕生劇 [マイアミ・オープン]”. tennismagazine.jp. 2023年2月10日閲覧。
  12. ^ 快進撃続くイガ・シフィオンテクが女子テニス界・次代の怪物へと変貌”. www.sportingnews.com. 2023年2月10日閲覧。
  13. ^ シフィオンテク、2度目の全仏OP優勝 ガウフに快勝”. www.afpbb.com. 2023年2月10日閲覧。
  14. ^ シフィオンテクが負傷欠場”. テニス365. 2023年2月10日閲覧。
  15. ^ シフィオンテク 前哨戦欠場”. テニス365. 2023年2月10日閲覧。
  16. ^ シフィオンテクの連勝が「37」でストップ、精彩欠き3回戦でコルネにストレート負け [ウインブルドン]”. tennismagazine.jp. 2023年2月10日閲覧。
  17. ^ 【全米オープン】シフィオンテク優勝 世界女王の重圧克服しポーランド選手初V「本当にすごい」”. nikkansports.com. 2023年2月10日閲覧。
  18. ^ シフィオンテク「限界はない」 全米OP制覇で自信”. www.afpbb.com. 2023年2月10日閲覧。
  19. ^ シフィオンテク 初の最優秀選手に”. テニス365. 2023年2月10日閲覧。
  20. ^ a b Insider Q&A: Iga Swiatek shines on in breakout Roland Garros run”. Women's Tennis Association. 2021年2月28日閲覧。
  21. ^ Iga Swiatek: Her top-spin, a new high for women’s tennis”. The Indian Express. 2021年2月28日閲覧。
  22. ^ Simona Halep dumped out of French Open by Polish teenager Iga Swiatek”. the Guardian. 2021年2月28日閲覧。
  23. ^ Swiatek's deft dropshot crowned 2019 WTA Shot of the Year”. Women's Tennis Association. 2021年2月28日閲覧。
  24. ^ Tennis star Iga Swiatek pledges to donate $50,000 prize money to World Mental Health Day”. CNN (2021年10月11日). 2023年2月11日閲覧。
  25. ^ WTA Ostrawa: wspaniały gest Igi Świątek. Polka zdradziła, na co przeznaczy nagrodę - Wiadomości - polskieradio24.pl”. polskieradio24.pl. 2023年2月11日閲覧。
  26. ^ “Why I'm reading Agatha Christie before my matches”. BBC Sport. (2022年5月29日). https://www.bbc.com/sport/tennis/61599683 2023年2月11日閲覧。 

外部リンク[編集]