ロストウェイヴ

 

ロストウェイヴ(英語: Lostwave)とは起源や曲名、作曲者が不明な曲を説明するために使用されるネット上の用語である。この単語は2019年Reddit上でインターネット上で最も不思議な曲を捜索していたネットユーザー達がEveryone Knows That (Ulterior Motives)等他の出所不明の曲の捜索を行っていた際に作られた。ロストウェイブに該当する曲の大半は1980年代から1990年代を中心としたインターネットが普及する以前に作成されたものと思われるが、それ以外の年代の曲に対しても使用されている。この単語は英語で失われた事を意味する"lost"と「ニュー・ウェイヴ」や「コールド・ウェイヴ」、「ヴェイパーウェイヴ」などの"wave"のかばん語である。

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インターネット上で最も不思議な曲[編集]

インターネット上で最も不思議な曲と呼ばれることになった曲はDarius S.というユーザーにより録音された。彼は西ドイツ(当時)の公共放送だった北ドイツ放送のラジオで流れていた曲を録音した[1][2]。 録音された音源はXTCザ・キュアーなどの他のバンドの曲と共にカセットテープへと録音された。これらの曲のキレイなコピーを確保する為、DJのトークなどは一切編集で消された事がこの曲の本来のタイトル及び正確な放送日が不明になった原因と考えられている[3]

この曲は2004年2007年にネット上に初めてアップロードされたがこの時は注目を集めなかった。2019年になってガブリエル・ダ・シルバ・ヴィエイラというブラジル人ティーンエイジャーがこの曲のことをスペインの独立系レーベルであるデッド・ワックス・レコードのニコラス・ズニーガから知ったことから彼は曲の一部をYouTubeや様々なRedditの音楽関係の板にアップロードし、最終的にr/TheMysteriousSong板を創設した[4]

2019年5月27日、オーストラリアの音楽ニュースサイトTone Deafがこの曲に関する最古の記事を書き、執筆者のタイラー・ジェンクは捜索の初期の段階について触れ、2013年に行われたヨハン・リンデルの「On the Roof」の捜索と類似していることを挙げた[5]

また同年にはDJのポール・バスカヴィル英語版がこの曲との関連が疑われた。バスカヴィルは当時の自身の番組であった「Musik für junge Leute」("若者の為の音楽") で1982年から1984年の間に流した音楽の中に後に「インターネット上で最も不思議な曲」と呼ばれることになる正体不明のニュー・ウェイヴの楽曲が含まれていたのではないかと疑われた[6][7][8]。彼は1回だけNDRの司会者がこの音楽を流し、音源を捨てたのではないかと考察し、最終的にバスカヴィル説は否定された[9]

Everyone Knows That (Ulterior Motives)[編集]

2021年にcarl92というユーザーが1999年に録音したという17秒ほどの長さの粗いサンプルをWatZatSongというサイトにアップロードした[10][11]。それ以来、ロクセット(一部のユーザーは2016年に発売されたGood Karma英語版というアルバムのタイトルソングがこの曲を再編集したのではないかという説を提唱している)やサヴェージ・ガーデンとそのボーカルのダレン・ヘイズなど、様々な説が提唱されている。

このサベッジ・ガーデン/ダレン・ヘイズ説は2023年に入り一気に話題になった。この曲を分析したあるYouTuberがこのバンドが1997年に発表したTo the Moon and Back英語版とよく似ているのではないかと主張し、この曲が彼らのデモではないかと主張した[12]。2023年11月17日になり、ヘイズ本人が自身のXに 「Everyone Knows That」とのみ記したポストを貼った事により、彼こそが歌い手の正体ではないか、そしてそれの発表が近いのではないかという考察が広まった[13]

またこの曲には生成AIが使用されたのではないかという疑惑も出ていたが、この曲が世に出たのがChatGPTなどのツールが普及する前の2021年である事や、他のユーザーによりAIを使用した他の曲をサンプリングなどを用いた追加の部分の作成を試みた所最初の17秒とは全く違う曲が出来上がってしまう事が多い為AI説はすぐ否定された。

On the Roof[編集]

On the Roofとはヨハン・リンデルによる曲である。この曲は数年ほど正体が不明だったが2013年にリンデルの曲であると判明した。なおこの時点でリンデル本人はとっくに歌手を廃業し、芸術家に転向していた[5]

Ready 'n' Steady[編集]

Ready 'n' Steadyとは1979年にD.A.というグループが発表した楽曲である。この曲はシングルなどでの発売実績が無かったにも係わらず、バブリング・アンダー・ホット100英語版の106位にチャートインした。その後106位をピークにそのままチャートから消えた[14]。この曲はシングルなどのリリース実績が無いにも係わらずビルボードへチャートインした唯一の例であった。この曲の存在は何年もの間疑われたが、2016年に存在が確認された。また同年にミネアポリスのラジオ局であるKFAI英語版で初めて放映された[15]。現時点でこの曲がラジオで放映された事が確認されている唯一の例である。

Cancion de alicia[編集]

Cancion de Aliciaと2021年フェイスブックにてJitomate Tristeというユーザーがアップロードした1分5秒ほどの曲である。この曲を歌っている人物の英語の訛りから南アメリカ、特にチリアルゼンチンなどのバンドとささやかれていたが、2021年にGin and tonicというチリ出身のバンドではないかと言われていたがバンドメンバーが否定した。。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ Browne, David (24 September 2019). "The Unsolved Case of the Most Mysterious Song on the Internet". Rolling Stone. 2023年12月1日閲覧
  2. ^ Jones (2019年11月18日). “Help solve a decades-long mystery: What is the name of this mysterious 80s song?” (英語). CTVNews. 2023年5月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
  3. ^ Reeve, Tanja (2020年5月30日). “Die Jagd nach dem Most Mysterious Song on the Internet” (ドイツ語). Braunschweiger Zeitung. 2020年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
  4. ^ “This Mysterious Three-Minute Song Has The Internet Baffled”. 2 Ocean's Vibe News. (2021年7月29日). オリジナルの2021年12月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20211226010059/https://www.2oceansvibe.com/2021/07/29/this-mysterious-three-minute-song-has-the-internet-baffled-video/ 2023年12月2日閲覧。 
  5. ^ a b Jenke, Tyler (2019年5月27日). “Can you help some internet sleuths identify a mysterious song?” (英語). Tone Deaf. 2023年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月2日閲覧。
  6. ^ Knörer, Ekkehard (2019年9月27日). “Wer kennt diesen Song?” (ドイツ語). www.zeit.de. 2019年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月2日閲覧。
  7. ^ 80er-Song lässt User verzweifeln: "Most mysterious song on the internet"? Spuren nach Deutschland” (ドイツ語). www.rotenburger-rundschau.de (2020年6月4日). 2023年12月2日閲覧。
  8. ^ Ulrich, Viola (2019年9月11日). “Mysteriöser Song: Wer kennt dieses Lied aus den 80er-Jahren?”. DIE WELT. https://www.welt.de/kmpkt/article200005552/Mysterioeser-Song-Wer-kennt-dieses-Lied-aus-den-80er-Jahren.html 2023年12月2日閲覧。 
  9. ^ Hamburg Journal: Der geheimnisvolle Song aus dem NDR Archiv | ARD Mediathek” (ドイツ語). www.ardmediathek.de. 2020年12月9日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ Klee, Miles (12 November 2023). "Internet Sleuths Want to Track Down This Mystery Pop Song. They Only Have 17 Seconds of It". Rolling Stone (アメリカ英語). 2023年12月2日閲覧
  11. ^ carl92. “Can you help me name this tune?” (英語). WatZatSong. 2023年12月2日閲覧。
  12. ^ [EKT theory Is Everyone Knows That (Ulterior Motives) a lost Savage Garden Demo?]” (英語) (2023年10月17日). 2023年12月2日閲覧。
  13. ^ Hayes, Darren [@darrenhayes] (2023年11月18日). "Everyone Knows That" (英語). X(旧Twitter)より2023年12月2日閲覧
  14. ^ Billboard”. Nielsen Business Media, Inc. (1979年6月30日). 2023年12月2日閲覧。
  15. ^ Crap From The Past - July 8, 2016: Paul Haney presents a world premiere of D.A.'s Ready 'N' Steady from 1979!” (2016年7月8日). 2023年12月2日閲覧。