既得権益

既得権益(きとくけんえき、英語: vested interest)とは、ある個人または集団が法的または歴史的経緯により取得した権益(権利とそれに付随する利益)のこと。経済学法学の分野で用いられることがある用語であり、既得権、既得の権利などと表現することもある。

経済学分野においては、ソースティン・ヴェヴレンが同概念を提唱したのが嚆矢であり、1899年に発表した有閑階級の理論の中では、無形資産の一種と捉えられ、現代の会計学でいうのれんなども既得権益の例に挙げられるとともに、生産活動に直接従事しないにもかかわらず利益を得ることができるものを既得権益者とした[1][2]

また、日本においては、「vested rights」や「acquired rights」も既得権・既得権益と訳することがあり、この場合においては、法令や契約あるいは慣習に基づいて取得・確立された権利のことを指す[3][4]。法学分野においては、慣行水利権など慣習的に認められた権利と新たに制定された法令との関係の整理、法の不遡及の検討など、慣習の効力や財産権の在り方を論じる際に用いられている[3][5][6]。このほか、特定の国で合法的に取得・確立した権利と他国の法令・国際法との関係を論じる際にも既得権・既得権益の用語が用いられることがある[4]

脚注

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  1. ^ 薄井充裕 (2014). “書評:VEBLEN, Thorstein. (1919) The Vested Interests, Transaction Publishers.”. 社会科学研究 (東京大学社会科学研究所) 66 (1): 169-171. https://doi.org/10.34607/jssiss.66.1_169. 
  2. ^ 高哲男『ヴェブレン研究 : 進化論的経済学の世界』ミネルヴァ書房、1991年、59-65頁。doi:10.11501/13060357 
  3. ^ a b 我妻栄 編『新法律学辞典 新版』有斐閣、1967年、194頁。doi:10.11501/3043254 
  4. ^ a b 河野真理子 (1998). “国際仲裁に見られる国家契約の性質”. 国際関係論研究 (東京大学国際関係論研究会) 5: 19-48. https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/51819. 
  5. ^ 齋藤健一郎 (2016). “法律の不遡及原則の歴史的展開”. 商学討究 (小樽商科大学) 67 (1): 139-193. https://barrel.repo.nii.ac.jp/records/4926. 
  6. ^ 金沢良雄、三本木健治『水文学講座15 水法論』共立出版、1979年、81-88頁。doi:10.11501/9670373 

関連項目

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