在日中国人

在日中国人
在日华侨
中華人民共和国の旗中華民国の旗日本の旗
総人口
761,563人[1]
居住地域
全国各地
言語
漢語諸方言(普通話広東語閩南語など)・日本語英語
宗教
無宗教仏教儒教道教など

在日中国人(ざいにちちゅうごくじん)は、日本に在住している中華人民共和国の国籍を持つ者を指す。広義には中華人民共和国(香港マカオを含む)と中華民国台湾)の国籍を持つ者を指すが、台湾籍の者は現在では在日台湾人と呼ばれる事が多い。在日華僑とも呼ぶ。ちなみに、日本に帰化したものは中国系日本人: 华裔日本人、日籍华人)と呼ばれ、本項では触れない。

在日中国人は2022年末現在761,563人となっており、他の在日外国人より多い[1]。留学や技能研修など日本に学びに来ている人が多いが、働いている人も多い。職種は技術・人文知識・国際業務や調理師から経営者や大学教授まで幅広い。戦前から多数日本に居を構えており横浜中華街などを形成するなどした。その人数は1990年代から倍増し2000年代前半からも増加傾向にある[2]

統計

人数

2022年末現在、日本に中長期に滞在している中国人は76万1563人(194国中1位)である。そのうち永住している中国人やその家族は29万1603人(2位)であり[注 1]、それ以外の中国人が52万2072人である[3](2019年末時点)。

日本における在留外国人の推移

在留資格

在日中国人の40%は就業制限のない永住者(26万963人)、特別永住者(872人)、定住者(2万8282人)、日本人の配偶者等(3万900人)、永住者の配偶者等(1万5592人)である[4]。制限のある在留資格としては留学13万2441人(1位)、調理師などの技術・人文知識・国際業務8万1736人(2位)、技能実習7万7806人(3位)が多い[4]。この他に経営管理(1万3397人)や企業内転勤(5797人)、教授(1412人)や研究(380人)や高度専門職(7258人)、文化活動(1049人)が在日外国人の中で最も多く、芸術(61人)もアルゼンチンに次ぐ第3位である[2]。在日中国人の総数は在日外国人の3割を占めており、医療(76%)や高度専門職(66%)は在日外国人の半分以上、技能(39%)や経営・管理(52%)、技術・人文知識・国際業務(36%)や留学(39%)なども在日外国人の4割以上が在日中国人である[4]

職種

2020年の在日中国人の労働力人口は38万5848人(全体の21%)[5]。2015年時点で就業する職業は「生産工程従事者」(30%)、「サービス職業従事者」(11%)、「販売従事者」(8%)、「農林漁業従事者」(4%)、が多かった[6]

地域

在日中国人の居住地域は関東地方(53%)、近畿地方(16%)、中部地方(15%)が多い[2]

歴史

戦前

1895年に亡命した孫文や1904年に来日した魯迅などが居た。1917年に留学した周恩来はその後政務院総理国務院総理になった。1931年の朝鮮排華事件の際には日本内地でも朝鮮人との衝突が起きた。1943年に留学した李登輝はその後中華民国総統になった。

日華断交

1972年、日本は中華人民共和国と国交を結び、中華民国と断交した。当時の在日中国人の国籍は中華民国であったが断交のため帰化、中華人民共和国籍への切り替え、アイデンティティの問題で無国籍を選ぶ者に別れた。日華断交により約2万人の華僑が中華民国籍を喪失した[7]

1980年代

在日中国人は戦前から日本に在住していたが、1972年に日本と中華人民共和国が国交を締結し(日中国交正常化)、1979年に台湾が出国を自由化した為、ニューカマーの在日中国人が増えていた。1984年の在日中国人・台湾人は6万3920人だったが、バブル景気を経て1990年までに14万5841人に増加した。

1990年代

1990年の在日中国人・台湾人は14万5841人だったが、1995年に21万6042人となり、2000年には1990年の2倍以上の32万2486人になった[8]。1989年に六四天安門事件が起き、1990年から中国人による集団密航が始まり、不法入国が問題になった[9]。1993年の密航事件は9件で、ほぼ全てが福建省からの密航だった[10]。1995年までに不法残留は3万8464人(4位)となり、刑法犯は1990年の1288人から2919人に倍増し、事件数は1841件から7828件に4倍増した[11]。中国では1997年に香港返還が行われたが、集団密航は蛇頭などの暗躍により73件に増加した[12]

2000年代

2000年の在日中国人・台湾人は32万2486人だったが、2005年にかけて増加し50万1960人になった[8]。特に留学生は1998年(3万2370人)からFIFAワールドカップが開催された2002年(7万3795人)の間に倍増した[13]。しかし萩国際大学の学生の不法就労問題や福岡一家4人殺害事件があり[14]、2003年に中央教育審議会が「新たな留学生政策の展開について」を答申して、「特に学生数の確保という観点からのみ安易に留学生を受け入れること」を禁止した[15]。一方、2000年の中国人刑法犯は1万4176件(1位)・3038人(1位)であり来日外国人の刑法犯の約半分(48%)が中国人だった[16]。来日外国人による侵入盗の約8割は中国人で、ピッキング行為が問題になっていた[16]。不法残留は3万2896人(3位)で減少しており、不法入国は1509人(1位)だったが集団密航(14件)は激減した[16]

2007年、在日中国人・台湾人が初めて在日韓国・北朝鮮人の在留数を上回った[8]。同年8月、人民網が都民の100人に1人は在日中国人であると報じた[17]。2008年、池袋で東京中華街構想が持ち上がった[18]。長野では北京オリンピック聖火リレーに多くの中国人留学生が動員され、独立派ともみ合いになった[19]。同年、ローソンは新卒の中国人留学生を積極的に採用した[20]。なお2000年代に帰化して日本国籍を取得した在日中国人の数は4万人以上である[21]

2010年代

在日中国人・台湾人は2010年に67万8391人だったが、尖閣諸島中国漁船衝突事件東日本大震災が起きたためか、2011年は在日中国人・台湾人が減少した[8]。なお2012年以降の統計は計算方法が変わり、在日中国人から台湾が分離し短期滞在や公務を含まなくなったので、2011年以前の統計と単純比較できなくなった[22]。もし2015年の在日中国人・台湾人を総在留外国人ベースで単純合算すると89万3219人になる[2]。一方、犯罪の検挙人数は2018年に4,586件(1位)であった[23]。2014年の中国人の犯罪は万引き空き巣・払出盗が多かった[24]

2020年代

各地のコミュニティ・中華街

都道府県別中国人人口[25]
都道府県 2017年末 2010年末
東京都 205,041 164,201
神奈川県 66,675 56,095
埼玉県 65,607 48,419
大阪府 60,024 51,056
千葉県 49,585 45,427
愛知県 47,749 47,454
兵庫県 23,153 25,585
福岡県 20,210 21,936
京都府 14,192 12,005
広島県 14,179 14,354
茨城県 12,827 15,726
岐阜県 11,576 15,340
静岡県 11,573 13,458
長野県 9,300 10,964
北海道 9,244 9,705
岡山県 7,926 10,082
三重県 7,867 9,454
群馬県 7,104 7,411
栃木県 6,764 8,199
宮城県 6,045 7,231
新潟県 5,106 5,649
富山県 5,070 5,723
滋賀県 4,795 4,935
石川県 4,561 5,171
愛媛県 4,226 5,039
香川県 4,007 4,101
熊本県 3,891 4,672
福島県 3,595 4,879
山梨県 3,552 4,070
福井県 3,045 4,382
奈良県 2,963 3,512
大分県 2,960 4,400
山口県 2,897 3,908
長崎県 2,535 4,037
沖縄県 2,359 2,011
鹿児島県 2,230 2,941
山形県 2,183 2,923
徳島県 2,012 3,130
岩手県 1,944 3,018
島根県 1,418 2,382
宮崎県 1,417 1,893
和歌山県 1,358 1,517
高知県 1,280 1,401
佐賀県 1,266 1,960
青森県 1,217 1,828
秋田県 1,095 1,940
鳥取県 1,040 1,768
合計 730,890 687,156

日本との地理的な近さから、古くから日本へ移住してきており、日本三大中華街として横浜市神戸市長崎市中華街を形成している。その他、東京池袋亀戸平井周辺や西川口駅周辺[1]などに代表されるように、近年では各地に中国人コミュニティを形成しているが、圧倒的に多いのは関東圏である。

在日中国人ビジネス

合法系
違法系

国防動員法

著名な人物

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 永住者、永住者の配偶者等、特別永住者。

出典

  1. ^ a b 国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人 調査年月日:22年12月
  2. ^ a b c d 在留外国人統計(旧登録外国人統計)”. 総務省 統計局 (2015年). 2015年11月14日閲覧。
  3. ^ 国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人”. 統計局. 2020年8月1日閲覧。
  4. ^ a b c 国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人”. 法務省. 2020年2月15日閲覧。
  5. ^ 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)”. 厚生労働省. 2023年3月27日閲覧。
  6. ^ 表Ⅵ-2-1 男女,国籍,職業(大分類)別 15 歳以上外国人就業者の割合-全国(平成 27 年)”. 総務省. 2020年2月15日閲覧。
  7. ^ 祖国の台湾には入国できず、住居のある日本にも戻れない…「無国籍」の早大教授は羽田空港で途方に暮れた”. プレジデント社. 2022年7月10日閲覧。
  8. ^ a b c d 第1部 出入国管理をめぐる近年の状況”. 平成24年版「出入国管理」白書 (2012年). 2015年11月21日閲覧。
  9. ^ 第2章 巧妙化する密航・密輸”. 平成11年版 海上保安白書(概要) (1999年). 2015年11月21日閲覧。
  10. ^ 第2章 国際化社会と警察活動”. 平成5年 警察白書 (1994年). 2015年11月21日閲覧。
  11. ^ 第8章 国際化社会と警察活動”. 平成8年 警察白書 (1996年). 2015年11月21日閲覧。
  12. ^ 第9章 国際化社会と警察活動”. 平成10年 警察白書 (1998年). 2015年11月21日閲覧。
  13. ^ 出入国管理-新時代における出入国管理行政の対応”. 出入国管理(白書) (1998年). 2015年11月21日閲覧。
  14. ^ 吉富有治 (2009年7月). “逃げ出す大学が続出する「公私協力方式」の綻び”. 新潮社 Forsight. 2015年11月21日閲覧。
  15. ^ 新たな留学生政策の展開について(答申)~ 留学生交流の拡大と質の向上を目指して ~”. 中央教育審議会 (2003年12月16日). 2015年11月21日閲覧。
  16. ^ a b c 第8章国際化社会と警察活動”. 平成13年 警察白書 (2001年). 2015年11月21日閲覧。
  17. ^ 東京の華人圏が日に日に拡大、100人に1人は中国人”. 人民網 (2007年8月8日). 2015年11月21日閲覧。
  18. ^ 「池袋中華街」構想に「待った」 地元商店街が反発”. J-CAST (2008年9月8日). 2015年11月21日閲覧。
  19. ^ 北京五輪聖火、騒然 長野でリレー 3人逮捕、けが人も・走者囲む警官100人”. 朝日新聞 (2008年5月5日). 2015年11月21日閲覧。
  20. ^ ローソン中国人留学生大量採用 日本人より優秀だから?”. J-CAST (2008年4月26日). 2015年11月21日閲覧。
  21. ^ 法務省、帰化許可申請者数等の推移
  22. ^ 平成24年末現在における在留外国人数について(速報値)”. 法務省入国管理局 (2013年3月18日). 2015年11月14日閲覧。
  23. ^ 131 年次別 外国人による犯罪の検挙件数及び検挙人員”. 警察庁. 2020年2月15日閲覧。
  24. ^ 来日外国人犯罪の検挙状況(平成26年)”. 警察庁 (2014年). 2015年11月21日閲覧。
  25. ^ 都道府県別本籍地別外国人登録者(その1 中国)独立行政法人統計センター公式サイト
  26. ^ 池袋チャイナタウンの原点、老舗「知音」が倒産=中国系同士の価格競争に敗北―華字紙
  27. ^ 「日本人お断り」チャイニーズマフィア経営の違法風俗店に潜入撮 | FRIDAYデジタル
  28. ^ 留学生が連日、限度額ギリギリの免税品「爆買い」…不正転売防止へ手続き電子化 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン
  29. ^ a b 毎日のように尖閣周辺にやってくる中国船 中国の「民間人」に占領される可能性も | デイリー新潮
  30. ^ 櫻井氏 在日中国人が本国命令でテロや争乱起こす危険性指摘|NEWSポストセブン
  31. ^ 成績トップだった中国人留学生は、母国の“依頼”を断れずスパイ活動の「末端」に転落した 夢を持つ若者を引き込む中国軍の情報活動 日本へのサイバー攻撃関与の疑いで国際手配へ | 47NEWS
  32. ^ “「怒羅権」メンバー逮捕へ 警視庁 傷害容疑 男性に因縁、耳切断”. MSN産経ニュース. (2011年7月6日). https://web.archive.org/web/20110708213244/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110706/crm11070608330005-n1.htm 2021年12月19日閲覧。 
  33. ^ “フィリピン版「怒羅権」? 危険ドラッグ欲しさにひったくり 不良少年グループの実態とは”. 産経新聞. (2014年8月23日). http://www-origin.sankei.com/smp/affairs/news/140823/afr1408230006-s.html 2021年12月19日閲覧。 
  34. ^ #アベプラ②怒羅権創設メンバーが生出演 なぜ半グレの道に?カンニング竹山が聞く - ABEMA Prime(2021年3月15日)

資料

  • 『在日中国人大全』日本僑報社

外部リンク

(英語)