山場CM

山場CM(やまばシーエム)とは、テレビコマーシャルのうち、番組の山場に挿入されるもの。

概要[編集]

CM挿入時に「このあと、すぐ!」「続きはCMのあとで!」「答えはこのあと!」などの煽りフレーズが字幕付きで入ることが多いが、バラエティ番組では事前の予告もなく、いきなりCMに移るものや、肝心の山場シーンが出る直前にスタジオひな壇芸能人のズームインカットが入ってCM挿入という下品なビデオ編集があるうえ、CMを放送する時間も予告してこない。

CM後に「CM前のシーン」がまた放送され、番組が水増しされることも多い(CMまたぎ)。1990年代から各キー局で多用されるようになった。

山場CMに出る企業や商品への好感度は低く、記憶されにくいという研究結果が出ている[1]。欧米ではCMに関する規制が厳しく[2]、日本ほど大量の山場CMは存在しない。榊博文らの調査では、日本40%に対してアメリカ14%、イギリス6%、フランスは0%であった[3]。一方、韓国では日本の事例を参考に山場CMを増やす動きもあるが、消費者の反発が強くなっている。「山場CM」という用語は榊博文の造語であり、もともとは「番組内CM提示タイミングが視聴者の態度に及ぼす影響(上)(下)」というタイトルで、日経広告研究所報、2003年,211号及び212号に掲載された榊らの論文の中で使用されたものである。この2つの論文は、中国でも翻訳され、中国電媒報告(China Media  Report)という学術誌に「節目内電視廣告播出時機對視聴者態度度的影響」というタイトルで掲載された。これを契機に中国でも「山場CM」が関心を引くようになり、北京大学、天津理エ大学、中国伝媒大学が榊博文を中国に招待し、「山場CM」と「説得効果」との関連などについて講演がなされた。

スポンサーである大企業や日本アドバタイザーズ協会(元日本広告主協会)も山場CMに強い関心を寄せている。

山場CMの効果[編集]

通常、CMは商品の周知や知名度、ブランド向上、購買意欲を煽るために行われている。中には通常のCMですら「目障りだから購入しない」「広告料が上乗せされていて割高なので買いたくない」という消費者もいるが、全体としては売上が増え、知名度もブランドも上がるということから続けられている。これには「CMを見たため購入した消費者 > CMが目障りなため購入をやめた消費者」であることが前提となっている。

しかしながら、山場CMに関しては86%が「不快である」と感じており、CM明けのシーンの繰り返しには、74%が「イライラする」と回答した。山場CMを含む番組については、84%が「見たくない」。山場CMの商品について42%が「好感が持てない」、34%が「絶対買いたくない」と回答。それぞれ60%前後あった「どちらともいえない」を除けば大半がマイナスの評価だった。

話の流れが落ち着いたところで出る「一段落CM」と比較すると、山場CMが「商品を買いたくない」で3.8倍、「商品を覚えていない」も2倍と本来の効果をうち消していた。

関連項目[編集]

  • 五味一男 - 元・日本テレビディレクター。日本のテレビ番組で最初に山場CMの手法を取り入れ、広めるきっかけを作った人物として知られる。

脚注[編集]

  1. ^ 榊博文ほか「第6章 番組内CM提示のタイミングが視聴者の態度に及ぼす影響」『広告の文化論 : その知的関心への誘い』真鍋一史編著、日経広告研究所、2006年、ISBN 4532640709
  2. ^ イギリスに至っては、CMのタイミングが法律で設定されている。
  3. ^ 『正解はCMのあと』は逆効果 視聴者86%『不愉快』asahi.com、2007年11月6日。

参考文献 [編集]

  • (1)榊博文今井美樹岡田美咲出羽かおり「番組内CM提示タイミング が視聴者の態度に及ぼす影響(上)」日経広告研究所報 2003 211号 2-9頁.
  • (2)榊博文・今井美樹・岡田美咲・出羽かおり「番組内CM提示タイミング が視聴者の態度に及ぼす影響(下)」日経広告研究所報 2004 212号 34-43頁.
  • (3)榊博文「テレビCM、山場CM、一段落CMに対する視聴者の態度」日経広告研究所報 2011 255号 19-26頁.