テポドン2号

テポドン2
種類 大陸間弾道ミサイル
原開発国 朝鮮民主主義人民共和国の旗 朝鮮民主主義人民共和国
運用史
配備先 朝鮮民主主義人民共和国の旗 朝鮮民主主義人民共和国
諸元
重量 80,000kg
全長 30m
直径 2.0m - 2.2m

射程 4,000 km–6,700 km[1][2]

エンジン 液体燃料ロケット
推進剤 常温保存液体燃料
誘導方式 慣性航法装置
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テポドン2号(テポドン2ごう)は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が開発した大陸間弾道ミサイル (ICBM) のプロトタイプ。「テポドン」とは、このミサイルの原型であるテポドン1号が確認された地名の大浦洞からアメリカがつけたコードネームである。

2012年アメリカ合衆国国防総省が、テポドン2号はミサイルとして配備されていないと分析しており[3]、実戦配備を目指した弾道ミサイルのプロトタイプというよりは後述の「銀河」系列のローンチ・ヴィークルのプロトタイプの性格を持つものとして分析されている[4][5]

テポドン2号の改良型と見られる2009年4月と2012年4月に打ち上げられた“ロケット”は、北朝鮮の公式発表ではそれぞれ「銀河2号」「銀河3号」と呼称されている。

開発経緯と発展型[編集]

1998年[編集]

1990年にテポドン2号の開発が開始されたとみられている。1998年8月31日にテポドン2号のテストベッドとなるテポドン1号が発射されたが、三段目の固体燃料ロケットを切り離す際に爆発したと言われている。この実験により多段階ロケットの切り離し技術や姿勢制御技術を獲得している。

2006年[編集]

2006年7月5日に咸鏡北道花台郡舞水端里の発射場から日本海へ向けて初めてとなるテポドン2号の発射がスカッドやノドン6発と連続して行われた。スカッドやノドンはほぼ同じ海域に着弾し実験に成功したとみられるが、テポドン2号は発射42秒後に海上に墜落し実験は失敗した。日米の偵察衛星情報収集衛星の情報により発射は事前に予測されており、日本政府は日本海と太平洋イージス艦こんごう型護衛艦を派遣するなど、米韓と協力し情報収集に努めた。

2009年[編集]

2009年4月5日に舞水端里の発射場からテポドン2号の改良・派生型とみられる銀河2号が発射された。北朝鮮は事前に「人工衛星の『光明星2号』を衛星打ち上げロケット『銀河2号』を用いて打ち上げる」と発表していた。

銀河2号は日本海で第一段目を切り離し、さらに太平洋上で第二段目の切り離しにも成功した。北朝鮮は衛星打ち上げに成功したと発表したが、他国宇宙機関からは確認されておらず、第三段目で不具合が発生し衛星の軌道投入には失敗したと見られる。

日本が確認したのは発射地点から3100kmまでだったが、弾頭部は4000km以上離れた太平洋上に落下したと見られている[6]

2012年[編集]

4月
2012年4月13日に平安北道鉄山郡東倉里の発射場からテポドン2号の改良・派生型とみられる銀河3号が発射された。北朝鮮は事前に「人工衛星の『光明星3号』を衛星打ち上げロケット『銀河3号』を用いて打ち上げる」と発表していた。
銀河3号は打ち上げ後1分程度で空中分解して黄海の洋上に落下して実験は失敗した。同日中に朝鮮中央通信は公式に打ち上げ失敗を認める声明を発表した。
12月
2012年12月12日に、平安北道鉄山郡東倉里の発射場からテポドン2号の改良・派生型とみられる銀河3号が発射された。北朝鮮は事前に4月の発射実験のときと同名の「人工衛星の『光明星3号2号機』を衛星打ち上げロケット『銀河3号』を用いて打ち上げる」と発表していた。発射同日中に北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は、この発射により北朝鮮が人工衛星の軌道投入に成功したと見られる事を発表した[7]

2016年[編集]

2月
2016年2月7日、平安北道鉄山郡東倉里の発射場からテポドン2号の改良・派生型もしくは銀河3号と同級とみられる飛翔体の光明星が発射された[8][9][10]。搭載されていた衛星『光明星4号』は通信が途絶えて機能を喪失しているものの軌道への投入成功が確認され、北朝鮮2機目の人工衛星となった[11][12]

技術的特徴[編集]

テポドン2号は実戦配備こそされなかったものの、その射程から北朝鮮が初めて開発した大陸間弾道ミサイルともいわれ、全長30mほどあり、直径は2.2 - 2.4mで重量は80 - 90tほどと推定されている。一段目にはムスダンのロケットモータを4本束ねたクラスターロケットが用いられているとされるが、一段目、二段目とも液体燃料ロケットモータを使用している。三段目を追加した場合は三段目のみ固体燃料のロケットモータが使用されるとみられた。仮に実戦配備された場合には、固定発射施設サイロで運用される大陸間弾道ミサイルで、液体燃料は常温保存液体式、ペイロード約1t、CEP(半数命中半径)は3,000m〜5,000mになると見られていた。

推定される推進剤は、非対称ジメチルヒドラジンなどの燃料を注入したまま即応発射体制がとれる常温保存可能なものであると推定されていたが、2012年12月12日の銀河3号の発射実験においては予想に反して灯油(ケロシン)が用いられていた。ただしケロシンも燃料が注入されたままでの常温保存が可能である。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ http://www.ndtv.com/world-news/a-look-at-north-koreas-missile-arsenal-507345
  2. ^ How Terrible the Taepo?”. Bulletin of the Atomic Scientists (March–April 2003). 2009年4月8日閲覧。
  3. ^ Military and Security Developments Involving the Democratic People's Republic of Korea (PDF) (Report). U.S. Department of Defense. 2012. 2013年5月23日閲覧
  4. ^ John Schilling (2015年3月12日). “Where's That North Korean ICBM Everyone Was Talking About?”. 38 North (U.S.-Korea Institute, Johns Hopkins University School of Advanced International Studies). http://38north.org/2015/03/jschilling031215/ 2015年3月15日閲覧。 
  5. ^ Markus Schiller (2012). Characterizing the North Korean Nuclear Missile Threat (Report). RAND Corporation. ISBN 978-0-8330-7621-2. TR-1268-TSF. 2013年1月19日閲覧
  6. ^ “専門家「成功確率高い」 ICBM級の技術獲得か”. 産経新聞. (2012年4月7日). https://web.archive.org/web/20120407212253/http://sankei.jp.msn.com/world/news/120407/kor12040721230004-n1.htm 2012年4月12日閲覧。 
  7. ^ 北朝鮮ミサイル発射 米NORAD、衛星の軌道進入確認、朝日新聞 2012年12月12日
  8. ^ 北朝鮮「地球観測衛星『光明星4号』打ち上げに成功」 特別重大報道(全文)”. ハフィントンポスト (16-02-07). 16-06-23閲覧。
  9. ^ “北朝鮮がミサイル発射 沖縄上空通過、破壊措置はせず”. 朝日新聞. (2016年2月8日0時47分更新). http://www.asahi.com/articles/ASJ2664CSJ26UHBI01S.html 2016年2月8日閲覧。 
  10. ^ “北朝鮮が長距離ミサイル発射=推定射程1万2千キロ超-沖縄通過、破壊措置実施せず”. 時事通信. (2016年2月7日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2016020700051 2016年2月8日閲覧。 
  11. ^ 北韓、二度目の人工衛星登録 KBS WORLD RADIO 2016年5月30日
  12. ^ North Korea registers satellite with UN NK NEWS 2016年5月27日

参考文献[編集]

防衛省自衛隊 編『防衛白書 平成24年度版』佐伯印刷、17-19頁。ISBN 978-4905428268https://web.archive.org/web/20120819205325/http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2012/2012eb.html 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]