マメ科

マメ科
Fabaceae
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
学名
Fabaceae Lindl. (1836) nom. cons. [1]
Leguminosae Juss. (1789) nom. alt. [1]
亜科

マメ科学名Fabaceae, syn. Leguminosae)は、被子植物に含まれる分類群の1つで、いわゆるマメの仲間を含む。バラ科などと並び、非常に大きなグループであり、現代の地球で繁栄していると考えられている一群である。

マメ科・ネムノキ科ジャケツイバラ科に3分する説もあったが、ジャケツイバラ科が他の2科を内包する側系統であり、系統的には否定された。

形態[編集]

マメ科は草本、木本のいずれも含む。草本となる種は寒帯にまで分布するが、木本となる種は温帯や熱帯に多い。

羽状複葉になるものが多い。また「就眠運動(夜になると葉柄小葉の根元(葉枕)で折れ曲がり葉が閉じること)」をするものもある。この就眠運動は光量による起因ではなく体内時計によるもので一定の時刻が訪れれば光量に関係なく就眠運動を起こすことが、ネムノキに光を当て続ける実験により判明している。オジギソウでは触れただけで同じような運動を起こす。托葉があり、葉と同様に大きくなるもの(エンドウ)、蜜腺になるもの(ヤハズエンドウ)、とげになるもの(ハリエンジュ)などもある。

マメ科は花の形が大きく異なる3グループがあり、亜科単位として分かれるという説が昔から分類学上で多くの研究者に支持されている。3亜科はジャケツイバラ亜科ネムノキ亜科マメ亜科と呼ばれる。

特にマメ亜科の花は独特の形を持っており蝶形花という。花は両性花(1つの花に雄蕊と雌蕊を両方持つ)が多いが、雌雄同株(雄蕊だけを付ける雄花と雌蕊だけを付ける雌花が同じ株にできる)のものや雌雄異株(雄株と雌株が別々のもの)なども知られる。花粉は一般に虫によって媒介される虫媒花であるが、鳥媒花のものも知られる。

果実はどの亜科であっても一般に想像する豆の鞘のような細長い形であり、鞘の中には種子が1列に並んで入っている。

マメ科の種子は栄養を胚乳ではなく子葉に蓄えており、胚乳は存在しない。発芽の際には子葉を地中に残すタイプ(英:hypogeal)を取る種が多いが、ダイズやルピナスのように子葉を地上に出すタイプ(英:epigeal)も知られている。

生態[編集]

一部のマメ科植物は根粒もしくはに茎粒を持ち、根粒菌という細菌が共生している。根粒菌は植物からリンゴ酸などの効率のいい栄養分をもらって生活の場を提供して貰う代わりに、大気中の窒素を植物にとって使いやすい硝酸塩に転換(窒素固定)する。窒素は植物にとって必須元素であり、肥料として取り入れる成分の一つであるが、豊富に存在する気体窒素は自然界では一部の細菌と雷などでしか使用可能形態に転換できない。特に根粒ではその能力が高いため、それを持つ植物は自ら肥料を作ることのできることになり、そのような植物はやせている土地でもよく育つものが多い。帰化植物にはマメ科のものが多い。これは上記のように荒れ地でよく育つものが多いことも理由の一つであると考えられる。

ただしルピナス属など一部では根粒を形成せずに、クラスター根(英:cluster root)と呼ばれるブラシ状に変形した根を付ける(この根は特に必須栄養素であるリンが欠乏した状態で出現しやすいといわれる。)この根は一般の根よりも有機酸の分泌能力に優れ、土壌中に存在するが植物が利用できない栄養素(特にリンとが注目されている)を溶解し吸収しやすくすることで、貧栄養地における植物の生育を助けていると考えられている。同じような働きをする根はヤマモガシ科(学名 Proteceae)で広く見られたことから、同科の学名より当初はプロテオイド根(英:proteoid root)と呼ばれていたが、後にルピナス類を含むマメ科やヤマモモ科クワ科モクマオウ科に属する一部の種にも同じ目的で同じような形態に根を変化させるものが知られるようになったので、根の形態的特徴よりクラスター根(英:cluster root)と名前が変更された。

人間との関わり[編集]

食料として[編集]

主に種子が「」として利用される。乾燥させれば長期の保存にも耐えることから広義の穀物として扱われる。一般にタンパク質と食物繊維に富み、主食の穀類、イモ類に次ぐ重要食物と位置づけられ、世界各地に様々な食文化がある。歴史的に宗教や所得の制約から動物性食品を得がたい者にとり重要なタンパク源であった。

ただしマメ科の大部分の種類はヒトにとって有毒である。毒の強弱は様々であり、トウアズキAbrus precatorius)やエニシダ属Cytisus)の種子のように毒性が強く食べると死に到るものが多い一方で、適切な毒抜き処理をすれば豆として食用にできる種もある。マメ科の有毒成分は各種のタンパク質であることが多いので、典型的な毒抜きとしては十分な量の水と一緒に、軟らかくなるまで十分に加熱することで有毒タンパク質を変性・失活させる。多くの食用種では軟らかくなるまで茹でることで毒抜きができるが、より強い毒を持つ種では茹でたうえで何日か流水にさらしておいてから食用とすることもある。毒抜きが終わった食用種の種子は料理に用いられる。毒抜きの過程で水分を含んでいることもあってか、世界的にみてもマメ科種子(豆)を使った伝統的な料理は煮込み料理が多いが、サラダの具として使うこともある。食用種であっても加熱や流水に晒す毒抜きが不十分だと中毒することが往々にしてあり、日本では軽く炒っただけのインゲンマメを食べたことによる中毒事件が発生している。また、ソラマメ中毒のように多くの人にとっては分解できる毒素であるが、分解酵素の欠損により中毒症状を起こす人が一部にいるという遺伝疾患も知られる。

種子を食用とするマメ科植物のうち、世界で最も生産されているのはインゲンマメ属のインゲンマメである。世界的な食用種には他にソラマメ属のソラマメ、ダイズ属のダイズ、ササゲ属のアズキリョクトウが知られ、ルピナス属の一部の種など限られた地域内で食べられている種も複数存在する。ほかに種子単体だけでなく若い鞘ごと種子を食べることもあり、インゲンマメやエンドウマメではよく見られる食べ方である。モヤシのように発芽させて根や茎を食べるものや、クズのように根に含まれるデンプン(葛粉)を採取し食用とする種類もある。ルイボスは葉を茶として利用する。

蜜源植物として[編集]

蜜源植物としてはニセアカシアが利用される。日本で「アカシアの蜂蜜」といった場合、普通はアカシア属の蜂蜜ではなくニセアカシアのものを指す。

薬用[編集]

マメ科には有毒な種類が多いが、種子や枝葉を薬用として使うこともある。センナ属エビスグサハブソウなど)は下剤として使われる。

木材として[編集]

熱帯を中心に分布する木本のグループであるツルサイカチ属Dalbergia)には木材として珍重される種も多く、ゆえに種の存続が危惧される種も少なくない。絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)では、ブラジリアン・ローズウッドが商業取引が原則禁止とされる附属書Iに掲載されるほか、それ以外のツルサイカチ属は属全体が輸出に際して政府の許可書発給が必要な附属書IIに掲載される(シタンココボロキングウッドなどが該当)。附属書II掲載種にはほかにインドカリン属のコウキも含まれる。条約外の種としては、唐木カリンタガヤサンのほか、パープルハート英語版などの特徴的な材をもつ種がある。

樹脂[編集]

アカシアの仲間には樹脂を採取することにも使われ、樹脂は食品添加物などとして使われる

観賞用として[編集]

観賞用に栽培される種も多い。デイゴハナズオウスイートピールピナス spp.フジホウオウボクなど、独特の花形と多彩な花色が楽しまれる。

文化[編集]

アフリカではカラバルマメという有毒な豆を用いた裁判が存在する。

肥料植物・緑化植物として[編集]

マメ科には根粒などを持っているものが多く、それらは自力で肥料が作れるため、荒れ地でよく育つ。これは栽培植物としての扱いやすさにもつながるが、そのために荒れ地の緑化に使われる例もある。アカシアギンゴウカンがその代表例である。日本ではかつてニセアカシアをよく利用した。水田におけるゲンゲなどは緑肥植物としても使われている。半面で、この窒素固定を自分で行なう生態のため、別の場所への人為的な移植が難しい種もある。このため特に実生の場合は、植えたい場所に種子を直播きするのが良いとされているが、現在は素材の関係でポットごと土に植えるとポットは土に帰る仮植ポットなどもあるのでそれを利用するのも有効である。

近年では、エビスグサヘアリーベッチ(和名ナヨクサフジ)などが土壌改善窒素固定リン酸固定硬盤粉砕など)や雑草類の抑制(ヘアリーベッチ)線虫抑制センナ属タヌキ豆など)多くの有用効果が認められてきており、農家や家庭菜園を嗜む者など収穫目的の人々や、新宅などの庭の土壌を改善したいとする園芸家の間などで積極的に導入される動きも多く見られる。

下位分類[編集]

広義のマメ科は、74519500を含むとも[2]、650属12000種であるとも[3]される大きな科である。

花の形態により伝統的にマメ亜科ジャケツイバラ亜科ネムノキ亜科の3亜科に大別されてきた(新エングラー体系など)。クロンキスト体系ではそれらを科にしてマメ科を3科に分割し、それら3科(すなわち、従来のあるいは現在のマメ科)の属する目としてマメ目を立てた。しかしいずれも、系統的な分類ではない。APGは広義のマメ科を採用している[1][4]

分子系統によれば、従来のジャケツイバラ亜科はマメ科の中で基底的な側系統群である[5][6]。特に、ネムノキ亜科がきわめて派生的な位置にあるため、系統的な亜科分類では、ジャケツイバラ亜科はジャケツイバラ連 Caesalpinieae とカワラケツメイ連 Cassieae のそれぞれ一部(ジャケツイバラ属 Caesalpiniaナンバンサイカチ属 Cassia など)からなるコンパクトな単系統に限定される[2]。ただし、それ以外の群の新たな亜科分類は提唱されていない。

マメ科

[C] 広義のデタリウム連 DetarieaeAmherstieae を含む)

[C] ハナズオウ連 Cercideae

[C] Duparquetia (カワラケツメイ連)

[C] 広義の Dialiinae (カワラケツメイ連)

[F] マメ亜科

[?] Umtiza など

[C] 狭義のジャケツイバラ亜科 (ジャケツイバラ連の一部・カワラケツメイ連の一部)

[M] Dinizia (オジギソウ連)

[C] DimorphandraMora (ジャケツイバラ連)

[C] ArapatiellaPeltophorum など (ジャケツイバラ連)

[C] MoldenhaweraDiptychandra (ジャケツイバラ連)

[C] Erythrophleum (ジャケツイバラ連)

[M] ネムノキ亜科の大半

[C] ジャケツイバラ亜科 Caesalpinioideae
花は左右相称であるがマメ亜科のように特殊化していない。サイカチセンナジャケツイバラなど。ハナズオウハカマカズラなどは系統的には含まれない[2]
[M] ネムノキ亜科 Mimosoideae
花は放射相称、花弁は小さく(雄しべが目立つ)、多数の花からなる花序を作る。ネムノキオジギソウアカシア(ミモザ)など。
[F] マメ亜科Faboideae または 代替名 Papilionoideae)
最大の亜科、特徴的な花の形態を有する。

主な種[編集]

Caesalpinioideae ジャケツイバラ亜科[編集]

Mimosoideae ネムノキ亜科[編集]

Faboideae マメ亜科[編集]

ADAクレード[編集]

イチベンバナ連[編集]

50kb逆位クレード[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c APG II (2003)
  2. ^ a b c Stevens, P. F. (2001 onwards). “Fabaceae”. Angiosperm Phylogeny Website Version 12, July 2012 [and more or less continuously updated since]. 2012年8月20日閲覧。
  3. ^ Watson, L., and Dallwitz, M.J. (1992 onwards). “Leguminosae Juss.”. The families of flowering plants: descriptions, illustrations, identification, and information retrieval. Version: 18th May 2012. 2012年8月20日閲覧。
  4. ^ APG III (2009)
  5. ^ Bruneau, Anne; Forest; Herendeen, Patrick S.; Klitgaard, Bente B.; Lewis, Gwilym P. (2001), “Phylogenetic Relationships in the Caesalpinioideae (Leguminosae) as Inferred from Chloroplast trnL Intron Sequences”, Systematic Botany 26 (3): 487-514 
  6. ^ Cardoso, D.; Pennington, R.T.; de Queiroz, L.P.; Boatwright, J.S.; Van Wykd, B.-E.; Wojciechowskie, M.F3; Lavin, M. (2013). “Reconstructing the deep-branching relationships of the papilionoid legumes”. S. Afr. J. Bot. 89: 58–75. doi:10.1016/j.sajb.2013.05.001. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0254629913002585. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]