議院法
議院法 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | なし |
法令番号 | 明治22年2月11日法律第2号 |
種類 | 憲法 |
効力 | 廃止 |
公布 | 1889年2月11日 |
施行 | 1890年11月25日 |
主な内容 | 議院の組織・運営・権限・議員など |
関連法令 | 大日本帝国憲法、日本国憲法、国会法など |
ウィキソース原文 |
議院法(ぎいんほう、明治22年2月11日法律第2号)は、大日本帝国憲法下で適用された法律である。1889年(明治22年)2月11日に大日本帝国憲法と同日に公布され、翌1890年(明治23年)11月25日に施行された。議院法は、大日本帝国憲法により立法府として設置された帝国議会(貴族院・衆議院から成る。貴衆両院と総称する。)の組織・運営・権限・議員について定めた法律である。議員に関しては、議院法の他、貴族院令(明治22年勅令第11号)および衆議院議員選挙法(明治22年法律第37号)によっても定められた。
1890年(明治23年)11月29日の大日本帝国憲法施行に先立ち、同年11月25日に第1回帝国議会は召集され、議院法はこの召集の日から施行された。
議院法は、1947年(昭和22年)の国会法(昭和22年法律第79号)附則により廃止された。
章立て
[編集]議院法(明治22年法律第2号)
- 第一章 帝国議会ノ召集成立及開会
- 第二章 議長書記官及経費
- 第三章 議長副議長及議員歳費
- 第四章 委員
- 第五章 会議
- 第六章 停会閉会
- 第七章 秘密会議
- 第八章 予算案ノ議定
- 第九章 国務大臣及政府委員
- 第十章 質問
- 第十一章 上奏及建議
- 第十二章 両議院関係
- 第十三章 請願
- 第十四章 議院ト人民及官庁地方議会トノ関係
- 第十五章 退職及議員資格ノ異議
- 第十七章 紀律及警察
- 第十八章 懲罰
条文の現代語訳
[編集]- 第一章
- 第1条
- 帝国議会召集の勅諭は集会の期日を定め少くとも40日前にこれを発布すへし
- 第2条
- 議員は召集の勅諭に指定したる期日において各議院の会堂に集会すへし
- 第3条
- 衆議院の議長副議長はその院において各々3名の候補者を選挙せしめその中よりこれを勅任すへし
- 議長副議長の勅任せらるるまては書記官長議長の職務を行ふへし
- 第4条
- 各議院は抽籤法により総議員を数部に分割し毎部々長1名を部員中において互選すへし
- 第5条
- 両議院成立したる後勅命をもって帝国議会開会の日を定め両院議員を貴族院に会合せしめ開院式を行ふへし
- 第6条
- 前条の場合において貴族院議長は議長の職務を行ふへし
- 第二章
- 第7条
- 各議院の議長副議長は各々1員とす
- 第8条
- 衆議院の議長副議長の任期は議員の任期による
- 第9条
- 衆議院の議長副議長辞職又はその他の事故により欠位となりたるときは継任者の任期は前任者の任期による
- 第10条
- 各議院の議長はその議院の秩序を保持し議事を整理し院外に対し議院を代表す
- 第11条
- 議長は議会閉会の間においてその議院の事務を指揮す
- 第12条
- 議長は常任委員会及特別委員会に臨席し発言することを得但し表決の数に預からす
- 第13条
- 各議院において議長故障あるときは副議長これを代理す
- 第14条
- 各議院において議長副議長ともに故障あるときは仮議長を選挙し議長の職務を行はしむへし
- 第15条
- 各議院の議長副議長は任期満限に達するも後任者勅任せらるるまてはその職務を継続すへし
- 第16条
- 各議院に書記官長1人書記官数人を置く
- 書記官長は勅任とし書記官は奏任とす
- 第17条
- 書記官長は議長の指揮により書記官の事務を提理し公文に署名す
- 書記官は議事録及その他の文書案を作り事務を掌理す
- 書記官の外他の必要なる職員は書記官長これを任す
- 第18条
- 両議院の経費は国庫よりこれを支出す
- 第三章
- 第19条
- 各議院の議長は歳費として4000円副議長は2000円貴族院の被選及勅任議院及衆議院の議院は800円を受け別に定むる所の規則に従ひ旅費を受く但し召集に応せさる者は歳費を受くることを得す
- 議長副議長及議員は歳費を辞することを得す
- 官吏にして議員たる者は歳費を受くることを得す
- 第25条の場合においては; 第1項歳費の外議院の定むる所により1日5円より多からさる手当を受く
- 第20条
- 各議院の委員は全院委員常任委員及特別委員の3類とす
- 全院委員は議院の全員をもって委員と為すものとす
- 常任委員は事務の必要によりこれを数科に分割し負担の事件を審査する為に各部において同数の委員を総議員中より選挙し1会期中その任に在るものとす
- 特別委員は1事件を審査する為に議院の選挙をもって特に付託を受くるものとす
- 第四章
- 第21条
- 全院委員長は1会期ことに開会の始においてこれを選挙す
- 常任委員長及特別委員長は各委員会においてこれを互選す
- 第22条
- 全院委員会は議院3分の1以上常任委員会及特別委員会はその委員半数以上の出席するに非されは議事を開き議決を為すことを得す
- 第23条
- 常任委員会及特別委員会は議員の外傍聴を禁す但し委員会の決議により議員の傍聴を禁することを得
- 第24条
- 各委員長は委員会の経過及結果を議院に報吿すへし
- 第25条
- 各議院は政府の要求により又はその同意を経て議会閉会の間委員をして議案の審査を継続せしむることを得
- 第五章
- 第26条
- 各議院の議長は議事日程を定めてこれを議院に報吿す
- 議事日程は政府より提出したる議案を先にすへし但し他の議事緊急の場合において政府の同意を得たるときは此の限に在らす
- 第27条
- 法律の議案は3読会を経てこれを議決すへし但し政府の要求若は議院10人以上の要求により議院において出席議員の3分の2以上の多数をもって可決したるときは3読会の順序を省略することを得
- 第28条
- 政府より提出したる議案は委員の審査を経すしてこれを議決することを得す但し緊急の場合において政府の要求に由るものは此の限に在らす
- 第29条
- 凡て議案を発議し及議院の会議において議案に対し修正の動議を発するものは20人以上の賛成あるに非されは議題と為すことを得す
- 第30条
- 政府は何時たりとも既に提出したる議案を修正し又は撤回することを得
- 第31条
- 凡て議案は最後に議決したる議院の議長より国務大臣を経由してこれを奏上すへし
- 但し両議院の1において提出したる議案にして他の議院において否決したるときは; 第54条; 第2項の規定による
- 第32条
- 両議院の議決を経て奏上したる議案にして裁可せらるるものは次の会期まてに公布せらるへし
- 第六章
- 第33条
- 政府は何時たりとも15日以内において議院の停会を命することを得
- 議院停会の後再ひ開会したるときは前会の議事を継続すへし
- 第34条
- 衆議院の解散により貴族院に停会を命したる場合においては前条第2項の例によらす
- 第35条
- 帝国議会閉会の場合において議案建議請願の議決に至らさるものは後会に継続せす但し第25条の場合においては此の限に在らす
- 第36条
- 閉会は勅命により両議院合会においてこれを挙行すへし
- 第七章
- 第37条
- 各議院の会議は左の場合において公開を停むることを得
- 1 議長又は議院10人以上の発議により議院これを可決したるとき
- 2 政府より要求を受けたるとき
- 第38条
- 議長又は議員10人以上より秘密会議を発議したるときは議長は直に傍聴人を退去せしめ討論を用いすして可否の決を取るへし
- 第39条
- 秘密会議は刊行することを許さす
- 第八章
- 第40条
- 政府より予算案を衆議院に提出したるときは予算委員はその院において受取りたる日より15日以内に審査を終り議院に報吿すへし
- 第41条
- 予算案に就き議院の会議において修正の動議を発するものは30人以上の賛成あるに非されは議題と為すことを得す
- 第九章
- 第42条
- 国務大臣及政府委員の発言は何時なりともこれを許すへし但しこれか為に議員の演説を中止せしむることを得す
- 第43条
- 議院において議案を委員に付したるときは国務大臣及政府委員は何時たりとも委員会に出席し意見を述ふることを得
- 第44条
- 委員会は議長を経由して政府委員の説明を求むることを得
- 第45条
- 国務大臣及政府委員は議員たる者を除く外議院の会議において表決の数に預からす
- 第46条
- 常任委員会又は特別委員会を開くときは毎会委員長よりその主任の国務大臣及政府委員に報知すへし
- 第47条
- 議事日程及議事に関る報吿は議員に分配すると同時にこれを国務大臣及政府委員に送付すへし
- 第十章
- 第48条
- 両議院の議員政府に対し質問を為さむとするときは30人以上賛成者あるを要す
- 質問は簡明なる主意書を作り賛成者と共に連署してこれを議長に提出すへし
- 第49条
- 質問主意書は議長これを政府に転送し国務大臣は直に答弁を為し又は答弁すへき期日を定め若答弁を為さヽるときはその理由を示明すへし
- 第50条
- 国務大臣の答弁を得又は答弁を得さるときは質問の事件に付議員は建議動議を為すことを得
- 第十一章
- 第51条
- 各議院上奏せむとするときは文書を奉呈し又は議長をもって総代とし謁見を請ひこれを奉呈することを得
- 各議院の建議は文書をもって政府に呈出すへし
- 第52条
- 各議院において上奏又は建議の動議は30人以上の賛成あるに非されは議題と為すことを得す
- 第十二章
- 第53条
- 予算を除く外政府の議案を付するは両議院の内何れを先にするも便宜による
- 第54条
- 甲議院において政府議案を可決し又は修正して議決したるときは乙議院にこれを移すへし乙議院において甲議院の議決に同意し又は否決したるときはこれを奏上すると同時に甲議院に通知すへし
- 乙議院において甲議院の提出したる議案を否決したるときはこれを甲議院に通知すへし
- 第55条
- 乙議院において甲議院より移したる議案に対しこれを修正したるときはこれを甲議院に回付すへし甲議院において乙議院の修正に同意したるときはこれを奏上すると同時に乙議院に通知すへし若これに同意せさるときは両院協議会を開くことを求むへし
- 甲議院より協議会を開くことを求むるときは乙議院はこれを拒むことを得す
- 第56条
- 両院協議会は両議院より各々10人以下同数の委員を選舉し会同せしむ委員の協議案成立するときは議案を政府より受取り又は提出したる甲議院において先つこれを議し次に乙議院に移すへし
- 協議会において成立したる成案に対しては更に修正の動議を為すことを許さす
- 第57条
- 国務大臣政府委員及各議院の議長は何時たりとも両院協議会に出席して意見を述ふることを得
- 第58条
- 両院協議会は傍聴を許さす
- 第59条
- 両院協議会において可否の決を取るは無名投票を用い外可否同数なるときは議長の決する所による
- 第60条
- 両院協議会の議長は両議院協議委員において各々1員を互選し毎会更代して席に当らしむへしその初会においける議長は抽籤法をもってこれを定む
- 第61条
- 本章に定むる所の外両議院交渉事務の規程はその協議によりこれを定むへし
- 第十三章
- 第62条
- 各議院に呈出する人民の請願書は議員の紹介により議院これを受取るへし
- 第63条
- 請願書は各議院において請願委員に付しこれを審査せしむ
- 請願委員請願書をもって規程に合はすと認むるときは議長は紹介の議員を経てこれを却下すへし
- 第64条
- 請願委員は請願文書表を作りその要領を録し毎週1回議院に報吿すへし
- 請願委員特別の報吿によれる要求又は議員30人以上の要求あるときは各議院はその請願事件を会議に付すへし
- 第65条
- 各議院において請願の採択すへきことを議決したるときは意見書を附しその請願書を政府に送付し事宜により報吿を求むることを得
- 第66条
- 法律により法人と認められたる者を除く外総代の名義をもってする請願は各議院これを受くることを得す
- 第67条
- 各議院は憲法を変更するの請願を受くることを得す
- 第68条
- 請願書は総て哀願の体式を用うへし若請願の名義によらす若はその体式違ふものは各議院これを受くることを得す
- 第69条
- 請願書にして皇室に対し不敬の語を用い政府又は議院に対し侮辱の語を用いるものは各議院これを受くることを得す
- 第70条
- 各議院は司法及行政裁判に干預するの請願を受くることを得す
- 第71条
- 各議院は各別に請願を受け互に相干預せす
- 第十四章
- 第72条
- 各議院は人民に向て吿示を発することを得す
- 第73条
- 各議院は審査の為に人民を召喚し及議員を派出することを得す
- 第74条
- 各議院より審査の為に政府に向て必要なる報吿又は文書を求むるときは政府は秘密に渉るものを除く外その求に応すへし
- 第75条
- 各議院は国務大臣及政府委員の外他の官庁及地方議会に向て照会往復することを得す
- 第十五章
- 第76条
- 衆議院の議員にして貴族院議員に任せられ又は法律により議員たることを得さる職務に任せられたるときは退職者とす
- 第77条
- 衆議院の議員にして選舉法に記載したる被選の資格を失ひたるときは退職者とす
- 第78条
- 衆議院において議員の資格に付異議を生したるときは特に委員を設け時日を期しこれを審査せしめその報吿を待てこれを議決すへし
- 第79条
- 裁判所において当選訴訟の裁判手続を為したるものは衆議院において同1事件に付審査することを得す
- 第80条
- 議員そ資格なきことを証明せらるるに至るまては議院において位列及発言の権を失はす但し自身の資格審査に関る会議に対しては弁明することを得るもその表決に預かることを得す
- 第十六章
- 第81条
- 各議院の議長は1週間に超えさる議員の請暇を許可することを得その1週間を超ゆるものは議院においてこれを許可す期限なきものはこれを許可することを得す
- 第82条
- 各議院の議員は正当の理由をもって議長に届出すして会議又は委員会に欠席することを得す
- 第83条
- 衆議院は議員の辞職を許可することを得
- 第84条
- 何等の事由に拘らす衆議院議員に欠員を生したるときは議長より内務大臣に通牒し補欠選挙を求むへし
- 第十七章
- 第85条
- 各議院開会中その紀律を保持せむか為内部警察の権は此の法律及各議院において定むる所の規則に従ひ議長これを施行す
- 第86条
- 各議院において要する所の警察官吏は政府これを派出し議長の指揮を受けしむ
- 第87条
- 会議中議員此の法律若は議事規則に違ひその他議場の秩序を紊るときは議長はこれを警戒し又は制止し又は発言を取消さしむ命に従はさるときは議長は当日の会議を終るまて発言を禁止し又は議場の外に退去せしむることを得
- 第88条
- 議場騒擾にして整理し難きときは議長は当日の会議を中止し又はこれを閉つることを得
- 第89条
- 傍聴人議場の妨害を為す者あるときは議長はこれを退場せしめ必要なる場合においてはこれを警察官庁に引渡さしむることを得
- 傍聴席騒擾なるときは議長は総ての傍聴人を退場せしむることを得
- 第90条
- 議場の秩序を紊る者あるときは国務大臣政府委員及議員は議長の注意を喚起することを得
- 第91条
- 各議院において皇室に対し不敬の言語論説を為すことを得す
- 第92条
- 各議院において無体の語を用いることを得す及他人の身上に渉り言論することを得す
- 第93条
- 議院又は委員会において誹毀侮辱を被りたる議員はこれを議院に訴へて処分を求むへし私に相報復することを得す
- 第十八章
- 第94条
- 各議院はその議員に対し懲罰権を有す
- 第95条
- 各議院において懲罰事犯を審査する為に懲罰委員を設く
- 懲罰事犯あるときは議長は先つこれを委員に付し審査せしめ議院の議を経てこれを宣吿す
- 各委員会又は各部において懲罰事犯あるときは委員長又は部長はこれを議長に報吿し処分を求むへし
- 第96条
- 懲罰は左の如し
- 1 公開したる議場において譴責す
- 2 公開したる議場において適当の謝辞を表せしむ
- 3 一定の時間出席を停止す
- 4 除名
- 衆議院において除名は出席議員3分の2以上の多数をもってこれを決すへし
- 第97条
- 衆議院は除名の議員再選に当る者を拒むことを得す
- 第98条
- 議員は30人以上の賛成をもって懲罰の動議を為すことを得
- 懲罰の動議は事犯ありし後3日以内にこれを為すへし
- 第99条
- 議員正当の理由なくして勅諭に指定したる期日後1週間内に召集に応せさるにより又は正当の理由なくして会議又は委員会に欠席するにより若は請暇の期限を過きたるにより議長より特に招状を発しその招状を受けたる後1週間内に故なく出席せさる者は貴族院においてはその出席を停止し上奏して勅裁を請ふへく衆議院においてはこれを除名すへし