往来を妨害する罪

往来を妨害する罪
法律・条文 刑法第124条-第129条
保護法益 交通の安全
主体 人、第129条第2項に関しては業務に従事する者(不真正身分犯)
客体 陸路・水路・橋・鉄道・標識・灯台・浮標・汽車・電車・艦船
実行行為 損壊・閉塞・転覆・破壊
主観 故意犯、第129条に関しては過失犯
結果 具体的危険犯
実行の着手 各類型による
既遂時期 各類型による
法定刑 各類型による
未遂・予備 未遂罪(第128条)
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往来を妨害する罪(おうらいをぼうがいするつみ)とは、公共交通に対する妨害行為によって成立する犯罪刑法第124条から第129条まで(第二編 罪 第十一章 「往来を妨害する罪」)に規定されている。

犯罪類型[編集]

往来妨害罪[編集]

陸路、水路または破壊して、または閉塞して往来の妨害を生じさせる行為を内容とする(第124条)。法定刑は2年以下の懲役または20万円以下の罰金。かかる行為によって人を死傷に至らしめた場合は傷害罪と比較して重い刑[注釈 1]に処される。すなわち、人を傷害した場合は傷害罪と同様に15年以下の懲役または50万円以下の罰金に、人を死亡させた場合は傷害致死罪と同様に3年以上の有期懲役に処せられる。

「陸路」の意味は二通り存在し、鉄道線路を含む(=地上交通の意味)か、含まない(=道路交通の意味)かは明記されていない。一般には後者の意味合いで使われる。

往来危険罪[編集]

鉄道もしくはその標識を破壊し、またはその他の方法により、汽車または電車の往来の危険を生じさせる行為並びに船舶の運航に関わる設備を破壊し、またはその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせる行為を内容とする(第125条)。法定刑は2年以上の有期懲役。「その他の方法」には、無人列車を暴走させる行為(三鷹事件、最高裁判決1955年6月22日昭和26(あ)1688 )や、いわゆる線路への置石なども含まれる。

汽車転覆等罪[編集]

人の乗る汽車または電車転覆させ、または破壊する行為、人の乗る船舶を転覆させ、沈没させ、破壊する行為を内容とする(第126条)。法定刑は無期懲役又は3年以上の有期懲役。これらの行為により人を死に至らしめた場合は死刑または無期懲役に処される。

往来危険による汽車転覆等罪[編集]

往来危険罪を犯したことにより、人の乗る汽車または電車を転覆させ、または破壊し、または人の乗る船舶を転覆させ、沈没させ、破壊する結果を生じさせた場合。汽車転覆等罪と同様に、法定刑は無期懲役又は3年以上の有期懲役。これらの行為により人を死に至らしめた場合は死刑または無期懲役(第127条)。

過失往来危険罪[編集]

過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、または汽車若しくは電車を転覆、もしくは破壊させ、もしくは艦船を転覆、沈没、若しくは破壊させる行為を内容とする(第129条)。法定刑は30万円以下の罰金である(同条第1項)。

業務に従事する者が上記の罪を犯した場合、3年以下の禁錮または50万円以下の罰金に処される(同条第2項)。ここでいう「業務に従事する者」とは、直接または間接に汽車・電車または艦船の交通往来の業務に従事する者のことである(大判昭和2年11月28日刑集6巻472頁)。また、当該業務は兼務でもよく、たとえば、電車の運転手兼車掌である者が上司の許可を得ずに列車を運転した場合も、業務上の行為とされる(最判昭和26年6月7日刑集5巻7号1236頁)。

なお、人の死傷を生じた場合には過失致死傷罪重過失致死傷罪または業務上過失致死傷罪にも問われる。本罪は、他に人がいない鉄道・船舶の回送車両・船舶や、貨物車両・船舶などにおいても適用され得る。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 上限・下限とも重い方を法定刑とする。

関連項目[編集]