ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクール

ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクール
U.S. Army John F. Kennedy Special Warfare Center and School
ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクールの袖章(SSI)
国籍アメリカ合衆国の旗 アメリカ
軍種 アメリカ陸軍
兵科特殊部隊
任務訓練、教育、ドクトリン、キャリア管理、部隊開発能力を提供することにより、アメリカ陸軍において特殊作戦、民事活動、心理作戦を行う兵士を募集、評価、選抜、訓練、教育する。
兵力2,425人(合計)[1]
  • 1,891人(軍人)
  • 534人(文民職員)
上級部隊 アメリカ特殊作戦軍
アメリカ陸軍特殊作戦コマンド
基地フォートブラッグアメリカ合衆国ノースカロライナ州
渾名SWCS
標語"Veritas et Libertas"(真実と自由)
指揮
現司令官パトリック・B・ロバーソン少将[2]
識別
特徴的部隊記章
ベレー帽章
各部隊の背景に使用される部隊章

ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクール(ジョン・エフ・ケネディとくしゅせんセンター・アンド・スクール、John F. Kennedy Special Warfare Center and School : USAJFKSWCS)は、アメリカ陸軍特殊作戦コマンドに属する組織。非公式にSWCS(スウィック)と呼ばれている。主にアメリカ特殊作戦軍(SOCOM)の陸軍構成コマンドであるアメリカ陸軍特殊作戦コマンド(USASOC)の特殊部隊、民事活動部隊、心理作戦部隊の要員の訓練、教育を行っている。その目的は、訓練や教育の提供、ドクトリンの開発、部隊開発能力の統合、キャリア管理の提供を通して、アメリカ陸軍の特殊部隊、民事活動部隊、心理作戦部隊に統一的な指揮系統を付与することである。司令部は、ノースカロライナ州フォートブラッグ[3]

歴史[編集]

ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクールの歴史は、1950年にカンザス州フォート・ライリーに開設された陸軍総合学校(the Army General School)の心理戦(PSYWAR)訓練課程に始まる。その後、アメリカ陸軍心理戦センター・アンド・スクールとなり、作戦戦術部隊傘下の学校とともに現在のノースカロライナ州フォートブラッグに移転した。この心理戦センター・アンド・スクールは、当時の陸軍心理戦主任ロバート・A・マクルーア准将が、心理作戦と不正規戦争の両方にドクトリン支援と訓練を提供するために設立を提案したものである[4]

1956年、アメリカ陸軍心理戦センター・アンド・スクールは、アメリカ陸軍特殊戦スクールに改称された。スクールは、特殊部隊と心理作戦要員のドクトリン、技術、訓練、教育を開発することを任務とした。1960年、対ゲリラ作戦もスクールの責任とされた。1962年、特殊戦センターは、特殊部隊訓練グループを設立して、特殊部隊に対する入隊志願者への訓練を開始した。この間に、潤滑な敵地への侵入の方法を探求、開発することを目的に、上級訓練委員会が設置された。1969年5月16日、スクールは、アメリカ陸軍軍事援助研究所に改称された。カリキュラムに、高高度降下低高度開傘(HALO)とスキューバー作戦の訓練が含まれた。この研究所は、特殊戦スクール、心理作戦スクール、軍事援助訓練顧問スクール、対ゲリラ軍スクール、非在来型戦争スクール、非居住者訓練学科から構成されていた。

1972年4月1日にアメリカ陸軍民事学校がジョージア州フォート・ゴードンから、ノースカロライナ州フォートブラッグに移転して、アメリカ陸軍軍事援助研究所の傘下となった。1973年、新設されたアメリカ陸軍訓練教義コマンド(TRADOC)の指揮下となった。1982年6月1日、陸軍参謀総長は、アメリカ陸軍ジョン・F・ケネディ特殊戦センター(SWC)に改称した上、TRADOC傘下でありながら、指揮から分離し、独立の機関とした。センターは、陸軍の特殊作戦部隊のシステム、訓練、作戦を統合することにより、その支援スクールとなった。

1985年、センターは、現在のジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクール(SWCS)に改称された。この時点で、6個の部門から構成されていた(特殊部隊部門、高度特殊作戦スキル部門、生存・退避・抵抗・脱出部門、外国地域担当官部門、民事活動部門、心理作戦部門)。数年後に、下士官学校も設立された。1990年6月20日、TRADOCからアメリカ陸軍特殊作戦コマンドに移管された。これによって、アメリカ陸軍特殊作戦コマンドは、前方展開部隊を除く、全ての特殊作戦部隊を指揮下に入れた[5]

概要[編集]

ノースカロライナ州フォートブラッグのジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクール(SWCS)は、陸軍の特殊作戦部門の兵士の訓練、教育、キャリアを管理し、人材を提供している。

SWCSの訓練プログラムには、常に約3,100人の訓練生が登録されている。SWCSは、また特殊部隊准士官研究所と、デビッド・K・トゥーマ下士官学校を組織している。ほとんどの訓練コースは、フォートブラッグで実施されるが、SWCSは、フォートブラッグ以外にも訓練施設や機関を維持している。

SWCSは、民事活動、心理作戦、特殊部隊、文化支援など、様々な41種類の訓練コースを実施している。また、高度技術コースとして、フロリダ州キーウェストでの戦闘潜水訓練、フォートブラッグでの狙撃兵訓練、アリゾナ州ユマ試験場での軍事自由降下訓練を実施している[6]

地域研究と教育では、3種類の資格コースがあり、フェーズIIの訓練とされている。このフェーズでは、割り当てられた言語力のカテゴリ(CAT)に応じて18~24週間の訓練が実施される、スペイン語、フランス語、インドネシアなど、CAT I又はIIに割り当てられている言語の訓練生は、|省庁間言語円卓会議スケール(ILR)スコア2の達成を最終目標として18週間の訓練を受ける。アラビア語、北京語、タガログ語、ペルシャ語、韓国語、タイ語、パシュトー語、ウルドゥー語などのCAT III又はIVに割り当てられている言語は、24週間の訓練を実施し、ILRスケールのスコアIII又はIV(専門的な習熟度を示す)を達成することを目標とする。すべての訓練生は、この資格コースにおいて次の段階に進む際に、習熟度を測る高等面接(OPI)に合格する必要がある。アメリカ国防総省語学学校が、この言語教育を支援している。

ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクールの編制(2020年)
  • ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクール
    • 第1特殊戦訓練グループ(空挺)
    • 第2特殊戦訓練グループ(空挺)
    • 特殊戦衛生グループ(空挺)
    • 特殊部隊准士官研究所
    • デビッド・K・トゥーマ下士官学校
    • 訓練・ドクトリン・プロポーネンシー総局
    • 教育支援班
    • 国際軍事学生局
    • ボランティア学生局
    • 大学院管理局

歴代司令官[編集]

職名 在任期間 氏名 階級 備考
司令官 1952年4月~5月(*) Aaron Bank 大佐 心理戦センター創設
司令官 1952年5月~1953年7月 Charles H. Karlstad 大佐
司令官 1953年7月~1954年 Gordon Singles 大佐
司令官 1954年~1956年 Thomas A. McAnsh 大佐
司令官 1956年~1957年 Edson D. Raff 大佐 特殊戦学校に改編
司令官 1957年~1958年 William J. Mullen 大佐
司令官 1958年~1961年1月 George M. Jones 准将
司令官 1961年1月~1965年 William P. Yarborough 少将 ジョン・F・ケネディ特殊戦センターに改編
司令官 1965年~1966年 Richard G. Stilwell 准将
司令官 1966年~1968年9月 Albert E. Milloy 准将
司令官 1968年9月~1971年1月 Edward M. Flanagan, Jr. 少将 ジョン・F・ケネディ軍事援助センター&研究所に改編
司令官 1971年1月~1973年3月 Henry E. Emerson 少将
司令官 1973年3月~1975年10月 Michael D. Healy 少将
司令官 1975年10月~1977年 Robert C. Kingston 少将
司令官 1977年~1980年6月 Jack V. Mackmull 少将
司令官 1980年6月~1983年12月 Joseph C. Lutz 少将
司令官 1983年12月~1985年8月 Robert D. Wiegand 少将 ジョン・F・ケネディ特殊戦センターに改編
司令官 1985年8月~1988年6月 James A. Guest 少将 ジョン・F・ケネディ特殊戦センター&学校に改編
司令官 1988年6月~1992年7月 David J. Baratto 少将
司令官 1992年7月~1994年8月 Sidney Shachnow 少将
司令官 1994年8月~1996年5月 William F. Garrison 少将
司令官 1996年6月~1998年3月 William P. Tangney 少将
司令官 1998年3月~2000年2月 Kenneth R. Bowra 少将
司令官 2000年3月~2003年7月 William G. Boykin 少将
司令官 2003年7月~2004年6月 Geoffrey C. Lambert 少将
司令官 2004年6月~2008年6月 James W. Parker 少将
司令官 2008年6月~2010年8月 Thomas R. Csrnko 少将
司令官 2010年8月~2012年8月 Bennet S. Sacolick 少将
司令官 2012年8月~2013年11月 Edward M. Reeder, Jr. 少将
司令官 2013年11月~2014年5月 David G. Fox 少将
司令官 2014年5月~2015年5月 Eric P. Wendt 少将
司令官 2015年5月~2017年5月 James B. Linder 少将
司令官 2017年5月~2019年8月 Kurt L. Sonntag 少将
司令官 2019年8月~2021年 Patrick B. Roberson 少将
司令官 2021年~ Guillaume N. Beaurpere 少将

(*) : 心理戦センター創設時、Aaron Bank大佐が暫定的に心理戦センターの初代司令官に就任したが、その直後、Bank大佐が第10特殊部隊グループ司令官へ就任することが決まった為、後任として陸軍歩兵学校で参謀長を務めていたCharles H. Karlstad大佐が同センターの正式な司令官に指名された。

関連項目[編集]

注釈[編集]

  1. ^ SPECIAL OPERATIONS FORCES: Opportunities Exist to Improve Transparency of Funding and Assess Potential to Lessen Some Deployments (PDF) (Report). GAO. July 2015. GAO-15-571. 2018年9月4日閲覧
  2. ^ SOCoE Command Group”. US Army Special Operations Command. 2017年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月14日閲覧。
  3. ^ The US Army Special Operations Center of Excellence”. US Army Special Operations Command. 2018年9月4日閲覧。
  4. ^ Paddock, Alfred H. Jr (1979年11月). “Psychological and Unconventional Warfare, 1941–1952: Origins of a Special Warfare Capability for the United States Army”. 2007年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月28日閲覧。
  5. ^ Official overview and history of SWCS”. 2017年10月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月21日閲覧。
  6. ^ SWCS Academic Handbook (http://www.soc.mil/swcs/_pdf/AcademicHandbook.pdf)

外部リンク[編集]