イージーリスニング

イージーリスニング
現地名 Easy listening
様式的起源
文化的起源 1940年代のアメリカ合衆国[1]
派生ジャンル
サブジャンル
スペース・エイジ・ポップ
ラウンジ・ミュージック
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イージーリスニング: easy listening)は、1950年代から1970年代にかけて最も人気があったポピュラー音楽のジャンルおよびラジオの放送プログラムである[4]ムード音楽: mood music)、現代クラシックとも称される[5]。また、ミドル・オブ・ザ・ロード英語版と関連づけられている[1]

概要[編集]

百貨店[6]病院等にて、雰囲気づくりのためのBGMとして使用されることが多い[7]。 聴者に直ぐに好印象を与え、誰が聴いてもリラックス感をもたらすようテクニックを駆使したアレンジで有名曲を奏でる。そのため、イージーリスニングは一般的なBGMとはやや異なった意味合いを持つ[8]

ポール・モーリアは、「私の音楽は、クラシックとポップスのちょうど中間にある」と述べている[9]

2020年代になりK-POPにおいて楽曲の傾向を表す言葉として「イージーリスニング」(이지리스닝)と言われることがある。これは本項で扱う20世紀からあるポピュラー音楽の1ジャンルとしてのイージーリスニングとは別で、単に「軽く聴ける」ぐらいの意味を表している。

特徴[編集]

作曲家の服部隆之が提唱するイージーリスニングの特徴は、以下の通りである[8]

  1. チェンバロの音色が効果的に使われる。
  2. リズムが心地良い。4リズムの親近感あるポップスを、一定のリズムで演奏してゆく。
  3. 高音のストリングス。高音E線を鳴らす際に、低弦がオブリガードを弾き、より効果的にする。

歴史[編集]

日本[編集]

日本では、1960年代70年代にかけて、ポール・モーリア、レイモン・ルフェーブルフランク・プウルセルらのオーケストラもののインストゥルメンタル曲が、イージー・リスニングの代表格として人気となった[10]

当時、高度経済成長を背景に全国的に団地が林立し、「2LDK」という言葉が登場し始めるなど、イージーリスニングは文化的な生活様式にフィットし、気持ちを豊かにする音楽としてもてはやされた[11]

また、当時はフラストレーションの発散の場としてロックコンサートを愉しむ人々も多く、そこでは観客マナーの悪さからのトラブルが絶えなかった。1971年グランド・ファンク・レイルロードの来日公演では、スタンド席から大勢の観客がフェンスをよじ登り、静止するスタッフにビール瓶や石を投げつける騒動が発生した。また、同年のレッド・ツェッペリン来日公演では、手荷物検査の遅れにより満足にステージを観られなかった客が怒り、客席のチラシを着火するという騒動となった。このような悪弊から、キョードー東京ではロックコンサートの運営が困難となり、その代替として1972年より、イージーリスニングを扱った『ラヴ・サウンズ』シリーズの公演を開始した。これを転機に、イージーリスニングは瞬く間に人気を集め、2枚500円引きのペアチケットが用意されるなど、デートの定番として重宝された。また、ビートルズ1970年に解散した以降、ハードロックを苦手とするポップスファンからも愛好された[11]

ブームが去った後も、ポール・モーリアの『オリーブの首飾り』が手品ショーの定番BGM[注 1][12] として用いられるなど現代でも親しまれ[13]、のちのヒーリングミュージックブームの先駆けにもなった。2013年頃、再ブームが訪れている[11]

ビルボードのイージー・リスニング・チャートは、1979年にアダルト・コンテンポラリー・チャートに名称が変更されている[10]

アメリカ合衆国[編集]

アメリカではオーケストラものよりも、ヘレン・メリル&クリフォード・ブラウンに始まり、セルジオ・メンデス&ブラジル66、レターメンフィフス・ディメンションなどのボーカルグループに加え、ペリー・コモナット・キング・コールパティ・ペイジドリス・デイローズマリー・クルーニーペギー・リーなどが、このジャンルに含まれた。 1970年代には、カーペンターズディオンヌ・ワーウィックロバータ・フラックバーブラ・ストライサンドなども、イージー・リスニングとしてラジオ局でオンエアされた。オーケストラによるものでは、欧州勢に先行してカーメン・キャバレロアンドレ・コステラネッツアーサー・フィードラーらが活躍しているが、スタンスはかなりクラシック寄りであった。

イージーリスニングの主なアーティスト[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 1975年頃、マジシャン (奇術)松旭斎すみえがこの曲を初めてショーのBGMとして採用した。
  2. ^ 「恋は水色」は全米チャートでも大ヒットになった。
  3. ^ 「シバの女王」が代表曲。
  4. ^ 「夜空のトランペット」で有名。

出典[編集]

  1. ^ a b c d Keightley 2012, p. 192.
  2. ^ The Musical Genre That Will Save the World”. Slate (2005年6月7日). 2021年8月30日閲覧。
  3. ^ Gateways to Geekery: Sunshine Pop”. The A.V. Club. Onion Inc. (2011年4月7日). 2021年8月30日閲覧。
  4. ^ Lanza et al. 2008, p. 16.
  5. ^ Musiker, Naomi; Musiker, Reuben (2014). Conductors and Composers of Popular Orchestral Music: A Biographical and Discographical Sourcebook. Routledge. p. 16. ISBN 978-1-135-91770-8. https://books.google.com/books?id=ipnrAgAAQBAJ&pg=PT16. "Mood music has come to be known as easy-listening music; however ... in the strict sense of the term, mood music means background music written for radio and television programs (including 'commercials'), as well as feature, documentary and newsreel films." 
  6. ^ くにまるジャパン 極 文化放送 番組サイト”. 文化放送 (2020年7月22日). 2024年3月16日閲覧。
  7. ^ BGMでの快適なオフィス環境作り”. 株式会社USEN. 2024年3月16日閲覧。
  8. ^ a b 「イージーリスニングをイージーに聴かない音楽会」[要文献特定詳細情報]題名のない音楽会』2022年10月1日放送、テレビ朝日系列。
  9. ^ 題名のない音楽会 BACKNUMBER これまでの放送 2022.10.01「イージーリスニングをイージーに聴かない音楽会」」テレビ朝日、2022年10月1日。
  10. ^ a b Hyatt, Wesley (1999). The Billboard Book of Number One Adult Contemporary Hits.. New York City: Billboard Books. ISBN 978-0-823-07693-2 
  11. ^ a b c イージー・リスニング 人気の裏に「団地」?”. 朝日新聞出版 (2013年5月26日). 2024年3月16日閲覧。
  12. ^ 『チコちゃんに叱られる!』最後に全てをかっさらう、コウメ太夫の生真面目さ「適任ではないのでは…」”. 株式会社サイゾー (2020年7月3日). 2024年3月16日閲覧。
  13. ^ 飯尾洋一 (2022年10月1日). “イージーリスニングをイージーに聴かない音楽会”. 株式会社テレビ朝日. 2024年3月16日閲覧。
  14. ^ “イージーリスニング界の第一人者として知られるフランスの作曲家/指揮者、PAUL MAURIATが死去”. TOWER RECORDS ONLINE (タワーレコード). (2006年11月6日). https://tower.jp/article/news/2006/11/06/100008502 2021年8月30日閲覧。 
  15. ^ 『「音楽狂」の国 将軍様とそのミュージシャンたち』(Kindle)小学館、2015年、1953頁。ASIN B01BM7D1Y6 
  16. ^ a b c Easy Listening Music Artist - オールミュージック. 2021年8月30日閲覧。

関連項目[編集]