観光資源

観光資源(かんこうしげん)とは、観光レジャーといった余暇を楽しむ需要に応じられる要素のこと。地域おこしの方法の一つとして、観光産業を興すときの元となる要素や事象のこと。

概要[編集]

観光資源の概念は、鉄道省国際観光局(Board of Tourist Industry)が resources for tourist の訳語として観光資源をあてたとされるが、いずれも tourism (観光)ではなく tourist (観光客)の邦訳が観光となっている。法令上観光資源が使用されたのは旧観光基本法が初めてであり、それまでは京都国際文化観光都市建設法等において文化観光資源として、文化とセットで用いられてきた[1]。なお、「文化観光都市」については「『文化観光都市』とはいったいどういうこと意味か。もともと、文化と観光とは相反する概念である。文化というものは、はじめから見世物ではないし、観光化するということは、たいていの場合、文化の崩壊である。そんな矛盾する概念をふたつくっつけて、どのような都市をつくろうというのか」[2]とする厳しい意見が当時寄せられていた。

朝日新聞データベースによる検索結果においても、字句としての観光資源は、1963年昭和38年)に旧観光基本法が制定されて以降の出現率が高くなっており、それ以前の使用例は一件である。旧観光基本法、及び、それを引き継ぐ2006年平成18年)制定の観光立国推進基本法が規定する観光資源は、史跡名勝天然記念物等の文化財、優れた自然の風景地、温泉を代表例に掲げ、包括規定として「その他産業、文化等に関する関するもの」としているところから、あらゆるものが観光資源としてとらえられている。なお、温泉が自然、文化とは別に具体的例示としてあげられていることは極めて日本的な規定である。

観光資源は、観光やレジャーに使われる施設や、あるいは風光明媚で目を楽しませる名勝などや舌を楽しませる郷土料理から伝統に基づく地域の文化を、地域にある資産資源とみなし、所定の地域にそういった資産・資源がどれほどまとまって存在しているかを考える際に使われる表現である。

観光は、それ自体が非日常を楽しむ人間の行動であるが、行った先でも人間が生活している以上は、その目的地に住んでいる人々の社会では日常ではある。ただ、その地に訪れた者の日常とは地域性の差異にもよって「違い」が出ることもままあることであるため、特に所定地域の日常的な生活が他の地域とは異なっている場合には観光資源となりうる。その一方、地域の名物(特産品行事イベントなど)となっている地域固有の産業や文化などは、その「特別さ」から観光資源として扱われる。

こういった観光資源として扱われるものには、歴史風土を背景として連綿と行なわれてきたものもあるが、その一方で地域の観光産業を盛り立てようと、新規に興される場合もあり、この場合は観光資源を鉱物ないし遺跡に準えて発掘と言う場合もある。この「発掘」では、地域の者が見向きもしていなかった事物に脚光が当てられ、それを軸にイベントが行なわれたり、施設の拡充が行なわれたりする。例えば漁港では、単なる産業施設としての機能だけではなく、「新鮮な魚介類を使った料理」や市場機能の一部を一般観光客に振り向け、直接的に市場から新鮮な海産物を購入できるなどのイベントが催されたりもする。

ただし、これら観光資源とみなされたものでも、客観的結果として地域振興に役立つかどうかは定かではない。その観光資源に価値を見出すのは地元の企画側であっても、実際に価値を評価するのは外部の不特定多数からなる観光客らであり、その観光客らが観光資源に興味を示さなければ、実際的な価値は創出しえない。このため、外部の人間をアドバイザーとして招くなどの活動も見られる。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『観光学』寺前秀一著イプシロン出版企画2007年
  2. ^ 『梅棹忠夫著作集第21号』中央公論社、1993年、p.103