航路

航路(こうろ)は、船舶などが海上または河川を航行するための通路。海図上に引かれる時に決まった線で表せる。港湾内や狭い海峡では浚渫をしたり、航路標識を設置するなどして船舶の安全を図っている。

航空機についても、規定された空域を運航するために規定された通路(航空路)を航路と表現することがある。

概要[編集]

航路には、二地点(以上)を結ぶ道筋としての意義を主体とする場合(例:海上運送法でいう「定期航路」、離島航路整備法でいう「離島航路」)と、具体的にある水域での進路としての意義を主体とする場合(例:海上交通安全法港則法における「航路」、港湾法における「航路」、「開発保全航路」など)がある。

海上運送法における航路[編集]

日本での客船航路の分類[編集]

日本の純客船、貨客船などの客船航路には定期航路と不定期航路がある。

定期航路[編集]

定期航路は日程表に従って運航される船舶運航事業であり、一般旅客定期航路事業と特定旅客定期航路事業に分けられる。

一般旅客定期航路事業では不特定者を乗客とするため、事業を始めるには航路ごとに国土交通大臣の許可が必要となる。 従来、事業を始めるには、輸送の需要と供給のバランスや輸送施設の確保、安全性、責任体制、利用者の利便性、事業者の経済状況などが厳密に審査され免許が求められていたが、2000年10月より規制が緩和されて許可制となった。また離島航路では知事の許可が必要など、別の規制によって安全が担保されている。一般旅客定期航路事業では、天災などの特別な事情がない限り定時での運航が求められる。

特定旅客定期航路事業は特定の者の需要に応じて運航するものである[1][2]

不定期航路[編集]

不定期航路は旅客不定期航路事業と不定期航路事業に分けられる。 旅客不定期航路事業は不定期に不特定の乗客を乗せて運航される航路事業である。 不定期航路事業は旅客不定期航路事業、一般旅客定期航路事業、特定旅客定期航路事業のいずれにも該当しない航路事業であり、届出が求められる。

日本の客船航路数[編集]

日本の客船事業(2007年度)
事業者数 航路数 隻数
一般旅客定期航路 444 609 1298
特定旅客定期航路 8 11 11
旅客不定期航路 512 1,039 1,076
964 1,659 2,385


客船の定期航路の推移(各年の4月1日)
事業者数 航路数 旅客船隻数
1965年 1,298 2,127 3,420
1975年 947 1,568 2,877
1985年 824 1,308 2,397
1993年 832 1,342 2,349
1998年 903 1,479 2,178
2003年 951 1,583 2,400
2007年 964 1,659 2,385
[2]

海上交通安全法における航路[編集]

船舶交通が輻輳(ふくそう)する海域における船舶交通について、特別の交通方法を定めるとともに、その危険を防止するための規制を行なうことにより、船舶交通の安全を図ることを目的とする海上交通安全法において、対象となる航路は、2021年(令和3年)6月2日時点で、11の海域における船舶の通路[注釈 1]として定められている。
航路の海域は、同法第44条において、海上保安庁が刊行する海図に記載するものとされ、また、同法第45条において、航路を指定した経路を示すための指標となる航路標識を設置するものとされている。

港則法における航路[編集]

港内における船舶交通の安全及び港内の整とんを図ることを目的とする港則法の第11条及びその国土交通省令である港則法施行規則第8条において、船舶が、特定港に出入し、又は特定港を通過するときによらなければならない航路が定められている。定められている航路としては、2021年(令和3年)7月1日時点で、35の特定港における74の航路[注釈 2]がある。
なお、港則法は交通警察に係る性格の強い法律であるが、別に述べる公物管理に係る性格の強い港湾法にも航路に関する規定があり、それぞれが定める航路の範囲は重複している場合が多い。

港湾法における航路[編集]

航路[編集]

港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し、及び保全することを目的とする港湾法の第2条第5項第1号において、航路は港湾区域等内における港湾施設のうち水域施設の一つとして定義されている。ここでは航路が港湾施設の一種であることから、港湾の建設の技術上の基準として、航路の幅員、水深、方向等に関する性能規定が省令[注釈 3]や告示[注釈 4]で詳細に定められている。

開発保全航路[編集]

上記の航路とは別に同法第2条第8項で、港湾管理者が管理する港湾区域及び河川法に規定する河川区域以外の水域における船舶の交通を確保するため開発及び保全に関する工事を必要とする航路を、開発保全航路と定義している。具体的には下記の航路が政令により開発保全航路に指定されている。港湾法では、開発保全航路の開発・保全を国土交通大臣が行うとされており、実際の業務は国土交通省地方整備局の航路事務所または港湾・空港整備事務所が行っている。

漁港漁場整備法における航路[編集]

漁港の整備及び維持管理を目的とする漁港漁場整備法の第3条第1号ハにおいて、漁港施設のうち水域施設の一つとして航路が定義されている。同法には漁港区域内の航路について、浚渫など工事に関する規定がある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 浦賀水道航路(東京湾中ノ瀬の南方から久里浜湾沖に至る海域)、中ノ瀬航路(東京湾中ノ瀬の東側の海域)、伊良湖水道航路(伊良湖水道)、明石海峡航路(明石海峡)、備讃瀬戸東航路(瀬戸内海のうち小豆島地蔵埼沖から豊島と男木島との間を経て小与島と小瀬居島との間に至る海域)、宇高東航路(瀬戸内海のうち荒神島の南方から中瀬の西方に至る海域)、宇高西航路(瀬戸内海のうち大槌島の東方から神在鼻沖に至る海域)、備讃瀬戸北航路(瀬戸内海のうち小与島と小瀬居島との間から佐柳島と二面島との間に至る海域で牛島及び高見島の北側の海域)、備讃瀬戸南航路(瀬戸内海のうち小与島と小瀬居島との間から二面島と粟島との間に至る海域で牛島及び高見島の南側の海域)、水島航路(瀬戸内海のうち水島港から葛島の西方、濃地諸島の東方及び与島と本島との間を経て沙弥島の北方に至る海域)、来島海峡航路(瀬戸内海のうち大島と今治港との間から来島海峡を経て大下島の南方に至る海域)
  2. ^ 釧路港室蘭港函館港(南航路、北航路)、小樽港青森港八戸港(東航路、西航路)、仙台塩釜港木更津港(木更津航路、富津航路)、千葉港(千葉航路、市原航路、姉崎航路、椎津航路)、京浜港(東京東航路、東京西航路、川崎航路、鶴見航路、横浜航路)、伏木富山港(伏木航路、新湊航路、富山航路、国分航路)、清水港名古屋港(東航路、西航路、北航路)、四日市港(第一航路、第二航路、第三航路、午起航路)、舞鶴港阪南港(岸和田航路、泉佐野航路)、阪神港(浜寺航路、堺航路、大阪航路、神戸中央航路、新港航路、神戸西航路)、東播磨港姫路港(東航路、飾磨航路、広畑航路)、和歌山下津港(下津航路、北区航路)、境港水島港(港内航路)、尾道糸崎港(第一航路、第二航路、第三航路)、広島港関門港(関門航路、関門第二航路、響航路、砂津航路、戸畑航路、若松航路、奥洞海航路、安瀬航路)、徳島小松島港高松港新居浜港(第一航路、第二航路)、高知港博多港(中央航路、東航路)、三池港長崎港佐世保港細島港鹿児島港(本港航路、新港航路)
  3. ^ 港湾の施設の技術上の基準を定める省令第2条及び第3条
  4. ^ 港湾の施設の技術上の基準の細目を定める告示(国土交通省告示第395号)

出典[編集]

  1. ^ - 国土交通省 「一般旅客定期航路事業」
  2. ^ a b 池田良穂著 『内航客船とカーフェリー』 成山堂書店 平成20年7月18日新訂初版発行 ISBN 9784425770724

関連項目[編集]