秋分

秋分(しゅうぶん)は、太陽秋分点(天の赤道を北から南へ横切る点)を通過すること[1][2]二十四節気の第16にあたる。9月22日または9月23日になることが多い。

二至二分(冬至夏至春分、秋分)を基盤とする暦法は春秋時代には存在していたが、「秋分」の名は後に「二十四節気」における節気名として名付けられた[3]

概要[編集]

秋分の概念[編集]

地球は約1年の周期で太陽の周りを公転しており、この太陽の年周運動を天球上で表したもの(太陽の通り道)が黄道である[1][2]。黄道と天の赤道は天球上の2箇所で交わっており、秋分点は太陽が天の赤道を北から南へ横切る点で、ここを通過するのが秋分(その属する日が秋分日)である[1][2]

  • 秋分:太陽秋分点を通過した瞬間の時刻をその国の標準時で表したもの。秋分時ということもある[4]。例えば2008年の秋分は、日本時間では9月23日0時45分である。
  • 秋分日:秋分が属する日。時差のために国・地域によって1日の違いが生ずる。 例えば2008年の秋分日は、日本では9月23日であり、中国では9月22日である。

昼夜の長さ[編集]

秋分の日の太陽光の当たり方
太陽の動き

暦便覧』では秋分について「陰陽の中分なれば也」(ちなみに春分については「日天の中を行て昼夜とうぶんの時なり」)と記され、昼夜の時間が同じになるという意味であるが、これは江戸時代に庶民が用いた時法が季節による昼夜の時間の長短に応じて1単位時間の長さが変動する不定時法だったことによる[5][6]

現代では秋分は太陽の黄経が180度となる瞬間と定義され、定時法が採用されているもとでは、昼夜がちょうど12時間ずつとはならない[6]

実際には昼の方が夜よりも長くなるが、これは次の理由による。

日の出と日の入の定義
太陽の上端が地平線と一致した時刻を日の出及び日の入と定義しているため[7]
大気差
大気による屈折で太陽の位置が実際より上に見えるため、太陽が上に見える角度の分、日出が早く、日没が遅くなる。屈折は太陽が地平線に近いほど大きくなる。国立天文台では、太陽が地平線付近にある時の、その屈折角度を35分8秒角と見積もっている[7]

これらを合わせると日本において、日出は太陽の中心が地平線から昇るより3分25秒早く、日没は太陽の中心が地平線より沈むより3分25秒遅くなる。したがって、秋分の日の昼の長さは約12時間7分、夜の長さは約11時間53分である。そして、実際に昼夜の長さの差が最も小さくなる日は秋分の4日程度後になる[7]

暦法[編集]

中国では春秋時代に二至二分(冬至と夏至の二至及び春分と秋分の二分)を基盤とする暦法が用いられていた[3]

その後、二十八宿を天空上に配置するモデルが出現した[3]。二十八宿の角宿は春秋時代前期から戦国時代直前にかけて、春分日の日没時に真東に位置していたことが判明している[3]

ただ、「秋分」という語はあくまでも後世の「二十四節気」における節気名である[3]

二十四節気[編集]

二十四節気は一太陽年を24等分(約15日間)にして季節の目安としたもので、秋分は白露寒露の間にあたる[8]。当初は1年の長さをそのまま24等分する平気法(恒気法、常気法)が用いられたが、天保暦で太陽の視黄経が15度の倍数になる瞬間で定義する定気法(実気法)が導入された[9]。秋分は太陽の視黄経が180度のときにあたる[8]

七十二候[編集]

秋分の期間の七十二候は以下の通り。

初候
雷乃収声(らい すなわち こえを おさむ):雷が鳴り響かなくなる(日本・中国)
次候
蟄虫坏戸(ちっちゅう こを はいす):虫が土中に掘った穴をふさぐ(日本・中国)
末候
水始涸(みず はじめて かる):田畑の水を干し始める(日本・中国)

秋分日の日付[編集]

定気法による秋分の瞬間(世界時、UT)と、日本中国での秋分日の日付は表のとおり。日本における時刻はこの表の9時間後[10][11]、中国では8時間後となり、世界時15時台の2国の日付は異なる。

日本と中国との時差が1時間あるので、秋分の時刻が世界時の15時台である場合(日本時間では0時台)には、日本と中国での秋分日の日付がずれる。1975年、1979年、2008年、2041年がこれに当たる。

日時 (UT) 日本 中国
1966年 9月23日11:43 9月23日 9月23日
1967年 9月23日17:38 9月24日 9月24日
1968年 9月22日23:26 9月23日 9月23日
1969年 9月23日05:07 9月23日 9月23日
1970年 9月23日10:59 9月23日 9月23日
1971年 9月23日16:45 9月24日 9月24日
1972年 9月22日22:33 9月23日 9月23日
1973年 9月23日04:21 9月23日 9月23日
1974年 9月23日09:58 9月23日 9月23日
1975年 9月23日15:55 9月24日 9月23日
1976年 9月22日21:48 9月23日 9月23日
1977年 9月23日03:29 9月23日 9月23日
1978年 9月23日09:25 9月23日 9月23日
1979年 9月23日15:16 9月24日 9月23日
1980年 9月22日21:09 9月23日 9月23日
1981年 9月23日03:05 9月23日 9月23日
1982年 9月23日08:46 9月23日 9月23日
1983年 9月23日14:42 9月23日 9月23日
1984年 9月22日20:33 9月23日 9月23日
1985年 9月23日02:07 9月23日 9月23日
1986年 9月23日07:59 9月23日 9月23日
1987年 9月23日13:45 9月23日 9月23日
1988年 9月22日19:29 9月23日 9月23日
1989年 9月23日01:20 9月23日 9月23日
1990年 9月23日06:56 9月23日 9月23日
1991年 9月23日12:48 9月23日 9月23日
1992年 9月22日18:43 9月23日 9月23日
1993年 9月23日00:22 9月23日 9月23日
1994年 9月23日06:19 9月23日 9月23日
1995年 9月23日12:13 9月23日 9月23日
1996年 9月22日18:00 9月23日 9月23日
1997年 9月22日23:56 9月23日 9月23日
1998年 9月23日05:37 9月23日 9月23日
1999年 9月23日11:31 9月23日 9月23日
2000年 9月22日17:28 9月23日 9月23日
2001年 9月22日23:04 9月23日 9月23日
2002年 9月23日04:55 9月23日 9月23日
2003年 9月23日10:47 9月23日 9月23日
2004年 9月22日16:30 9月23日 9月23日
2005年 9月22日22:23 9月23日 9月23日
2006年 9月23日04:03 9月23日 9月23日
2007年 9月23日09:51 9月23日 9月23日
2008年 9月22日15:45 9月23日 9月22日
2009年 9月22日21:19 9月23日 9月23日
2010年 9月23日03:09 9月23日 9月23日
2011年 9月23日09:05 9月23日 9月23日
2012年 9月22日14:49 9月22日 9月22日
2013年 9月22日20:44 9月23日 9月23日
2014年 9月23日02:29 9月23日 9月23日
2015年 9月23日08:21 9月23日 9月23日
2016年 9月22日14:21 9月22日 9月22日
2017年 9月22日20:02 9月23日 9月23日
2018年 9月23日01:54 9月23日 9月23日
2019年 9月23日07:50 9月23日 9月23日
2020年 9月22日13:30 9月22日 9月22日
2021年 9月22日19:21 9月23日 9月23日
2022年 9月23日01:03 9月23日 9月23日
2023年 9月23日06:50 9月23日 9月23日
2024年 9月22日12:43 9月22日 9月22日
2025年 9月22日18:19 9月23日 9月23日
2026年 9月23日00:05 9月23日 9月23日
2027年 9月23日06:01 9月23日 9月23日
2028年 9月22日11:44 9月22日 9月22日
2029年 9月22日17:38 9月23日 9月23日
2030年 9月22日23:26 9月23日 9月23日
2031年 9月23日05:14 9月23日 9月23日
2032年 9月22日11:10 9月22日 9月22日
2033年 9月22日16:51 9月23日 9月23日
2034年 9月22日22:38 9月23日 9月23日
2035年 9月23日04:38 9月23日 9月23日
2036年 9月22日10:22 9月22日 9月22日
2037年 9月22日16:12 9月23日 9月23日
2038年 9月22日22:01 9月23日 9月23日
2039年 9月23日03:48 9月23日 9月23日
2040年 9月22日09:43 9月22日 9月22日
2041年 9月22日15:25 9月23日 9月22日
2042年 9月22日21:10 9月23日 9月23日
2043年 9月23日03:05 9月23日 9月23日
2044年 9月22日08:46 9月22日 9月22日
2045年 9月22日14:31 9月22日 9月22日
2046年 9月22日20:20 9月23日 9月23日
2047年 9月23日02:06 9月23日 9月23日
2048年 9月22日07:59 9月22日 9月22日
2049年 9月22日13:41 9月22日 9月22日
2050年 9月22日19:27 9月23日 9月23日
2051年 9月23日01:26 9月23日 9月23日
2052年 9月22日07:14 9月22日 9月22日
2053年 9月22日13:05 9月22日 9月22日
2054年 9月22日18:58 9月23日 9月23日
2055年 9月23日00:47 9月23日 9月23日
2056年 9月22日06:38 9月22日 9月22日
2057年 9月22日12:22 9月22日 9月22日
2058年 9月22日18:07 9月23日 9月23日
2059年 9月23日00:02 9月23日 9月23日
2060年 9月22日05:47 9月22日 9月22日

閏年の循環との関係[編集]

グレゴリオ暦による17世紀から24世紀までの日本の秋分は表のとおり[12][13][14]2024年の秋分は9月22日[更新]

365日からの超過分が毎年蓄積し、 4年に一度閏年でリセットされる様子がわかる(秋分は閏日の挿入される2月末日より後のため、 4で割り切れる年が先頭)。

1980年から2011年9月23日だが、1979年までは9月24日1896年までは9月22日もあり、2012年からは再び9月22日が現れる。

表 秋分日(日本時間におけるもの)
年を4で割った余り 確定困難な(日を跨ぐ)年
0 1 2 3 真夜中の前後10分
1600年 - 1635年 23日 23日 23日 23日
1636年 - 1667年 22日 23日 23日 23日
1668年 - 1695年 22日 22日 23日 23日
1696年 - 1699年 22日 22日 22日 23日 1698(22-23日),
1700年 - 1727年 23日 23日 23日 24日
1728年 - 1763年 23日 23日 23日 23日 1760(22-23日),
1764年 - 1791年 22日 23日 23日 23日
1792年 - 1799年 22日 22日 23日 23日 1793(22-23日),
1800年 - 1823年 23日 23日 24日 24日 1822(23-24日),
1824年 - 1851年 23日 23日 23日 24日
1852年 - 1887年 23日 23日 23日 23日 1855(23-24日),
1888年 - 1899年 22日 23日 23日 23日 1888(22-23日),
1900年 - 1919年 23日 24日 24日 24日 1917(23-24日),
1920年 - 1947年 23日 23日 24日 24日
1948年 - 1979年 23日 23日 23日 24日
1980年 - 2011年 23日 23日 23日 23日
2012年 - 2043年 22日 23日 23日 23日
2044年 - 2075年 22日 22日 23日 23日 2074(22-23日),
2076年 - 2099年 22日 22日 22日 23日
2100年 - 2103年 23日 23日 23日 24日
2104年 - 2139年 23日 23日 23日 23日
2140年 - 2167年 22日 23日 23日 23日
2168年 - 2199年 22日 22日 23日 23日 2198(22-23日),
2200年 - 2227年 23日 23日 23日 24日
2228年 - 2263年 23日 23日 23日 23日 2260(22-23日),
2264年 - 2291年 22日 23日 23日 23日
2292年 - 2299年 22日 22日 23日 23日
2300年 - 2323年 23日 23日 24日 24日 2322(23-24日),
2324年 - 2351年 23日 23日 23日 24日
2352年 - 2383年 23日 23日 23日 23日
2384年 - 2399年 22日 23日 23日 23日

記念日[編集]

日本では秋分の日という休日国民の祝日)となる。この日が休日となる歴史は1878年明治11年)から続いており、1948年(昭和23年)に休日ニ關スル件(昭和2年勅令第25号)が廃止されるまでは秋季皇霊祭という名称だった。

秋分の日は、国立天文台の算出する定気法による秋分日を基にして、前年の2月第1平日付の官報公告特殊法人等)欄で暦要項として公告される。なお、この暦要項は、閣議決定等はされず、閣議報告事項でもない[15]

前後の節気[編集]

白露秋分寒露

脚注[編集]

  1. ^ a b c 児玉光義. “プラネタリウム技術の系統化調査”. 国立科学博物館産業技術史資料情報センター. 2023年12月19日閲覧。
  2. ^ a b c 江越 航. “春分の日”. 大阪市立科学館. 2023年12月19日閲覧。
  3. ^ a b c d e 小沢賢二「春秋の暦法と戦国の暦法 : 『競建内之』に見られる日食表現とその史的背景」『中国研究集刊』第45号、大阪大学、2007年、195-202頁。 
  4. ^ 宮崎 茂、巌本 巌、宮崎 茂、巌本 巌「7. 2 夜間上部電離圏における o+イオン密度 トラフの季節変化特性」『電波研究所季報』第28巻第146号、国立研究開発法人情報通信研究機構、1982年、471-477頁。 
  5. ^ 染谷康宏. “二十四節気 季節で感じる運命学《春分》”. 一般社団法人数理暦学協会. 2023年12月19日閲覧。
  6. ^ a b 湯浅吉美「前近代日本人の時間意識」『埼玉学園大学紀要 人間学部篇』埼玉学園大学第15号、2015年、195-202頁。 
  7. ^ a b c 国立天文台 よくある質問 「春分の日・秋分の日には、昼と夜の長さは同じになるの?」
  8. ^ a b 伊藤節子. “天象用語解説1 24節気”. 天文月報第72巻第7号. 2023年12月20日閲覧。
  9. ^ 旧暦2033年問題について”. 国立天文台 天文情報センター 暦計算室. 2023年12月20日閲覧。
  10. ^ 国立天文台 暦要項 各年版より世界時換算(1984年 - 2016年)
  11. ^ 2009年版より理論が更新されているが、「分」の精度でほとんど違いはない。
  12. ^ 現代の天体力学による位置推算のため、過去の暦の記述とは必ずしも一致しない(代わりに分単位の精度がある)。 将来の見積もりについては(主に閏秒の不確かさから)日付が前後する恐れがある(10分の誤差を見込んだが、表の末尾では恐らく不足)。
  13. ^ JPL HORIZONS Web-Interface (2015年8月22日 Ver 3.9.8) 取得後 TT→UT 変換
  14. ^ NASA による ΔT の解説計算式
  15. ^ 閣議案件は、首相官邸HP閣議で公表されている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]