内陸国

世界の内陸国(紫色は二重内陸国)
世界の島国
領土がすべてで構成される国、緑色は陸上の国境を持つ国)
陸上の国境がない国
(大陸であるオーストラリアを含む)

内陸国(ないりくこく、: landlocked country)とは、国境に囲まれ、がない国家である。 世界には48の内陸国がある。

歴史[編集]

内陸であることは、河川などの水系さえ確保できていれば防衛上はこれ以上ない利点であった。河川は上流であるほど抑える価値があり、下流域は上流域より価値が低かった。日本でも干ばつなどの際、古代から、上流の田畑には水が行き届くが下流では水不足になったという記録は枚挙にいとまがない[要出典]。また、6世紀から8世紀にかけては日本では都は多く内陸におかれた。これは白村江の戦い新羅連合軍に敗北した日本の朝廷が防衛を考慮し、大阪湾にでる河川を確保したうえで、山城大和近江といった内陸に貴人の住処を移し都を構えたこととも関連する。なお、世界的にみても、古今問わず、洋の東西を問わず、海を持つ大国の都は海からの上陸の容易な海岸沿いの沿岸都市ではなく、あくまでも河川のある内陸都市に宮城(きゅうじょう)がおかれていることが多い(例外としては、コンスタンティノープルを首都とした東ローマ帝国や、それをイスタンブールとして引き継いだオスマン帝国などが挙げられる)。

その後、世界で大規模船舶建造が行われ食糧や燃料、人員を大量に積んで長距離での航海が盛んになり、植民地を得ることが自国の繁栄につながると考えられるようになると、進出侵略上では海に面した国のほうが先んじることになった。大型船舶の建造は植民地と本国との海運貿易の発達を促し、中世から第一次世界大戦戦後にかけては欧州各国は内陸国であっても海への出口を確保することに躍起になった。

白はクロアチア領。赤はボスニア・ヘルツェゴビナで唯一海岸がある町ネウム。

第一次世界大戦は毒ガスの開発・近代的な戦車の使用・航空機による空爆などが初めて大規模に行われた戦争であり、その後の第二次世界大戦でも制空権の確保が被害の拡大と戦況を左右したこともあり、海岸線の確保は以前よりは重視されなくなっている。貿易産業においても、欧州の時計などの機器、高級酒、生鮮花卉、ICチップなどは内陸で生産して空港から航空機により輸送することで、船便よりも短時間で世界に運ばれ、20世紀には先進各国では航空機産業と空港の整備が争うように進んだ。

内陸国・海岸線をめぐる事情[編集]

内陸国の通過貿易に関する条約は初めて、内陸国が関税なしに他国を通過して海に連絡する権利を定めた多国間条約である。その後に採択された、海洋に関する包括的な条約、国連海洋法条約でも、同じく「内陸国の海への出入りの権利及び通過自由」を認めている。国際連合には、発展途上の内陸国を援助するための行動プログラムがある。

いくつかの内陸国は内陸の「海」(例えばカスピ海アラル海)に面している。しかし、これらの「海」は湖ともみなされるため、また、内陸の海と外の海との間で船舶の航行が行えないため、そのような国(カザフスタンなど)は内陸国とされる。

内陸国には、海に接続するための回廊と呼ばれる陸地が与えられることがある。例えば、第一次大戦後のポーランドに与えられたポーランド回廊がそうである。

しかし、回廊によって他国の領土を分断し飛地ができてしまうことがある。

  • ポーランド回廊の場合には東プロイセンドイツの飛地となり、第二次世界大戦開戦の原因の一つとなった。
  • コンゴ民主共和国の回廊でも同様にアンゴラの飛地(カビンダ)を生じた。
  • ネウムの場合、ヴェネツィア共和国領とドゥブロヴニクが共に現在のクロアチア領となり、結果的にボスニア・ヘルツェゴビナの回廊によりクロアチアの飛地を生じた格好となった。

二重内陸国[編集]

国境を接する全ての国が内陸国である内陸国のことを二重内陸国(doubly landlocked country)という。二重内陸国では、に出るために少なくとも2つの国境を越えなければならない。

現在世界にある二重内陸国は、リヒテンシュタインウズベキスタンのみである。うちウズベキスタンは塩湖であるアラル海に面する。

準内陸国[編集]

以下に掲げる国は、国土の面積に対して、非常に短い海岸線しか持っていない(陸上国境線と海岸線の合計のうち海岸線の占める割合が5%未満)。

内陸国の一覧[編集]

面積 (km²) 人口
アフガニスタンの旗 アフガニスタン 647,500 29,117,000
アンドラの旗 アンドラ 468 84,082
アルメニアの旗 アルメニア 29,743 3,254,300
オーストリアの旗 オーストリア 83,871 8,396,760
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン [a] 86,600 8,997,400
ベラルーシの旗 ベラルーシ 207,600 9,484,300
ブータンの旗 ブータン 38,394 691,141
ボリビアの旗 ボリビア 1,098,581 10,907,778
ボツワナの旗 ボツワナ 582,000 1,990,876
ブルキナファソの旗 ブルキナファソ 274,222 15,746,232
ブルンジの旗 ブルンジ 27,834 8,988,091
中央アフリカ共和国の旗 中央アフリカ共和国 622,984 4,422,000
チャドの旗 チャド 1,284,000 10,329,208
チェコの旗 チェコ 78,867 10,674,947
エチオピアの旗 エチオピア 1,104,300 85,237,338
ハンガリーの旗 ハンガリー 93,028 10,005,000
カザフスタンの旗 カザフスタン[a][b] 2,724,900 16,372,000
コソボの旗 コソボ[c] 10,908 1,804,838
キルギスの旗 キルギス 199,951 5,482,000
ラオスの旗 ラオス 236,800 6,320,000
レソトの旗 レソト[d] 30,355 2,067,000
リヒテンシュタインの旗 リヒテンシュタイン 160 35,789
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク 2,586 502,202
北マケドニアの旗 北マケドニア 25,713 2,114,550
マラウイの旗 マラウイ 118,484 15,028,757
マリ共和国の旗 マリ 1,240,192 14,517,176
モルドバの旗 モルドバ 33,846 3,567,500
モンゴル国の旗 モンゴル 1,564,100 2,736,800
ネパールの旗 ネパール 147,181 29,331,000
ニジェールの旗 ニジェール 1,267,000 15,306,252
パラグアイの旗 パラグアイ 406,752 6,349,000
ルワンダの旗 ルワンダ 26,338 10,746,311
サンマリノの旗 サンマリノ[d] 61 31,716
セルビアの旗 セルビア 88,361 7,306,677
スロバキアの旗 スロバキア 49,035 5,429,763
南オセチアの旗 南オセチア[c] 3,900 72,000
南スーダンの旗 南スーダン 619,745 8,260,490
エスワティニの旗 エスワティニ 17,364 1,185,000
スイスの旗 スイス 41,284 7,785,600
タジキスタンの旗 タジキスタン 143,100 7,349,145
沿ドニエストル共和国の旗 沿ドニエストル共和国[c] 4,163 537,000
トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン[a] 488,100 5,110,000
ウガンダの旗 ウガンダ 241,038 32,369,558
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン[b] 447,400 27,606,007
バチカンの旗 バチカン市国[d] 0.44 826
ザンビアの旗 ザンビア 752,612 12,935,000
ジンバブエの旗 ジンバブエ 390,757 12,521,000
合計 16,963,624 470,639,181
世界に占める割合(%) 11.4% 6.9%
a  世界最大の塩湖であるカスピ海に海岸線がある。
b  塩湖であるアラル海に海岸線がある。
c  係争地域で限られた国だけが承認する。
d  1つの国のみに囲まれている

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]