コミュニティ放送

エフエム椿台(秋田市東部)の旧局舎外観

コミュニティ放送(コミュニティほうそう、community broadcasting)は、基幹放送の一種である。

定義[編集]

総務省令放送法施行規則別表第5号(注)10に「一の市町村特別区を含み、地方自治法第252条の19に規定する指定都市にあつては区とする。以下同じ。)の一部の区域(当該区域が他の市町村の一部の区域に隣接する場合は、その区域を併せた区域とし、当該区域が他の市町村の一部の区域に隣接し、かつ、当該隣接する区域が他の市町村の一部の区域に隣接し、住民のコミュニティとしての一体性が認められる場合には、その区域を併せた区域とする。)における需要に応えるための放送」と規定[1]している。この注は同表の「8 放送対象地域による基幹放送の区分(4)コミュニティ放送」に対するものである。

促音の表記は原文ママ

市区町村放送[編集]

政令総務省組織令第85条第1号は市区町村放送を「主として一の市町村(特別区を含む。)の区域の一部において受信されることを目的として行われる地上放送」と規定[2] し、政令上のコミュニティ放送の定義とされている。関連して電波法施行令第3条第2項第6号は、特定市区町村放送局を「総務省組織令(平成12年政令第246号)第85条第1号に規定する市区町村放送(放送法(昭和25年法律第132号)第2条第15号に規定する「地上基幹放送であるものに限り、受信障害対策中継放送であるもの及び同法第8条に規定する臨時かつ一時の目的のための放送であるものを除く。)をする無線局」と意義付け[3] ている。 本条文は無線局の無線従事者の操作及び監督の範囲に関わるものである。

概要[編集]

コミュニティ放送は電波法施行規則放送法に定義[4] する超短波放送(FM放送)の周波数[5] を利用するFM放送の一種で、コミュニティFMとも称されてラジオ受信機で聴取できる。事業者は電波法に基づく地上基幹放送局の免許が必要で、地上基幹放送局の免許申請時の基幹放送の種類を表すコードは、無線局の目的コード及び通信事項コードを規定する告示[6] に、「超短波放送(コミュニティ放送)」をCFMと規定している。但し、全て大文字頭字語「CFM」はFM放送の判別に難がある[7]ことから、「cFM」の俗称も散見される。

地上基幹放送の一種だが、放送対象地域が従来の広域放送県域放送より狭く、「地域密着」「市民参加」「防災および災害時の放送」がコミュニティ放送の特徴と言われる[8]。特に市町村防災行政無線に比して設立経費が1/10 - 1/100と低く、地方自治体第三セクターを設立して参入する例が多く見られる[9]。地域メディアのCATVとも比較される[9]

基幹放送用周波数使用計画第1項第10号により、原則として空中線電力は20W以下とされる。特例として空中線電力はFM久米島(FMくめじま)の80W、エフエムわっかない(FMわっぴ〜)の50Wがある。空中線電力の増力について総務省は、北海道の一部と沖縄県島しょ部については認めるが、その他の地域は中継局設置によるエリア拡大が適当であること及び新規開局機会確保のため認めない方針[10] としている[注 1]。そのため、2000年代に相次いだ市町村合併(平成の大合併)により、事実上放送エリアが拡大する形で難聴エリアも増加したコミュニティ放送局では難聴エリア解消の為に中継局設置が不可欠となるため、設備投資による多額の費用負担を余儀なくされる放送局も発生している[11][12]。なお、実効輻射電力(ERP:アンテナの利得によって強められ放射される実際の電力)は上限は無い。

呼出符号(コールサイン)はJOZZ[注 2] で始まり、その後に1数字(0 - 9の地域番号)と2英字、最後に「-FM」がつく。無線局免許状の有効期間は5年だが、当初に限り有効期限は5年以内の一定の10月31日まで[注 3] となる。

地上基幹放送局の無線局としての運用体制は、無線局管理責任者、無線局運用責任者、無線局保守責任者によって行われ、管理責任者が無線従事者の資格者(第三級総合無線通信士又は第二級陸上特殊無線技士以上)を選任し、無線設備の運用や保守のための技術操作を行う(実務上は無線従事者が無線局管理責任者を担う)[13]。なお、第二級・第三級総合無線通信士又は第一級・第二級陸上特殊無線技士は「外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作」の管理に限定[14]されるため、機器に障害が起きた場合等で技術操作が機器の内部に及ぶような場合には陸上無線技術士が行うことになる。

事業者は日本民間放送連盟とは別に日本コミュニティ放送協会 (JCBA) を結成している。

免許不要局微弱電波を使用する「ミニFM」との混同も散見される。

沿革[編集]

西ヨーロッパで、1970年代に放送事業の規制緩和でコミュニティ・ラジオ局が次々と誕生した[8]日本1980年代から「地方の時代」などのキャッチコピーが流行りはじめたが、実際のラジオにおける変化は1990年代に入ってからである。ラジオ工作の延長で微弱無線局であるミニFMがブームとなり、これを利用して店舗やイベント会場でも放送がおこなわれた。1988年昭和63年)に、期間限定ながら小出力かつ限定された地域を対象とする臨時目的放送が法制化[15] された。

1980年代後半に、基幹放送普及計画(現・放送普及基本計画)に従ってテレビジョン放送の分野で「民放テレビ全国四波化」が進み、ラジオは民放県域FM局の開局が進むなど地方ローカル局が次々現れた[8]1983年(昭和58年)に郵政省(現・総務省)が「テレトピア構想」を提唱し、1985年(昭和60年)の「ニューメディア時代における放送に関する懇談会」、1988年(昭和63年)から始まった「放送の公共性に関する調査研究会」でコミュニティ放送について言及した[8]1991年(平成3年)7月まは臨時行政改革推進審議会が多様で個性的な地域づくりを提唱した。 1992年(平成4年)1月25日[16] にコミュニティ放送が制度化され12月24日にFMいるか北海道函館市)が第1号として開局した。 当時の放送局(現・地上基幹放送局)の管理[17] は、広域放送や県域放送と同様に第一級・第二級陸上無線技術士又は第一級総合無線通信士を要した。

参入基準の変遷(太字は変更点)
年月日 基準 空中線電力 凡その可聴域
1992年1月10日 - [18] 1. 既存民放・外国籍・個人の参入不可
2. 市区町村政令指定都市では行政区)ごとに1局
3. 第三セクター型では地方公共団体出資比率30%以下
01W以下
半径02 - 03km[8]
1995年3月9日 - [18] 既存民放・外国籍・個人の参入不可
上記の2および3を削除。1のみ残存)
10W以下
半径05 – 10 km[8]
1999年3月30日 - [18]
20W以下
半径15 - 20 km[8]

1993年(平成5年)4月に電波利用料が制度化された。他の放送局と同額で、空中線電力などにより細分された後も広域放送や県域放送のものと同額に設定されている。

1994年(平成6年)に北海道帯広市おびひろ市民ラジオ (FM-WING) とエフエムおびひろ (FM-JAGA) が競願して両者とも一本化を拒否し、郵政省が両局に免許を交付した[注 4]1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災以後、地域における非常用伝達手段を確保することを理由に、市区町村単位の複数開局や空中線電力の増強など規制が緩和され、エフエム熱海湯河原など県境を越えて地域圏を放送区域とする局も現れた。1996年(平成8年)から1999年(平成11年)にかけて多く開局するも、経営難から1998年(平成10年)11月30日にFMこんぴらが閉局した。

21世紀初頭の「東京23区及びその周辺」や「大阪市及びその周辺並びに兵庫県南東部地域」では、周波数が逼迫し開設が困難になった [19] [20]。 しかし、アナログテレビ放送終了後は、85 - 90MHz(「ガードバンド」に指定されていた、つまり1チャンネルが使用されていた地域のみ)及び90 - 95MHzを割り当てることが可能となり[21]、両地区の逼迫状態は一応の解決をみた [22] [23]

2015年(平成27年)11月3日、栃木県栃木市FMくらら857[注 5]が開局し、コミュニティ放送局の空白都道府県がなくなった。

2019年(平成31年)1月30日、無線従事者の操作及び監督の範囲について「周波数及び空中線電力の安定度の向上及び調整の自動化が図られ、外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさない技術操作により操作可能」して要件が緩和[14]され、第二級・第三級総合無線通信士又は第一級・第二級陸上特殊無線技士による管理が可能[3]となった。なお、この緩和は受信障害対策中継放送(通称「ギャップフィラー」)についても適用された。

事業者数推移
年度末 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年
事業者数 1 6 15 27 64 88 118 131 139 152
年度末 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
事業者数 162 166 176 188 202 218 227 237 246 255
年度末 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年  
事業者数 268 281 287 299 304 317 325 332 334  
コミュニティ放送局の事業者数の推移[24]による。
電波利用料額
年月 料額 備考
1993年(平成5年)4月[25] 29,700円 他の地上波放送局と同額
1997年(平成9年)10月[26]
2006年(平成18年)4月[27] 25,700円
2008年(平成20年)4月[28] 36,500円 空中線電力200W以下のテレビジョン放送以外の地上波放送局が適用
2011年(平成23年)10月[29] 49,200円 空中線電力200W以下のテレビジョン放送以外の地上基幹放送局が適用
2014年(平成26年)10月[30] 59,000円
2017年(平成29年)10月[31] 16,700円
2019年(令和元年)10月[32] 3,400円

経営[編集]

免許人は、株式会社特定非営利活動法人がほとんどを占める。株式会社は地方自治体の第三セクター、既存のケーブルテレビ事業者やその子会社地方紙タウン情報誌の子会社が主である。他に僅かながら一般財団法人一般社団法人社会福祉法人学校法人の事例がある。

県域放送は域内全域で連日放送し空中線電力は親局が500 - 10kW、中継局が10 - 100W程度である。コミュニティ放送は連日放送の責務は負わずに人口密度が高い地域を対象とし、県域放送局に比して経営効率が高い。一方、経営基盤が脆弱な局もあり、創業者の死去や出資者の経営不振、業務委託を受けていた自治体からの出資打ち切りなどから閉局・倒産廃業した事業者も散見される。

自主制作番組[編集]

「地域密着」「市民参加」「防災および災害時の放送」の特徴から、サービスエリアや周辺の住民がパーソナリティを務める会話や音楽の番組、地域イベントの中継番組、サービスエリアのスポーツチームの中継番組など自主制作番組も多い。また、地元議会中継を行う局もある。

災害情報番組[編集]

1995年(平成7年)の阪神大震災で、ミニFMのエフエムわいわいや母体のFMヨボセヨとFMユーメンが主に外国人へ向けて災害情報の提供を中心に放送して「井植文化賞・国際交流部門賞」を受賞した。エフエムわいわいは震災1周年の1996年(平成8年)1月17日にコミュニティ局として改めて開業し、災害時のコミュニティ放送の役割が注目された。防災無線は受動的に情報発信されるが、コミュニティ放送を含む音声メディアは能動的に放送を選択して聴取している最中に割り込む。防災無線は聴取しづらい場合があるが、ラジオは明瞭な音声で伝達可能である。

2004年(平成16年)台風23号の近畿地方上陸
兵庫県豊岡市FM JUNGLEが、エフエムわいわいに支援されて公的機関の被災者向け情報を外国語へ翻訳して放送した。
2004年新潟県中越地震
新潟県長岡市FMながおかの放送設備と周波数を活用して臨時災害放送局を開設し、空中線電力を20Wから50Wに増力して放送区域を周辺の市町まで拡大し、地震発生直後から3か月間、毎日午前7時から午後8時まで災害情報を提供した。
2007年(平成19年)新潟県中越沖地震
被害が甚大であった新潟県柏崎市FMピッカラが、親局から電波の届かない柏崎市の一部地域や隣接する地域へ放送区域を拡大するため、中継局として長岡市に臨時災害放送局を開設し、1か月間災害情報を流した。
2008年(平成20年)岩手・宮城内陸地震
エフエム東京が被災地の岩手県奥州市にある奥州エフエム放送と中継する「JFN報道特別番組」を編成して現地からの情報を伝え、コミュニティ局の奥州エフエムの放送が岩手県の県域局エフエム岩手でも放送された。
2010年(平成22年)奄美豪雨
鹿児島県奄美市あまみエフエムが災害発生直後から道路情報や安否確認の災害情報などを発信し、情報提供のメールやFAXが通常の約10倍の量届いたほか、避難所でも放送が頼りにされた[33]
2011年(平成23年)東北地方太平洋沖地震
市役所などにスタジオを仮設して臨時災害放送局の免許を取得し、空中線電力を20Wから最大150Wに増強して「○○さいがいエフエム」として震災報道を継続した。エフエム東京(『やまだひさしのシナプス』中)が茨城や千葉、ニッポン放送などが東北、それぞれのコミュニティ局を中継をした。

スポーツ中継[編集]

県域ラジオやテレビのスポーツ中継に比して使用機材が少なく、近年はJリーグBリーグ都市対抗野球大会などを中継する局もみられる。地域性のあるものとしては、放送区域内に鈴鹿サーキット富士スピードウェイがそれぞれ立地しているスズカ・ヴォイスFM富士山GOGOエフエムによる大規模なレース開催時の実況放送がある。また東北楽天ゴールデンイーグルス(楽天野球団)は、試合の実況中継をメインコンテンツとしたコミュニティFM「Rakuten.FM TOHOKU(らくてんみやぎのエフエム)」を自ら開局し運営している事が特筆される。

スタジオ[編集]

エフエムもりぐちのスタジオ風景

パーソナリティが自ら、CDやテープを再生してミキシングコンソールで調整し、メールを直接読みながら喋るワンマンDJスタイル[注 6]が多い。

通行人が多い場所に本社スタジオを構えている場合など、サテライトスタジオでスタジオ放送風景を自由に見学できる局も多く見られる。

  • 駅に設置:エフエム軽井沢、エフエム佐久平、FMTARO、FMさつませんだいなど
  • 商店街に設置:藤沢エフエム放送、エフエム江戸川、福島コミュニティ放送、 愛知北エフエム放送、さっぽろ村ラジオなど
  • 商業施設に設置:沼田エフエム放送やおコミュニティ放送けんと放送など

ビジネスモデルの一例[編集]

コミュニティー放送においては、都道府県域をエリアとする放送局(県域放送)のように常時24時間放送をしなければならない、他の系列局などからのネットを受けなければならないといったことはなく、それぞれの事業規模に沿ったビジネスモデルが様々ある。

山口県宇部市のFMきららは、2001年に行われた「山口きらら博」の開催時に限定開局されたイベント放送局を契機に、宇部市の地元の企業有志らが開局。自主編成100%を基本とし、協賛広告料を低価格にすることや、深夜・早朝(まれに週末・祝日の終日のもある)は無変調(一部停波も)による放送休止枠を設けたり、ボランティアスタッフ制度の登用などで効率化を図っている。

再送信・ネット番組[編集]

都道府県域をエリアとする放送局と同様に、他局などからコンテンツを購入する例が多い。外部から購入するコミュニティ局が多いため、結果的にネットワークが築かれたのと同様な状態にもなっている。番組販売により、放送時間が異なるネット化と、サイマル放送によるネット化が見られる。県域放送局と企画ネットを行った例もある。

県域FM局・国外局・衛星・有線放送の再送信[編集]

J-WAVEをそのまま流す局も

コミュニティ局の中には、放送区域外の県域FM局・他国の放送局・衛星放送有線放送再送信していることがある。コミュニティ局はその小規模さ故に全時間を自局制作で埋めることが難しいためと見られる。独立ラジオ局独立テレビ局の番組購入と異なり、一定の時間帯に他局の放送をそのまま流すものである。コミュニティ局側は労力をかけずに高品質の番組が放送可能で、配信側の放送局はエリア(聴取者)拡大の規模効果がある。一日の放送時間に占める再送信の割合が半数を超える局も存在し、コミュニティ局にもかかわらず地元の情報が流されない時間帯を多数生んでいる例がある。

東京都J-WAVEUSENSOUND PLANET経由)やミュージックバードを再送信している局が多く、特に夜間帯に再送信する局が多い。スターデジオや有線放送CANの配信を受けている局もある。なお、ミュージックバードはTOKYO FMのグループ会社であるため、TOKYO FMの『立花裕人のMORNING FREEWAY』が東九州コミュニティー放送で放送されたこともあった。

北海道のFM NORTH WAVEを室蘭市のFMびゅーと伊達市のWi-radio[注 7]、大阪府のFM802を滋賀県東近江市のびわ湖キャプテンが一部時間帯で再送信している。過去には福岡県のCROSS FMを熊本県阿蘇郡小国町のエフエム小国が再送信されていた。

米国ハワイ州KSSK英語版サンフランシスコKOIT英語版を再送信していた仙台市民放送(閉局)や、ハワイ日本語放送KZOOを再送信していた沖縄県浦添市のFM21、などもあった。

沖縄県宮古島市のエフエムみやこでは、FM沖縄の再送信を2006年よりFM沖縄の中継局が伊良部島に開設する2018年まで行われていた。

AM局の番組再送信[編集]

地形的な事情からAM局の中継局が設置できず、聴取難となっている地域では、地元AM局で放送されている一部番組の再送信を行うコミュニティ局も存在する。この場合、ワイド番組内に内包されているネット受け番組が権利上の関係から放送できない場合があり、当該時間帯のみ別コーナーやフィラー音楽を流すことがある。

コミュニティ局同士の番組ネット[編集]

県域放送による全国ネットやブロックネットと様相は異なるが、コミュニティ局同士でもさまざまな形で番組のネットを行い、放送区域を拡大したり、聴取者数を増やしたりする試みが行われている。

全国ネット[編集]

1997年(平成9年)9月から、共通番組「木村太郎のこの人と話したい」を全国コミュニティ放送協議会(2002年(平成14年)4月22日から日本コミュニティ放送協会)加盟全63局で放送した[18]。1998年(平成10年)1月から全加盟局で放送[18]した。コミュニティ局は当時100局に満たなかったが、200局を超えた現在も全加盟局で6月6日のコミュニティの日に共通番組「Cの力、Rの絆」を放送し、各地区協議会で制作した番組も統一番組として全国の加盟局で放送している[34][35]

2004年(平成16年)に、全国のコミュニティ局を結ぶ『hot pot Kiroro』が放送され、2005年(平成17年)に特定のキーステーションは持たないが独自にネット局を開拓する形で『ワクワクサワー』が始まり、2013年(平成25年)からMBSラジオたねまきジャーナル』に出場したジャーナリストや著名人有志を中心に番組存続を念頭に結成した一般社団法人「ラジオアクセスフォーラム」が製作した『ラジオフォーラム』を開始し、中波局の一部もネットするなどネットワークを広げている。

コミュニティ局が製作した番組が県域の中波・FM局で遅れネットされるケースもある。2018年時点では湘南ビーチFMの『ASIAN WAVE』・渋谷のラジオの『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』・エフエム世田谷の『普天間かおりのぬちぐすいやっさ』が該当する。またスポンサーの意向などにより、県域の中波・FM局の番組がコミュニティ局で遅れネットされるパターンもある。

ブロックネット[編集]

地方ブロック単位で、その地方にあるコミュニティ局の多数(または全局)で放送され、ブロックネットに近いかたちで放送されている番組も存在する。

東北コミュニティ放送協議会」(東北コミュニティ放送ネットワーク)に参加している局が共通番組の「はいうぇい 人街ネット」などを放送している。東北地方全域が放送区域に入らないものの、人口カバー率においてブロックネットに近い例である。

地域圏ネット[編集]

同じ都道府県内や県境を挟んだ隣接地域のコミュニティ局同士で番組を共同制作をする例も見られる。

  • 札幌市内
2004年(平成16年)、北海道札幌市内にあるコミュニティ局が協力しあい、災害時に備えて共通同一の放送をするという企画「札幌方式」が同市の協力の元に立ち上げられた。2011年度いっぱいまで、『そら色ステーション』の名称で最盛期には同市内の全7局、末期は4局が参加し同時放送が行われた。
  • 青函コミュニティFMネットワーク協議会(津軽海峡を挟む両岸)
FMいるか北海道渡島総合振興局函館都市圏)・Be FM青森県八戸都市圏)・FM AZUR(青森県むつ市)・FMアップルウェーブ(青森県・弘前都市圏)・FM JAIGO WAVE(青森県・弘前都市圏)の5局で『青函メッセージBOX』という10分番組を週1回、共同制作している。
  • 宮城県
サッカーJリーグ・ベガルタ仙台の試合を県内5局で同時中継している。
仙台シティエフエム宮城県仙台都市圏)と山形コミュニティ放送山形県村山地方)で、週1回の10分番組『762EXPRESS』をネットしている。
  • 関東甲信越
30あまりの放送局がミニ番組『今日は何の日』を持ち回りで制作し、各局で放送している。
いせさきFMラヂオななみは、平日朝夕のワイド番組を共同制作している。
2010年(平成22年)10月から、エフエム西東京西東京市)・調布エフエム放送調布市)・エフエムむさしの武蔵野市)の3局の共同制作で、毎週月 - 金の午前11時から正午まで生放送で『ハッピーうーたん』という帯番組が放送されていた。のちに枠変更になり土曜日の午後に生ワイド番組「e-tama」として持ち回りで制作を行ない同時ネットを行っていた。e-tamaの末期はエフエムラジオ立川立川市)も加わり4局で放送を行っていたが、2014年に共同制作番組は終了した。企画ネット的に番組内コーナー「e-tama いい旅」を各局で放送している。
調布エフエム放送とエフエム西東京は、FC東京の試合も同時ネットで中継していたが、2014年以降は制作局の調布エフエムでの放送のみとなっている。
三遠南信のコミュニティ放送局参照。
半島内の4つのコミュニティ局でおおすみ半島コミュニティ放送ネットワークを組織し、番組をネットしている。
島内の3つのコミュニティ局で番組を相互ネットしている。
  • 沖縄県
FMコザFMぎのわんでは一部番組の相互ネットを行っている。
FM21FMレキオFMもとぶFMくめじまでも深夜早朝を中心に最大4局で一部番組の相互ネットを行っている。

企画ネット[編集]

同一クライアント、同一企画の番組を各局個別に制作し放送する例も見られる。FMやまとエフエム入間で実施している、まあるいしあわせスリーエフレポートなど。

県域ラジオ局との番組ネット[編集]

「やまぐちエフエムUNITED」は山口県域を放送エリアとするエフエム山口と、山口県内各地のコミュニティ放送局(エフエム萩[FM NANAKO]・FMながと[FM AQUA]・コミュニティエフエム下関[COME ON! FM]・FM山陽小野田[FMスマイルウェ~ブ]・エフエムきらら[FMきらら]・ぷらざFM[FMわっしょい]・エフエム周南[しゅうなんFM])が2020年11月6日 - 27日と12月1日に放送した特別番組で、各地の様々な名産品などを紹介した。(同時生放送及び遅れネット)

コミュニティ放送が聴取できる主たるアプリケーション[編集]

コミュニティ放送はFMの電波としての放送は特定市区町村(およびその周辺地域)しか聴取することができないが、一部の放送局が独自にその局のみを聞くためだけの専用ラジオ・アプリケーションソフトウェアを提供し、実質全国的に配信しているものもある。

また全国の多くのコミュニティ放送を聴取できるアプリケーションソフトも存在し、以下のもの[36]がある。特に、「録音ラジオサーバー」と「らじれこ・らくらじ」はradikoらじるらじる(NHK)[注 8]とも互換しているうえ、コミュニティー放送に関してはマニュアル予約のみながら、リアルタイム録音・タイマー予約録音が可能である[注 9]

海外のコミュニティ放送[編集]

韓国はコミュニティ放送にあたる小出力FM放送の制度がある。出力は1W。2005年に8局が開局したが、その後の開局はない。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ コミュニティ放送局を増力して臨時災害放送局とすることがあるが、基幹放送上の分類はコミュニティ放送ではなく臨時目的放送であり、市町村が免許人となってコミュニティ放送事業者はその運用を委託されるものである。
  2. ^ かつて「JO*Z」はNHKラジオ第2放送の県庁所在地以外の放送局(JOIZを除き支局へ降格する際に廃止)に指定されるものとされ、JOZZはNHK新居浜局に指定されていた。臨時目的放送が法制化されるとNHKに指定されていないものを指定されるものとされた。コミュニティ放送制度化の際、コミュニティ放送局にJOZZが、臨時目的放送局に「JOYZ」が指定されるものとなった。
  3. ^ 平成23年総務省告示第275号 電波法施行規則第8条第1項の規定に基づくコミュニティ放送を行う地上基幹放送局について同時に有効期限が満了するよう総務大臣が別に告示で定める日(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)に「平成27年11月1日及びその後5年ごとの11月1日とする。」とあることによる。
  4. ^ 帯広市を含む十勝地方では両局の開局以前からブロック紙北海道新聞(道新)と地域紙十勝毎日新聞(勝毎)が激しい競合関係にあり(しかもこの地域では道新が勝毎に大きく水を空けられていた)、免許出願の際にもFM-WING陣営に付いた道新とFM-JAGA陣営に付いた勝毎との事実上の代理戦争の様相を呈していたことから、郵政省も混乱を避けるために両局への免許交付に至った。
  5. ^ 免許人はケーブルテレビ株式会社。開局直前の9月9日から9月11日にかけて発生した平成27年9月関東・東北豪雨の被害が甚大であったことを受けて設立された臨時災害放送局「とちぎさいがいエフエム」が9月15日から10月29日まで放送をしていたが、同局と同じ周波数・送信所を使用してFMくらら857は開局した。ちなみに、1993年(平成5年)に「株式会社栃木コミュニティ放送」(栃木市)が設立されて予備免許も取得したが、開局には至らなかった過去がある。
  6. ^ 在京・在阪などの大手局では分業がほとんどであり、パーソナリティ・ミキサー・AD・ディレクター(・作家)がそれぞれいるほか、地方局でワンマンスタイルをとっていても多くの場合、パーソナリティがミキサーやディレクターを兼務しながらも別途アシストする人間がいるが、コミュニティの場合は人員の関係もあり、その全てを一手に引き受けるため、放送中のリアルタイムなメールはモニタからそのまま読み上げるなどする。
  7. ^ FM NORTH WAVEは室蘭市・伊達市では中継局未整備のため直接受信は困難。ただしradikoを利用する場合はその限りではない。
  8. ^ ただし、いづれもradiko、NHK非公認の互換アプリである。
  9. ^ らくらじの改良バージョンである「らくらじ2」は2021年秋からベータ版で提供した当時はコミュニティFMには対応していなかったが、2022年春に正式版がリリースされてから、コミュニティFMが収録されるようになった

出典[編集]

  1. ^ 平成4年郵政省令第2号による放送法施行規則改正により別表第1号(注)14に規定、平成23年総務省令第62号による放送法施行規則改正により別表第5号(注)10に規定
  2. ^ 総務省組織令制定時に第81条第1号に規定、平成20年政令第214号による総務省組織令改正により第85条第1号に規定
  3. ^ a b 平成31年政令第19号による電波法施行令改正
  4. ^ 電波法施行規則第2条第1項第25号および放送法第2条第17号
  5. ^ 基幹放送普及計画第1項第1号(1)ア(ウ)超短波放送
  6. ^ 平成16年総務省告示第860号 無線局免許手続規則別表第2号第1等の規定に基づく無線局免許申請書等に添付する無線局事項書の無線局の目的コードの欄及び通信事項コードの欄に記載するためのコード表 別表第1号「2 基幹放送の種類コード」(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  7. ^ 広域放送や県域放送の略称で出る恐れあり。
  8. ^ a b c d e f g 日本におけるコミュニティFMの構造と市民化モデル (PDF) 創造都市研究e(大阪市立大学大学院創造都市研究科紀要)Vol.3, No.1(2008年)
  9. ^ a b 多様化するコミュニティFM放送 (PDF) 東京経済大学人文自然科学論集第119号 2005年3月20日
  10. ^ 構造改革特区に関する検討要請に対する各省庁からの回答について(内閣官房 地域活性化統合事務局 平成24年3月29日)の別紙「04 総務省構造改革特区第21次 検討要請回答」管理コード040010(2014年4月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project (PDF)
  11. ^ 白石勝洋 (2015年11月25日). “コミュニティ放送の現況について ~ドリームスエフエム放送㈱の取組~”. 総務省. pp. 1,16. 2022年3月13日閲覧。
  12. ^ 総務省 特区第14次 再々検討要請回答”. 内閣府. pp. 29-40. 2022年3月13日閲覧。
  13. ^ 総務省情報流通行政局「コミュニティ放送局開設の手引き」
  14. ^ a b 電波法施行令の一部を改正する政令案に対する意見募集(総務省 報道資料 平成30年11月8日)(2018年12月2日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  15. ^ 昭和63年法律第29号による放送法改正および昭和63年郵政省令第56号による放送法施行規則改正
  16. ^ 平成4年郵政省令第2号による放送法施行規則改正
  17. ^ 操作及びその監督の範囲は、平成2年政令第216号による無線従事者の操作の範囲等を定める政令改正施行の平成3年7月1日現在のもの
  18. ^ a b c d e 11. JCBA10年史 年表 (PDF) (日本コミュニティ放送協会「十年史」)
  19. ^ コミュニティ放送(ラジオ放送の概要(関東総合通信局 - 放送 - ラジオ放送)) - ウェイバックマシン(2005年11月18日アーカイブ分)
  20. ^ (3)コミュニティ放送局の現状(2-(2)コミュニティFM局(近畿総合通信局 - 放送サービス - 2.超短波放送局)) - ウェイバックマシン(2004年4月23日アーカイブ分)
  21. ^ V-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針の公表及び意見募集の結果(V-Lowマルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針の公表及び意見募集の結果の別紙(総務省報道資料 平成25年9月27日))(2013年10月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project (PDF)
  22. ^ 関東総合通信局の「ラジオ放送の概要」のコミュニティ放送(2015年12月6日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Projectとコミュニティ放送(2016年2月13日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Projectの比較
  23. ^ 近畿総合通信局の「コミュニティFM局」の3.コミュニティ放送局の現状(2015年3月7日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Projectと3.コミュニティ放送局の現状(2015年4月4日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Projectの比較
  24. ^ 放送局数 総務省情報通信統計データベース - 放送
  25. ^ 平成4年法律第74号による電波法改正の施行
  26. ^ 平成9年法律第47号による電波法改正
  27. ^ 平成17年法律第107号による電波法改正の施行
  28. ^ 平成20年法律第50号による電波法改正
  29. ^ 平成23年法律第60号による電波法改正
  30. ^ 平成26年法律第26号による電波法改正
  31. ^ 平成29年法律第27号による電波法改正
  32. ^ 令和元年法律第6号による電波法改正
  33. ^ 地域FM、災害情報24時間生放送(南日本新聞 2010年10月24日
  34. ^ JCBAについて(日本コミュニティ放送協会)
  35. ^ 東北発「Cの力、Rの絆」
  36. ^ 【ネットラジオ】コミュニティFM放送をインターネットで聴く(キクラヂオ堂 一部補筆)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]