シェリー=アン・フレーザー=プライス

シェリー=アン・フレーザー=プライス Portal:陸上競技
選手情報
ラテン文字 Shelly-Ann Fraser-Pryce
愛称 ポケット・ロケット
国籍 ジャマイカの旗 ジャマイカ
種目 短距離走
所属 MVP Track & Field Club
大学 ジャマイカ工科大学 (2012年卒)
生年月日 (1986-12-27) 1986年12月27日(37歳)
生誕地 ジャマイカの旗 ジャマイカキングストン
身長 152cm[1]
体重 57kg[1]
自己ベスト
60m 6秒98(2014年3月)
100m 10秒60(2021年8月)
200m 21秒79(2021年6月)
獲得メダル
ジャマイカの旗 ジャマイカ
陸上競技
オリンピック
2008 北京 100m
2012 ロンドン 100m
2012 ロンドン 200m
2012 ロンドン 4×100mリレー
2016 リオデジャネイロ 100m
2016 リオデジャネイロ 4×100mリレー
2021 東京 4×100mリレー
2021 東京 100m
世界陸上競技選手権大会
2007 大阪 4×100mリレー
2009 ベルリン 100m
2009 ベルリン 4×100mリレー
2011 大邱 4×100mリレー
2013 モスクワ 100m
2013 モスクワ 200m
2013 モスクワ 4×100mリレー
2015 北京 100m
2015 北京 4×100mリレー
2019 ドーハ 100m
2019 ドーハ 4×100mリレー
2022 オレゴン 100m
2022 オレゴン 200m
2022 オレゴン 4×100mリレー
2023 ブダペスト 100m
2023 ブダペスト 4×100mリレー
世界室内陸上競技選手権大会
2014 ソポト 60m
コモンウェルスゲームズ
2014 グラスゴー 4×100mリレー
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シェリー=アン・フレーザー=プライスShelly-Ann Fraser-Pryce, 1986年12月27日 ‐ )は、ジャマイカ陸上競技選手。世界陸上では通算10個の金メダルを獲得。世界陸上女子100m金メダリスト(ベルリン・モスクワ・北京・ドーハ・オレゴン)。オリンピック女子100m2連覇(北京・ロンドン)。2013年モスクワ世界陸上では女子史上初の100m・200m・4×100mリレーの3冠を達成した。

経歴[編集]

ジャマイカの首都・キングストンにある地元住民以外は出入りが許されないという危険なスラム地区に生まれた。父親は同じ通りに住んでいたが同居せず、フレーザーは兄・弟と共に母親から女手ひとつで育てられた。母親はしつけに厳しく、勉強をしろとうるさかったので学校の成績も悪くなかったが、家が貧しかったので地元でも有名な女学校の試験に合格しても授業料が払えなかった。ところが、見知らぬ若い資産家の女性が理由も言わずに授業料を払い続けてくれたおかげで進学し、勉強に励むことができた。16歳だった2003年には、ジャマイカでとても人気のある陸上競技の全国高校選手権「チャンプス英語版」に出場し、100mで7位になっている。しかし、当時は母親が勉強をしろとうるさかったので陸上競技に本気で取り組んでいなかった。ジャマイカ工科大学英語版に在学中だった21歳の時に、大学のキャンパス内で練習していたMVP Track & Field Clubに加入して本格的に陸上競技を始めたが、加入当初はその身長の低さもあり、短距離では成功しない等と周りから言われていた[2]

2008年[編集]

フレーザーは、2007年までは目立つ選手ではなかった。実際、2007年までの100mの自己ベストは11秒31であり、ジャマイカの並み居るスプリンターたちに遠く及ばない状況であった。しかし、2008年の北京オリンピック国内選考会で、世界チャンピオンのベロニカ・キャンベル=ブラウンらを抑えて2位に入り、100mで代表入りを果たす。オリンピックでも順調に勝ち進み、決勝では10秒78の好タイムで優勝。2位に0.2秒の大差をつける圧勝であった。なお、同タイムでジャマイカのシェローン・シンプソンケロン・スチュワートが2位に入り、表彰台を独占した。4×100mリレーは、フレーザー、キャンベル=ブラウン、シンプソン、スチュワートというメンバーで、世界記録更新が期待されたが、決勝でのバトンミスにより失格となった。

2009年[編集]

2009年世界陸上ベルリン大会の100mでは、マリーン・オッティが保持していたジャマイカ記録(10秒74)を約13年振りに更新する10秒73で優勝した。

2010年[編集]

2010年5月に中国・上海で行われたIAAFダイヤモンドリーグオキシコドンに陽性反応を示した。本人は禁止薬物とは知らず、歯痛を抑えるために使用したと弁明していたが、10月に6カ月の出場停止処分になった。フレーザーは暫定的な処分を受けており、競技会への出場は2011年1月8日から可能になった[3][4]

2011年[編集]

2011年1月に結婚した[5]世界陸上大邱大会の100mは4位。4×100mリレー決勝では第1走者を務めてジャマイカ新記録を樹立し、銀メダルを獲得した。

2012年[編集]

2012年8月のロンドンオリンピック100m決勝は10秒75(+1.5 m/s)の記録で優勝し、北京オリンピックに続き同一種目で連覇を飾った。同オリンピックの200m決勝は、アメリカのアリソン・フェリックスに次ぐ22秒09で2位となり、銀メダルを獲得した。200mではオリンピックと世界選手権を通じて初のメダル獲得。

2013年[編集]

2013年8月の世界陸上モスクワ大会100mで、今季世界最高記録となる10秒71で優勝し、金メダルを獲得した。同種目では、2009年世界陸上ベルリン大会以来2大会ぶりの金メダル獲得。200mは22秒17で優勝してオリンピックと世界選手権を通じて同種目初の金メダルを獲得、ジルケ・グラディッシュ東ドイツ)とカトリン・クラッベドイツ)に続き、史上3人目となる同一大会での100m・200m女子短距離2冠を達成した。4×100mリレー決勝ではアンカーを走り、ジャマイカが41秒29の大会新記録で2大会ぶり3度目の優勝を遂げ、金メダルを獲得した。フレーザー=プライスは世界陸上で女性初の短距離3冠を達成した。

ダイヤモンドリーグでは100mと200mで年間王者に輝き、男女通じて初の2冠を達成した。

11月のワールドアスレチック・ガラでIAAF世界最優秀選手賞を受賞した。ジャマイカの女子選手としては1990年のマリーン・オッティに続いて2人目。男子はウサイン・ボルトが受賞し、初のジャマイカ選手アベック受賞となった。

「ポケット・ロケット財団」を設立し、自分と同じような境遇で育っている才能ある子供達を援助している。

2014年[編集]

2014年1月に「Chic Hair Ja」という名前の美容室をキングストンにオープンした。

3月の世界室内陸上ソポト大会60m決勝で、世界歴代7位の記録となる6秒98で優勝し、金メダルを獲得した。

初出場となった8月のコモンウェルスゲームズ4×100mリレー決勝ではアンカーを務め、41秒83の大会記録を樹立して金メダルを獲得した。

主な成績[編集]

大会 場所 種目 結果 記録
2007 世界陸上競技選手権大会 大阪日本 4×100mリレー 2位 42秒70
2008 オリンピック 北京中華人民共和国 100m 1位 10秒78
2008 オリンピック 北京(中華人民共和国) 4×100mリレー 予選途中棄権 DNF
2008 IAAFワールドアスレチックファイナル シュトゥットガルトドイツ 100m 1位 10秒94
2009 世界陸上競技選手権大会 ベルリン(ドイツ) 100m 1位 10秒73
2009 世界陸上競技選手権大会 ベルリン(ドイツ) 4×100mリレー 1位 42秒06
2009 IAAFワールドアスレチックファイナル テッサロニキギリシャ 100m 2位 10秒89
2011 世界陸上競技選手権大会 大邱韓国 100m 4位 10秒99
2011 世界陸上競技選手権大会 大邱(韓国) 4×100mリレー 2位 41秒70
2011 IAAFダイヤモンドリーグ 200m 年間5位 2pt
2012 オリンピック ロンドンイギリス 100m 1位 10秒75
2012 オリンピック ロンドン(イギリス) 200m 2位 22秒09
2012 オリンピック ロンドン(イギリス) 4×100mリレー 2位 41秒41
2012 IAAFダイヤモンドリーグ 100m 年間優勝 19pt
2013 世界陸上競技選手権大会 モスクワロシア 100m 1位 10秒71
2013 世界陸上競技選手権大会 モスクワ(ロシア) 200m 1位 22秒17
2013 世界陸上競技選手権大会 モスクワ(ロシア) 4×100mリレー 1位 41秒29
2013 IAAFダイヤモンドリーグ 100m 年間優勝 20pt
2013 IAAFダイヤモンドリーグ 200m 年間優勝 15pt
2014 世界室内陸上競技選手権大会 ソポトポーランド 60m 1位 6秒98
2014 IAAFワールドリレーズ ナッソーバハマ 4×200mリレー 3位 1分30秒04
2014 コモンウェルスゲームズ グラスゴースコットランド 4×100mリレー 1位 41秒83
2015 世界陸上競技選手権大会 北京(中華人民共和国) 100m 1位 10秒76
2015 世界陸上競技選手権大会 北京(中華人民共和国) 4×100mリレー 1位 41秒07
2016 オリンピック リオデジャネイロブラジル 100m 3位 10秒86
2016 オリンピック リオデジャネイロ(ブラジル) 4×100mリレー 2位 41秒36
2019 世界陸上競技選手権大会 ドーハカタール 100m 1位 10秒71
2019 世界陸上競技選手権大会 ドーハ(カタール) 4×100mリレー 1位 41秒44
2021 オリンピック 東京(日本) 100m 2位 10秒74
2022 世界陸上競技選手権大会 オレゴンアメリカ 100m 1位 10秒67

自己ベスト[編集]

種目 記録 年月日 場所 備考
60m(室内) 6秒98 2014年3月9日 ポーランドの旗 ソポト 世界歴代8位、ジャマイカ歴代2位
100m 10秒60(+1.7) 2021年8月26日 スイスの旗 ローザンヌ 世界歴代3位
200m 21秒79(+0.8) 2021年6月27日 ジャマイカの旗 キングストン

脚注[編集]

  1. ^ a b プロフィール”. 2014年コモンウェルスゲームズ. 2014年11月27日閲覧。
  2. ^ 「スプリント界を牽引するジャマイカン・ドリーム」『月刊陸上競技』第48巻第7号、講談社、2014年6月号、39-41頁。 
  3. ^ フレーザー、薬物違反で6カ月出場停止-陸上女子[リンク切れ]
  4. ^ IAAF NewsLetter No.117
  5. ^ Leon Mann (2011-05-02). Fraser bids to bounce back BBC. 2012年11月13日閲覧

外部リンク[編集]

受賞
先代
アメリカ合衆国の旗 アリソン・フェリックス
IAAF世界最優秀選手賞
2013
次代
ニュージーランドの旗 バレリー・アダムス
記録
先代
マリーン・オッティ
100mジャマイカ記録保持者
2009/8/17 -
次代
未定