小池滋

小池 滋(こいけ しげる、1931年7月15日[1] - 2023年4月13日[2])は、日本の英文学者翻訳家鉄道史研究家。 旧・東京都立大学名誉教授。ディケンズ・フェロウシップ日本支部[3]・第2代支部長。

経歴[編集]

東京出身。1953年東京大学文学部英文学科を卒業。1958年に同大学院博士課程満期退学、國學院大學講師、1959年東京都立大学講師、1962年助教授、1980年教授、1989年退官、名誉教授、東京女子大学文学部教授。2000年退任[4]

業績[編集]

英文学者として[編集]

特にチャールズ・ディケンズについての研究が多く、『オリヴァー・トゥイスト』などの訳書を出版している。またアーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ全集』や、19世紀ヴィクトリア女王時代に広く読まれた風刺画付き新聞「パンチ」の日本語訳も上梓している。文学以外でも、文藝春秋の「世界の都市の物語」シリーズでロンドンについての一巻を執筆し、紅茶文化などの解説書も手がけている。高尚かつ難解とされるシェイクスピアよりヴィクトリア朝当時の労働者や中産階級に広く親しまれたディケンズに関心を持ち、大衆文化への研究を深めている。

鉄道史研究家として[編集]

小池は幼少の頃から鉄道を愛好していたが、文学作品の背景にあるイギリスの文化に鉄道が深く関わっている事を知り、鉄道関連も自身の大きな研究対象になった。1979年に出版された『英国鉄道物語』(では、19世紀のイギリスの鉄道に焦点を当て、その成立と発展について社会史・文化史からの分析を加えている。同書は高い評価を受け、翌年には毎日出版文化賞を受賞(他に日本シャーロック・ホームズ・クラブ長沼賞も受賞)、2006年に再版された。

また、イギリスで盛んな鉄道保存運動への知識も深く、自らも石川県廃線となった尾小屋鉄道の車両保存活動に参加している。

この他、小池は19世紀のイギリスの技術者、イザムバード・キングダム・ブルネルの研究会を発足させ、彼の顕彰活動にも力を入れている。2006年には日本機械学会と共催で生誕200年記念シンポジウムを開催した。

著作[編集]

  • 『幸せな旅人たち』(南雲堂)1962
  • 『ロンドン ほんの百年前の物語』(中公新書)1978
  • 『ディケンズ 19世紀信号手』(冬樹社)1979
  • 『英国鉄道物語』(晶文社)1979、新版 2006
  • 『欧米汽車物語』(角川選書)1982、オンデマンド版 2009
  • 『ディケンズとともに』(晶文社)1983
  • 『島国の世紀 ヴィクトリア朝英国と日本』(文藝春秋)1987
  • 『絵入り鉄道世界旅行』(鈴木伸一絵、晶文社)1990
  • 『もうひとつのイギリス史 野と町の物語』(中公新書)1991
  • 『鉄道ばんざい』(青蛙房) 1992、改題『余はいかにして鉄道愛好者となりしか』(ウェッジ文庫)2007
  • 『ロンドン 世界の都市の物語』(文藝春秋)1992、文春文庫)1999
  • 『英国流立身出世と教育』(岩波新書)1992
  • 『チャールズ・ディケンズ』(沖積舎)1993
  • 『鏡よ、鏡よ イギリス文学人物事典』(筑摩書房)1995
  • 『鉄道ゲージ戦争』(岩波書店)1995
  • 『じょっぱり先生の鉄道旅行』(文藝春秋)1996
  • 『イギリス鈍行列車の旅』(NTT出版)1996
  • 『ゴシック小説をよむ』(岩波書店、岩波セミナーブックス)1999
  • 『「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか 日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎』(早川書房)2001、新潮文庫 2008
  • 『イギリス文学探訪』(日本放送出版協会、シリーズ カルチャーアワー)2003、NHKライブラリー 2006
  • 『スペイン・ポルトガル文学探訪』(日本放送出版協会、シリーズ カルチャーアワー)2003
  • 『英国らしさを知る事典』(東京堂出版)2003
  • 『鉄道愛 日本篇』(晶文社)2005

共編著[編集]

共著者:高階秀爾池内紀工藤幸雄荒松雄増田義郎中山公男山口昌男護雅夫加藤祐三清水徹池田裕

翻訳[編集]

ディケンズ[編集]

  • 荒涼館』(ディケンズ、青木雄造共訳、筑摩書房〈世界文学大系 29〉)1969、〈世界文学全集 22-23〉1970、〈筑摩世界文学大系 34〉1974。改訂 ちくま文庫全4巻 1989
  • オリヴァー・トゥイスト』(ディケンズ、講談社〈世界文学全集 13〉)1970、のち 講談社文庫 1971、改訂 ちくま文庫 全2巻 1990
  • 『バーナビー・ラッジ』(ディケンズ、集英社世界文学全集 15〉)1975
  • 『エドウィン・ドルードの謎 他6篇』(ディケンズ、講談社〈豪華版世界文学全集 8〉)1976、〈世界文学全集 29〉1977、改訂 創元推理文庫 1988、白水Uブックス 2014
  • リトル・ドリット』(ディケンズ、集英社〈世界文学全集 33-34〉)1980、改訂 ちくま文庫 全4巻 1991
  • クリスマス・キャロル』(ディケンズ、新書館) 1985。「クリスマス・ブックス」ちくま文庫 1991に収録
  • 『ディケンズ短篇集』(ディケンズ、石塚裕子共訳、岩波文庫)1986
  • 『ディケンズ朗読短篇選集』(ディケンズ、編訳、北星堂書店)2006
  • 『ディケンズ朗読短篇選集2』(ディケンズ、西條隆雄共編訳、北星堂書店)2012

コナン・ドイル[編集]

  • 『ササッサ谷の怪 コナン・ドイル未紹介作品集1』(監訳、中央公論社C★NOVELS)1982
  • 『真夜中の客 コナン・ドイル未紹介作品集2』(監訳、中央公論社〈C★NOVELS〉)1983
  • 『最後の手段 コナン・ドイル未紹介作品集3』(監訳、中央公論社〈C★NOVELS〉)1983
  • シャーロック・ホームズ全集」全21巻(コナン・ドイル、W・S・ベアリング=グールド解説・注、監訳・解説、東京図書)1982-1983、
    • 改訂 ちくま文庫 全10巻+別巻『シャーロック・ホームズ事典』[5] 1997-1998

E・M・フォースター[編集]

ジョージ・ギッシング[編集]

  • 『埋火 / イオニア海のほとり』(ジョージ・ギッシング土井治共訳、秀文インターナショナル〈ギッシング選集 4〉) 1988
    • 『南イタリア周遊記』(ギッシング、岩波文庫)1994 - 「イオニア海のほとり」の改訳
  • 『チャールズ・ディケンズ論』(ジョージ・ギッシング、金山亮太共訳、秀文インターナショナル〈ギッシング選集 5〉) 1988
  • 『ギッシング短篇集』(ギッシング、岩波文庫)1997

テレビ出演[編集]

論文[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 会員名簿 小池滋”. 日本推理作家協会. 2023年4月20日閲覧。
  2. ^ 英文学者の小池滋氏が死去、91歳…ディケンズなど研究・鉄道愛好家としても知られる”. 読売新聞 (2023年4月20日). 2023年4月20日閲覧。
  3. ^ 公式ウェブサイト
  4. ^ 『現代日本人名録』(2002年)
  5. ^ 北原尚彦編著。全集10巻の五十音順索引。60編の物語に登場する人名・地名、その他固有名詞を解説