キャラバンサライ

北シリアのキャラバンサライ
アゼルバイジャンのキャラバンサライ
(18世紀のもの)
キャラバンサライの間取り図の例
サファヴィー朝
1723年の挿絵、イラン

キャラバンサライペルシア語: كاروانسرا kārvānsarā、トルコ語: kervansaray)は、ペルシア語で「隊商宿」の意味。隊商のための取り引きや宿泊施設を指す。バザールスークに隣接して建てられた。アラビア語では、ハーンkhan)、カイサリーヤ、フンドゥクとも呼ばれた。

概要[編集]

一般的には中庭がある2階建ての建築物で、1階は取引所、倉庫、、管理人や使用人の住居にあてられ、2階は客人である隊商の商人たちの宿泊施設となっていた。アガと呼ばれる責任者や、荷運びの監督、夜警などの役職が常駐していた。

キャラバンサライは、遠隔地交易の商人の他に、地元の卸売商人の事務所や倉庫にも使われた。イスファハンでは、前者をタージェル、後者をボナクダールと呼んで区別した。地元の卸売商人はティームやティームチェペルシア語版と呼ぶ取引場や、ダーラーン(通廊)で取引を行った。行商人は、卸売商人から商品を仕入れて近郊の農村や遊牧地をまわった[1]

現在では宿泊所としての機能は消え、事務所、倉庫、卸売店舗として用いられている。

世界遺産[編集]

世界遺産 ペルシアのキャラバンサライ
イラン
英名 The Persian Caravanserai
仏名 Le caravansérail persan
面積 30.34 ha
(緩衝地帯 3,294.58 ha)
登録区分 文化遺産
登録基準 (2), (3)
登録年 2023年
第45回世界遺産委員会
公式サイト 世界遺産センター(英語)
使用方法表示

2023年、イラン全国各地にある54か所のキャラバンサライはユネスコ世界遺産に指定された[2]

登録基準[編集]

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

出典・脚注[編集]

  1. ^ 坂本「イスラーム都市の市場空間とイスファハーン」 p44
  2. ^ The Persian Caravanserai” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年12月19日閲覧。

参考文献[編集]

  • イブン・ジュバイル 『イブン・ジュバイルの旅行記』 藤本勝次池田修監訳、講談社〈講談社学術文庫〉、2009年。 - 12世紀から13世紀のキャラバンサライについての記述がある。
  • イブン・バットゥータ 『大旅行記』全8巻 イブン・ジュザイイ編、家島彦一訳、平凡社〈平凡社東洋文庫〉、1996-2002年。 - 14世紀のキャラバンサライについての記述がある。
  • 黒田美代子 『商人たちの共和国』 藤原書店、1995年。 - アレッポの事例を中心にキャラバンサライについて解説している。
  • 坂本勉「イスラーム都市の市場空間とイスファハーン」(佐藤次高岸本美緒編 『市場の地域史』 山川出版社、1999年。)

関連文献[編集]

  • 山田幸正モロッコ・フェズにおける都市型隊商施設(フンドゥク)の建築類型と商業的機能について」『日本建築学会計画系論文集』、日本建築学会、199-210頁、1996年。ISSN 13404210https://ci.nii.ac.jp/naid/110004654297/ 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]