ミヤマガマズミ

ミヤマガマズミ
福島県会津地方 2014年6月
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : キキョウ類 Campanulids
: マツムシソウ目 Dipsacales
: レンプクソウ科 Adoxaceae
: ガマズミ属 Viburnum
: ミヤマガマズミ V. wrightii
学名
Viburnum wrightii Miq. var. wrightii (1866)[1]
和名
ミヤマガマズミ
英名
Wright's viburnum

ミヤマガマズミ(深山莢蒾[2]学名: Viburnum wrightii )は、ガマズミ科[注 1]ガマズミ属落葉低木[3][4][5]

古いクロンキスト体系では、ガマズミ属はニワトコ属とともにスイカズラ科に属していた。

分布と生育環境[編集]

日本では、北海道本州四国九州に分布し、標高30 - 1400 mの丘陵地から山地の樹林内や林縁に生育する。一般にガマズミ類の中では、やや高地に生える[2]。国外では、サハリン南部、朝鮮半島中国大陸に分布する[3][4][5]

形態・生態[編集]

落葉広葉樹低木[2]。樹高は4メートル (m) になる。の樹皮は暗い灰褐色[2]。若いは緑色で、多くは紫褐色を帯び、毛がないか長くて粗い単純毛が生えており、皮目がある[2]。樹皮は古くなると縦に裂けてくる[2]

は対生し、葉柄は長さ10 - 20ミリメートル (mm) になり、ふつう赤みを帯び、伏した長毛が生え、ときに短い束生毛が混じり、上面に溝があり、ふつう托葉はない。葉身は長さ6 - 14センチメートル (cm) 、幅4 - 9 cm、形は倒卵形から広倒卵形で、先端は急に細くなってとがり、基部は広いくさび形、円形、鈍形になり、縁には浅い3角形の鋸歯がある。葉の表面はしばしば光沢があり、無毛か脈上にまばらな毛と側脈間に絹毛があり、裏面はごく細かい不明瞭な腺点があり、脈上に長い伏毛が、脈腋に星状毛が生える。側脈は6 - 9対あり、葉の縁までほぼまっすぐに伸び、表面はわずかにへこみ裏面に突き出る。葉の裏面下部の縁に1 - 4対の腺点がある[3][4][5]。秋には赤色系に紅葉し、ガマズミよりも色鮮やかになる[6]

花期は5月 - 6月[2]。短い枝の先に、1対の葉とともに径6 - 10 cmになる散房花序をつけ、白色の多数のを密につける。花序軸や小花柄には単純毛か星状毛が散生する。花の下につくは線形で長さ約1 cm。はごく小さい短3角形で、上部が5裂する。花冠は車状で上部が5中 - 深裂して平開して径5 - 7 mmになり、花冠裂片は円く長さ2 - 2.8 mmになる。雄蕊は5個あり、花冠から突き出て、長さ3 - 4.5 mm、葯は長さ0.5 mmになる。子房は長さ1.5 - 2.5 mmで、無毛で柱頭はほぼ無柄。

果期は8 - 10月。果実は長さ5 - 7 mmになる球形または卵形の核果で、光沢がある暗赤色に熟し、よく目立つ[2]。中に種子1個が入る核は長さ4.5 - 6.5 mm、厚さ1.8 - 2.5 mmになる卵球形で、核の背側に2個、腹側に3個の浅い溝がある[3][4][5]

冬芽は卵形で、紅色を帯びた芽鱗は4枚つき、内側の芽鱗に毛がある[2]。花芽は葉芽に比べてやや丸みがあり、葉芽は細い[2]。頂芽は側芽よりも大きく、側芽は枝に対生する[2]。葉痕は三角形やV字形で、維管束痕は3個つく[2]

ギャラリー[編集]

下位分類[編集]

  • コミヤマガマズミ Viburnum wrightii Miq. f. minus (Nakai) Sugim.[7]
  • オオミヤマガマズミ Viburnum wrightii Miq. var. stipellatum Nakai[8] - 北海道、本州、四国、九州に分布し、標高30-2000mの山地に生育する。基本種のミヤマガマズミより高地に生え、太平洋側に多い。葉の表面に光沢がなく、表面全体に微小な単純毛が、ときに分岐毛が生える。葉はミヤマガマズミより大きく、鋸歯は明瞭で多数ある。ミヤマガマズミの鋸歯が片側ほぼ15個であるのに対して、本変種の鋸歯は片側25個ある[3][4]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 最新の植物分類体系のAPG体系ではガマズミ科(Viburnaceae)であるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではスイカズラ科(Caprifoliaceae)に分類された[1]

出典[編集]

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Viburnum wrightii Miq. var. wrightii ミヤマガマズミ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月2日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 27.
  3. ^ a b c d e 『日本の野生植物 木本II』pp.232-233
  4. ^ a b c d e 『樹に咲く花(合弁花・単子葉・裸子植物)山溪ハンディ図鑑5』pp.446-447
  5. ^ a b c d 『新牧野日本植物圖鑑』p.708
  6. ^ 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日、76頁。ISBN 978-4-8299-0187-8 
  7. ^ コミヤマガマズミ, 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  8. ^ オオミヤマガマズミ, 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献[編集]

  • 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本II』平凡社、1989年。 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、27頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 茂木透、城川四郎ほか『樹に咲く花(合弁花・単子葉・裸子植物)』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 5〉、2001年。 
  • 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男 編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年。 
  • 大場秀章 編著『植物分類表(初版第3刷訂正入)』アボック社、2011。