空振

空振による被害の例(浅間山・1950年)

空振(くうしん)は、火山噴火や、核実験[1]などに伴って発生する、空気中を伝わる動である。圧力波の1種とされる。

概要[編集]

火山が爆発的な噴火を起こすとき、火口において急激な気圧変化によって、空気の振動が発生し衝撃波となって空気中を伝播する。火口から離れるに従って減衰し音波となるが、瞬間的な低周波音であるため人間の耳で直接聞くことは難しい。空振が通過する際に建物の窓や壁を揺らし、窓ガラスが破損するなどの被害が発生することもある。また、20Hz以上の周波数成分を含み人間の耳に聞こえる振動は爆発音と呼ばれる。

大きな空振は遠く離れた場所で観測されることもあり、1883年のクラカタウの噴火1980年のセント・ヘレンズ山噴火1991年のピナトゥボ山噴火による空振は数千km離れた場所でも記録された[1]。また2022年のフンガ・トンガ噴火のように、津波を引き起こす可能性もある[2]

観測[編集]

観測は、空振計(低周波マイクロフォン)によって行い、天候不良で火口が見通せない状況でも噴火発生と概略規模を知ることができる。なお、火山周辺では、周期2秒から3秒程度のため微気圧計では観測に適さない[1]。また、発破や超音速飛行を行う航空機はノイズ源となる。気象庁による常時観測火山[3]のほか、大学などの火山観測組織[4][5]が独自に空振計を設置し観測を行っている。

日本での広域観測例[編集]

日本国内においては、爆発的な噴火を起こす桜島[6]浅間山[7]などにおいてしばしば観測されており、1986年の伊豆大島三原山噴火の際には、関東地方の広い区域で人間の感じる空振現象が観測された[8]2022年のフンガ・トンガ噴火では、最初と地球を1周した空振による2度の気圧変化が観測された[9]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 空振観測の重要性.
  2. ^ 日本放送協会. “日本への津波 専門家「噴火に伴う空気の振動“空振”原因か」”. NHKニュース. 2022年1月16日閲覧。
  3. ^ 地震・津波と火山の監視 火山の監視 気象庁
  4. ^ 浅間山火口近傍の空振観測 東京大学地震研究所(第114回火山噴火予知連絡会) (PDF)
  5. ^ 横尾亮彦, 鈴木雄治郎, 井口正人「桜島における空振アレイ観測」『京都大学防災研究所年報』第55号、京都大学防災研究所、2011年、163-167頁、ISSN 0386-412XNAID 120004945205 
  6. ^ ラカンナジョルジオ, 市原美恵, 岩國真紀子, 武屋実, 井口正人, リペペマウリチオ「P88 霧島空振観測網でとらえた桜島の空振とその時空間変化 : 大気構造と地形の影響評価(ポスターセッション)」『日本火山学会講演予稿集』第2012巻、日本火山学会、2012年、187頁、doi:10.18940/vsj.2012.0_187ISSN 2433-5320NAID 110009617354 
  7. ^ 藤原善明, 飯島聖, 坂井孝行, 加藤幸司, 中村政道, 内藤宏人, 山里平, 中禮正明, 平松秀行, 上田義浩「S22 全国規模で観測された2004年9月浅間山噴火の空振」『日本火山学会講演予稿集』第2004巻セッションID: S22、日本火山学会、2004年、202頁、doi:10.18940/vsj.2004.0_202ISSN 2433-5320NAID 110002998884 
  8. ^ 風が無いのに窓ガラスや雨戸が振動するのみならず、閉め切った屋内の建具が揺れるといった現象が、大島から200-300km離れた栃木県や茨城県でも観測された(S61伊豆大島噴火.空振1)(S61伊豆大島噴火.空振2)
  9. ^ トンガ火山噴火による衝撃波が地球1周して再来か 今朝も各地で気圧変化”. ウェザーニュース. 2022年1月18日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]