県民経済計算

2020年度(令和2年度)の県民経済計算における1人当たり県民所得(PI)階級図。太平洋ベルト地域で高い傾向にある。東京は突出して高く、この年度では次いで愛知福井栃木の順となっている。一方、最も低いのは沖縄。なお、各県の経済動向により、順位は毎年入れ替わる。[1]

県民経済計算(けんみんけいざいけいさん)は、日本国民経済計算に準拠して計算された都道府県レベルの経済活動状況の推計である。

国民経済計算には、国内総生産国民所得などの指標があるが、県民経済計算ではこれに相当する、県内総生産・県民所得などの指標が推計されている。2023年(令和4年)12月現在、日本の県民経済計算は、国民経済計算(国民所得統計)に準拠して作成されており、国連2008年(平成20年)に採択した方式である2008SNAに準拠しており、2015年(平成27年)基準の数値が発表されている。内閣府省庁再編以前は経済企画庁)の経済社会総合研究所国民経済計算部が各都道府県の県民経済計算をまとめて、県民経済計算年報として発表している。

同種のものとして、アメリカ合衆国では商務省経済分析局が州内総生産 (Gross State Product) を発表している。

解説[編集]

国内総生産との関係[編集]

国民経済計算では海外との輸出入を考慮して国内における生産額を推計しているように、県民経済計算では県外との取引は財貨・サービスの移出入として計上され、二重計算が排除されている。このため概念上は、各都道府県の県内総生産の合計は国内総生産となる。しかし、海外との貿易が税関における通関手続きなどによってかなり正確に把握できるのに対して、都道府県間の取引は把握が困難であることなど推計誤差のため、県内総生産の合計と国民経済計算で推計されている国内総生産には乖離がある。

2019年度(令和元年度)の名目県内総生産の合計は558.8兆円だが、国民経済計算の名目国内総生産額は、537.6兆円[2]と県内総生産の全国計とは一致しない。なお、2019年コロナウイルス感染症流行による経済悪化により約3.6%減少しており、都道府県別では三重県と山梨県以外は前年度比でマイナスとなっており、特に群馬県愛媛県は共に約6.5%減少し、減少の度合いでは都道県別で最も大きかった。

一人当たり県民所得[編集]

各県の県民所得を人口で割って得られる一人当たり県民所得は、各都道府県の経済力を示す指標としてしばしば用いられる。2019年度(令和元年度)で見ると一人当たり県民所得が最も多い東京都の5,214千円と、最も少ない沖縄県の2,167千円では、約2.4倍の差がある。

一人当たり県民所得の分散度合いを測る指標としては、一人当たり県民所得の変動係数が用いられることが多い。これによって見ると、1990年度(平成2年度)以降2001年度(平成13年度)までは変動係数は減少傾向にあり、一人当たり県民所得のばらつきは縮小してきたが、2002年度(平成14年度)以降2006年度(平成18年度)までは5年連続して増加した。その後、2007年度(平成19年度)以降2009年度(平成21年度)までは3年連続して減少し、2010年度(平成22年度)以降2015年度(平成27年度)までは変動係数18前後で推移していた。そして、2016年度(平成28年度)以降は減少傾向にあり、2020年度(令和2年度)は15.3であった。

県民所得には企業所得が含まれているので、各県の消費者労働者の所得水準を表すものではない。

計算の性質上、乳児幼児児童高齢者の人口比率が大きい都道府県では、県民所得は小さくなる傾向にある。

統計の沿革[3][編集]

  • 1947年(昭和22年)以前:鹿児島県が、県政はすべからく統計に基づいた科学的な施策を展開しなければならないという認識のもと、鹿児島県民所得を試算。各都道府県民経済計算の先駆けとなる。
  • 1956年(昭和31年):経済安定本部(現内閣府)により、初の本格的な標準方式(推計方法の基準)である「県民所得の標準方式(1956年(昭和31年)版)」が制定。
  • 1970年(昭和45年):国民所得統計(現:国民経済計算)の推計方式変更に伴い、標準方式を「県民所得の新標準方式(1970年(昭和45年)版)」に移行。
  • 1983年(昭和58年):国民所得統計の68SNA(国際的標準体系)移行に伴い、標準方式を「県民経済計算標準方式(1983年(昭和58年)版)」に移行。
  • 1988年(昭和63年):国民経済計算の基準年及び推計方式変更に伴い、標準方式を1988年(昭和63年)版に移行。
  • 2002年(平成14年):国民経済計算への93SNA導入に伴い、標準方式を2002年(平成14年)版に移行。
  • 2013年(平成25年):国民経済計算の基準改定に伴い、標準方式を2005年(平成17年)基準版に移行。
  • 2018年(平成30年):国民経済計算への2008SNA導入に伴い、標準方式を2011年(平成23年)基準版に移行。
  • 2022年(令和4年):国民経済計算の基準改定に伴い、標準方式を2015年(平成27年)基準版に移行。

2020年度(令和2年度) 県内総生産・1人当たり県民所得[編集]

  • GPP:県内総生産(名目)(百万円)
  • PI:県民所得(千円)
  • 人口:2020年(令和2年度)10月1日(千人)

都道府県別[編集]

都道府県
GPP
(百万円)
構成比
(%)
1人当たりPI
(千円)
人口
(人)
構成比
(%)
全県計 558,778,326 100 3,123 126,146,099 100
北海道 19,725,624 3.5 2,682 5,224,614 4.1
青森県 4,456,607 0.8 2,633 1,237,984 1.0
岩手県 4,747,426 0.8 2,666 1,210,534 1.0
宮城県 9,485,225 1.7 2,803 2,301,996 1.8
秋田県 3,530,452 0.6 2,583 959,502 0.8
山形県 4,284,158 0.8 2,843 1,068,027 0.8
福島県 7,828,577 1.4 2,833 1,833,152 1.5
茨城県 13,771,281 2.5 3,098 2,867,009 2.3
栃木県 8,946,482 1.6 3,132 1,933,146 1.5
群馬県 8,653,495 1.5 2,937 1,939,110 1.5
埼玉県 22,922,645 4.1 2,890 7,344,765 5.8
千葉県 20,775,634 3.7 2,988 6,284,480 5.0
東京都 109,601,589 19.6 5,214 14,047,594 11.1
神奈川県 33,905,464 6.1 2,961 9,237,337 7.3
新潟県 8,857,506 1.6 2,784 2,201,272 1.7
富山県 4,729,874 0.8 3,120 1,034,814 0.8
石川県 4,527,743 0.8 2,770 1,132,526 0.9
福井県 3,571,069 0.6 3,182 766,863 0.6
山梨県 3,552,685 0.6 2,982 809,974 0.6
長野県 8,214,074 1.5 2,788 2,048,011 1.6
岐阜県 7,662,998 1.4 2,875 1,978,742 1.6
静岡県 17,105,232 3.1 3,110 3,633,202 2.9
愛知県 39,659,291 7.1 3,428 7,542,415 6.0
三重県 8,273,134 1.5 2,948 1,770,254 1.4
滋賀県 6,739,736 1.2 3,097 1,413,610 1.1
京都府 10,167,991 1.8 2,745 2,578,087 2.0
大阪府 39,720,316 7.1 2,830 8,837,685 7.0
兵庫県 21,735,871 3.9 2,887 5,465,002 4.3
奈良県 3,685,868 0.7 2,501 1,324,473 1.0
和歌山県 3,625,091 0.6 2,751 922,584 0.7
鳥取県 1,819,938 0.3 2,313 553,407 0.4
島根県 2,575,687 0.5 2,768 671,126 0.5
岡山県 7,606,440 1.4 2,665 1,888,432 1.5
広島県 11,555,366 2.1 2,969 2,799,702 2.2
山口県 6,148,146 1.1 2,960 1,342,059 1.1
徳島県 3,185,168 0.6 3,013 719,559 0.6
香川県 3,734,443 0.7 2,766 950,244 0.8
愛媛県 4,827,460 0.9 2,471 1,334,841 1.1
高知県 2,354,276 0.4 2,491 691,527 0.5
福岡県 18,886,929 3.4 2,630 5,135,214 4.1
佐賀県 3,045,909 0.5 2,575 811,442 0.6
長崎県 4,538,708 0.8 2,483 1,312,317 1.0
熊本県 6,105,086 1.1 2,498 1,738,301 1.4
大分県 4,458,030 0.8 2,604 1,123,852 0.9
宮崎県 3,602,456 0.6 2,289 1,069,576 0.8
鹿児島県 5,610,271 1.0 2,408 1,588,256 1.3
沖縄県 4,260,875 0.8 2,167 1,467,480 1.2

地方別[編集]

地方 GPP 人口
概数 比率 概数 比率
全国計 5587,783億円 100.00% 1億2,614.6万人 100.00%
北海道 197,256億円 3.53% 522.5万人 4.14%
東北6県 343,324億円 6.14% 861.1万人 6.83%
関東1都6県 2185,766億円 39.12% 4,365.3万人 34.61%
中部9県 978,805億円 17.52% 2,114.8万人 16.76%
近畿2府5県 939,480億円 16.81% 2,231.2万人 17.69%
中国四国9県 438,069億円 7.84% 1,095.1万人 8.68%
九州沖縄8県 505,083億円 9.04% 1,424.6万人 11.29%

広域地方計画区域別[編集]

国土形成計画の広域地方計画区域による分類

地方 GPP 人口 備考
全国計 5587,783 12614.6
北海道 197,256 522.5
東北圏7県 431,900 51 1,746.9 東北6県+新潟県
首都圏1都7県 2221,293 4,446.3 関東1都6県+山梨県
中部圏5県 809,147 1,697.3 東海4県+長野県
北陸圏3県 128,287 293.4
近畿圏2府4県 856,749 2,054.1
中国圏5県 297,056 725.5
四国圏4県 141,013 369.6
九州圏7県 462,474 1,277.9
沖縄県 42,609 146.7

その他の分類[編集]

地方 GPP 人口
北東北3県 127,345 340.8
南東北3県 215,980 520.3
北関東3県 313,713 673.9
南関東1都3県 1872,053 3,691.4
甲信越3県 206,243 505.9
東海3県 555,954 1,129.1
東海4県 727,007 1,492.5
北陸4県 216,862 513.5
山陽3県 253,100 603.0
山陰2県 43,956 122.5
北九州5県 37347 1,012.1
南九州2県 92,127 265.8
北九州山口6県 431,828 1,146.3,185
九州山口8県 523,955 1,412.1

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 県民経済計算 2020.
  2. ^ 内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部 (2022年12月23日). “2021年度国民経済計算(2015年基準・2008SNA) フロー編” (Excel). 2023年12月17日閲覧。
  3. ^ 内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部. “県民経済計算標準方式(2015年(平成27年)基準版)”. 2022年9月7日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]