暖かさの指数

暖かさの指数(あたたかさのしすう、あるいは温量指数、英語: Warmth Index; WI)および寒さの指数(さむさのしすう、英語: Coldness index; CI)とは、吉良竜夫により提唱された有効積算温度の指標である[1]

概要[編集]

一般的に、植物の生育には月平均気温で摂氏5度以上が必要とされる。このことから、温帯における植生の分布には、それより高温になる期間とその温度の高さがどの程度になるかが大きく影響すると考えられるので、それを定量化することを試みたものである。

暖かさの指数は、月平均気温が5 ℃以上の月について、その月の平均気温から5 ℃を除した値どうしを足し合わせて求める[2]。すなわち、

(ただし: 月の月平均気温[℃])[1]

寒さの指数は、月平均気温が5 ℃以下の月について、その月の平均気温から5 ℃を除した値どうしを足し合わせて求める[2]

日本における暖かさの指数および寒さの指数[編集]

たとえば、北海道旭川の気候データを元に暖かさの指数、寒さの指数を計算すると、この表のようになる。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
平均気温 -7.8 -7.2 -2.4 5.2 11.7 16.5 20.5 21.1 15.6 8.8 2.0 -4.1
暖かさの指数 0.2 6.7 11.5 15.5 16.1 10.6 3.8 64.4
寒さの指数 12.8 12.2 7.4 3.0 9.1 44.5

その他、日本の主な地点における暖かさの指数と寒さの指数は以下のとおりとなる。

那覇
暖かさの指数212.4・寒さの指数0
東京
暖かさの指数131.3・寒さの指数0
長野
暖かさの指数95.6・寒さの指数15.7
青森
暖かさの指数80.0・寒さの指数19.2
根室
暖かさの指数46.1・寒さの指数32.7
富士山頂
暖かさの指数1.0・寒さの指数138.0

植生との関係[編集]

暖かさの指数と植生には関係性がある[1]。一方、寒さの指数は、温暖地の植生には関係があるが、寒冷地の植生とは大きな関連が認められない。

熱帯林
暖かさの指数240以上[3]
亜熱帯林
暖かさの指数180 - 240[3]
照葉樹林丘陵帯
暖かさの指数180 - 85[3]かつ寒さの指数10(または15)以下
中間温帯林
暖かさの指数180~85かつ寒さの指数10(または15)以上
落葉広葉樹林山地帯
暖かさの指数85 - 45[3]
針広混交林(道南を除く北海道)
暖かさの指数85 - 45[4]
針葉樹林亜高山帯
暖かさの指数45 - 15[3]
雪氷ツンドラ高山帯
暖かさの指数15以下[3]

なお、本来は降水量の大小も植生と大きな関係があるはずであるが、日本ではどこでも充分な降水量があるため、条件の差としては意味をもたない。

有効性[編集]

暖かさの指数および寒さの指数は以下のような場合において有効である。

  • 暖かさの指数
  • 寒さの指数
    • 暖地に分布する植物の分布北限や寒冷地に分布する植物の分布南限の解析

脚注[編集]

  1. ^ a b c 小池ほか 2017, p. 140.
  2. ^ a b 小池ほか 2017, p. 332.
  3. ^ a b c d e f 小泉 2008, p. 119.
  4. ^ 高岡 2014, p. 188.

関連項目[編集]

  • 佐藤信栄(佐藤元庵) - 江戸時代に『気候審験録』を著し、日本の寒暖の指数を24段階に分類した。

参考文献[編集]

  • 小泉武栄 著「生物の地理学」、高橋日出男・小泉武栄 編『自然地理学概論』朝倉書店〈地理学基礎シリーズ〉、2008年、117-129頁。ISBN 978-4-254-16817-4 
  • 高岡貞夫、松山洋・川瀬久美子・辻村真貴・三浦英樹「植生地理学」『自然地理学』ミネルヴァ書房、2014年、183-203頁。ISBN 978-4-623-05866-2 
  • 小池一之・山下脩二・岩田修二漆原和子小泉武栄・田瀬則雄・松倉公憲・松本淳・山川修治 編『自然地理学事典』朝倉書店、2017年。ISBN 978-4-254-16353-7