鈴木潤 (フィギュアスケート選手)

鈴木 潤
Jun SUZUKI
フィギュアスケート選手
 2019年東北北海道ブロックにて
生誕 (1994-05-08) 1994年5月8日(29歳)
宮城県仙台市
選手情報
代表国 日本の旗 日本
コーチ 松本享子
所属クラブ 北海道大学(現役当時)
ISUパーソナルベストスコア
総合135.482011年JGPブラショフ杯
SP43.882011年JGPブラショフ杯
FS91.602011年JGPブラショフ杯

鈴木 潤(すずき じゅん、英語: Jun Suzuki、 1994年5月8日 - )は、日本の元フィギュアスケート選手(男子シングル)。宮城県仙台市出身。血液型はB型

北海道大学工学部卒業。同大学大学院工学院修士課程修了。

主な戦績に、2017年全日本選手権10位、2011年全日本ジュニア選手権7位、2011年ジュニアグランプリシリーズ ブラショフ杯11位、2008年全国中学スケート大会3位、2012年全国高等学校スケート競技選手権大会3位、2018年チャレンジカップ 4位などがある。

人物[編集]

1994年宮城県仙台市生まれ。中学3年生の時に札幌市に移住。高校は北海道有数の進学校として知られる北海道札幌南高等学校に入学。2014年北海道大学工学部に入学。2018年北海道大学大学院工学院へ進学。大学院では論文が米国化学会誌に取り上げられ[1]、またフィギュアスケート日本代表としての活躍が認められ北大えるむ賞を受賞している[2]。修了後、ソニーへの就職を機にフィギュアスケート競技から引退した[3]

経歴[編集]

ノービス時代[編集]

4歳年上の姉の影響から4歳よりスケートを始める。

同郷で同い年(スケート年齢は鈴木が1年上)の羽生結弦とは幼少期から競いあい、全日本ノービスBでも1年目は木原龍一、2年目は羽生に次ぐ全国2位の成績を2年連続で収めたが、腰椎分離症を発症し半年スケートを離れ、全日本ノービスAでは表彰台から遠ざかった。

ジュニア時代[編集]

再び全国大会で表彰台に立ったのは中学1年の第28回全国中学校スケート大会。羽生結弦田中刑事日野龍樹木原龍一など強豪揃いの中、3位と健闘し将来のトップスケーターを期待された。

しかし、中学2年生の1月にホームリンクの勝山スケートリンクが閉鎖。練習環境を求め父親の単身赴任先であった札幌に中学3年生の時に移住したものの、札幌市内の2か所の通年リンクはアイスホッケーなどと共同で使用するため練習時間の確保ができず、車で1~2時間かかる市外数か所のリンクでも練習するなど、不規則で厳しい練習環境で選手生活を続けることとなった。

高校受験のため中学3年生の後半はスケートを休んだ。

高校1年生の時に 全日本ジュニア で8位に入り、推薦で全日本選手権に初出場。強化選手にも選ばれ高校2年生のときにはジュニアグランプリシリーズに出場した。

その年の全日本ジュニアで7位に入り、全国高等学校スケート選手権では田中刑事日野龍樹に次ぐ3位の成績を収めたが、大学受験のため翌年の強化指定を外れ、高校3年生からの2年間競技から離れた[4]

シニア以降[編集]

北海道大学工学部に合格後、選手生活は4年間と決め競技に復帰。大学2年生の2015-2016年シーズンに、全日本選手権が地元の札幌開催だったことから「懸けるならここしかない」と大きな決断をし、当時のコーチである山田真実のつてをたどってアメリカミシガン州デトロイトで指導者として活躍している元世界チャンピオンの佐藤有香の元でプログラム作りを行った。 以降大学院1年生まで毎年デトロイトに赴き佐藤有香の元で振付を行い、滞在中にはジェレミー・アボットの指導を受けたりパトリック・チャンから刺激をもらったりした。

トリプルアクセルを習得し挑んだその年の全日本選手権では地元開催ということで大きな歓声を浴びたが、直前の怪我もあり結果は13位とあと一つで強化指定を逃した[5]

4年間の競技生活で強化選手に復帰するためには最後のチャンスのシーズンとなる大学3年生の夏にまたも腰椎分離症を発症。怪我を抱えながらも東日本選手権で2位に入り全日本選手権での上位進出が期待されたが、全日本選手権では持ち越しのショートプログラムでは8位につけたものの、フリースケーティングでは怪我の影響もあり失速。結果は14位で終わり強化選手への復帰は叶わなかった。年明けのインカレには出場を予定していたが状態が悪化したことから試合前日に出場を断念。以降そのシーズンの残りを休養にあて、休養中のインタビューでは大学院進学後の現役続行の可能性を初めて示唆した[6]

背水の陣で挑んだ大学4年生のシーズンに[7]全日本選手権のショートプログラムで12位につけ[8]、迎えたフリースケーティングでは自己ベストとなる会心の演技を披露。初の合計200点超えを果たし最終的に総合10位となり翌シーズンの強化指定の権利を得た。2月には高校2年生以来の国際大会にも派遣され、4位と表彰台まであと1歩にせまり、182pを獲得しISUワールドスタンディングで165位にランクイン[9]した。

強化指定選手への復帰を果たしたことで大学院進学後も現役続行を決意し、大学院1年生のシーズンの全日本選手権では文武両道の選手として観客を引き込む演技で話題を呼んだ[10][11]

『明治×法政オンアイス』終了後の記念撮影

大学院2年生のシーズン前に、今年度限りでの引退を発表。最後のプログラムとなるショートプログラムは『別れの曲』を選び、振付は自身で行った。

6位以内で全日本選手権出場が決まる東日本選手権では、ショートプログラムで11位と大きく出遅れたが、フリースケーティングでは会場を巻き込む起死回生の演技で9人を残して暫定一位につけ、フリースケーティングは3位、総合6位で全日本選手権出場の最後の1枠を掴んだ[12]

最後の大舞台となる全日本選手権はショートプログラムでトリプルアクセルを転倒し上位24人までのフリースケーティング進出が危ぶまれたが、スピン・ステップで得点を重ね17位につけた。フリースケーティングでは日本スケート連盟公認大会では自身初となるトリプルアクセル-トリプルトゥループのコンビネーションジャンプに成功し、演技終盤には自他ともに認める代名詞のロングイーグルを見せ[3] 最終順位17位、万感の想いで最後の全日本選手権を終えた[13][14]

年明けの3月に開催される北海道選手権で引退を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により北海道選手権が中止となったため、2月に東伏見で行われた学生主体のエキシビション「明治×法政オンアイス」[15][16] が公に見せる最後の姿となった。2020年3月31日自身のX(twitter)で引退を報告。21年の競技生活にピリオドを打つ文武両道の選手の引退はyahoo!ニュースにも取り上げられた[17]

引退後は一般企業で働く傍ら、後進の指導や振付を行っていたが、引退1年目の2020年12月にフィギュアスケート専門誌『Quadruple Axel』(山と渓谷社)で、自身の経験を語る連載コラム『文舞両道のすすめ』の掲載が開始。以降2024年2月まで全10回に渡りコラムの執筆を行った。また『フジテレビオンデマンド』でライブ配信されている東日本選手権に2021年より2年連続トークゲストとして登場し、演技解説で大会の盛り上げに貢献している。

技術・演技[編集]

特にアクセルジャンプを得意とし、着氷後にスプレッドイーグルを入れた3回転半アクセルは国際大会でも+2.00の出来栄え点を得た(当時は+3.00が最高評価)[18]2018年全日本選手権では3回転半アクセルで全出場選手の中で4番目の高さを計測されている[19]。2017年の札幌フィギュアスケート選手権大会[20] で3回転半アクセル-3回転トウループに初成功し、2018年の国民体育大会北海道予選会[21]2019年全日本選手権[22] でも加点のつく出来栄えで3回転半アクセル-3回転トウループを成功させている。

また3回転サルコウは短い助走や演技の終盤でも安定して跳べる。この得意な二種類のジャンプを組み合わせてプログラムの後半に組み込む2回転半アクセル-1回転オイラー-3回転サルコウの3連続ジャンプは成功率が高く、重要な得点源となっている[23]

スピンは軸が安定しておりバリエーションも豊富なため、2016年のシーズンからはフリースケーティングにはより基礎点が高くなる二種類の足換えコンビネーションスピンを入れている。2017年シーズンは東日本選手権[24]全日本選手権[25]ショートプログラムフリースケーティングともに全てのスピンで最高評価となるレベル4を獲得している。

2016-2018年のフリープログラムである『ニュー・シネマ・パラダイス』のコレオグラフィック・シークェンスで見せたスプレッドイーグルは、エッジの外側で滑るアウトサイドイーグルとエッジの内側で滑るインサイドイーグルの両方を取り入れたロングイーグルで国際大会でも高い評価を得て鈴木の躍進を支えた[26]。その後のプログラムでも要所を締める見せ場の一つとなっている。

主な戦歴[編集]

大会/年 2007-08

2008-09

2009-10 2010-11 2011-12 2014-15 2015-16 2016-17 2017-18 2018-19 2019-20
全日本選手権 23 14 13 14 10 15 17
東日本選手権 6J 6J 6J 2J 1J 3 2 2 3 3 6
全日本Jr.選手権 13 17 11 8 7
JGPブラショフ杯 11
チャレンジカップ 4

詳細[編集]

2019 -2020 シーズン
開催日 大会名 SP FS 結果
2019年12月18日 - 22日 第88回全日本フィギュアスケート選手権(東京) 17
63.49
16
125.81
17
189.30
2019年10月24日 - 27日 第45回東日本フィギュアスケート選手権(軽井沢) 11
49.17
3
117.92

6
167.09
2019年9月20日 - 23日 2019年東北・北海道フィギュアスケート選手権大会(八戸) 2
59.15
1
119.50

2
178.65
2019年8月31日 - 9月1日 第43回札幌フィギュアスケート選手権大会(札幌) 1
58.23
1
115.95

1
174.18
2018 -2019 シーズン
開催日 大会名 SP FS 結果
2019年1月30日 - 2月3日 第74回国民体育大会冬季大会釧路 8
56.04
11
104.30
11
160.34
2018年12月20日 - 24日 第87回全日本フィギュアスケート選手権門真 13
69.18
15
129.09

15
198.27
2018年10月25日 - 28日 第44回東日本フィギュアスケート選手権八戸 3
61.39
5
112.78

3
174.17
2018年9月21日 - 24日 2018年東北・北海道フィギュアスケート選手権大会札幌 1
63.29
1
99.74

1
163.03
2018年8月24日 - 26日 第42回札幌フィギュアスケート選手権大会札幌 1
45.99
1
107.90

1
153.89
2017-2018 シーズン
開催日 大会名 SP FS 結果
2018年2月22日 - 25日 2018年チャレンジカップオランダ 3
68.38
4
125.72

4
194.10
2018年1月28日 - 2月1日 第73回国民体育大会冬季大会山梨 13
55.47
4
122.86

8
178.33
2017年12月20日 - 24日 第86回全日本フィギュアスケート選手権調布 12
66.83
8
140.56

10
207.39
2017年10月26日 - 29日 第43回東日本フィギュアスケート選手権甲府 3
68.88
3
124.86

3
193.74
2017年9月21日 - 24日 2017年東北・北海道フィギュアスケート選手権大会新潟 1
54.61
1
120.61

1
175.22
2017年9月2日 - 3日 第41回札幌フィギュアスケート選手権大会札幌 1
62.51
1
122.04

1
184.55
2016 -2017 シーズン
開催日 大会名 SP FS 結果
2016年12月22日 - 25日 第85回全日本フィギュアスケート選手権(門真) 8
66.17
18
111.37

14
177.54
2016年11月3日 - 6日 第42回東日本フィギュアスケート選手権(東伏見) 1
62.83
4
111.63

2
174.46
2016年10月7日 - 10日 2016年東北・北海道フィギュアスケート選手権大会(八戸) 1
66.90
2
103.04

2
169.94
2015 -2016 シーズン
開催日 大会名 SP FS 結果
2016年1月28日 - 31日 第71回国民体育大会冬季大会(盛岡) 11
55.94
7
114.89

8
170.83
2016年1月6日 - 9日 第88回日本学生氷上競技選手権大会(日光) 4
60.67
3
122.05

3
182.72
2015年12月24日 - 27日 第84回全日本フィギュアスケート選手権(札幌) 14
61.82
12
123.36

13
185.18
2015年10月29日 - 11月1日 第41回東日本フィギュアスケート選手権(前橋) 9
47.86
1
125.91

2
173.77
2015年10月1日 - 4日 2015年東北・北海道フィギュアスケート選手権大会(三沢) 2
57.80
1
116.90

1
174.70
2015年9月12日 - 13日 第39回札幌フィギュアスケート選手権大会(札幌) 2
61.03
1
118.31

1
179.34
2014 -2015 シーズン
開催日 大会名 SP FS 結果
2015年1月28日 - 2月1日 第70回国民体育大会冬季大会(前橋) 5
56.67
4
121.95

5
178.62
2015年1月6日 - 9日 第87回日本学生氷上競技選手権大会(釧路) 4
56.85
5
109.91

5
166.76
2014年12月25日 - 28日 第83回全日本フィギュアスケート選手権(長野) 17
54.23
11
111.94

14
166.17
2014年10月30日 - 11月2日 第40回東日本フィギュアスケート選手権(千葉) 7
49.43
3
107.74

3
157.17
2014年10月2日 - 5日 2014年東北・北海道フィギュアスケート選手権大会(札幌) 2
55.98
2
105.64

2
161.62
2014年8月30日 - 31日 第38回札幌フィギュアスケート選手権大会(札幌) 1
45.05
1
91.08

1
136.13

プログラム使用曲[編集]

シーズン SP FS
2019-2020 練習曲ホ長調Op.10-3
作曲:フレデリック・ショパン
振付:鈴木潤、横山美智子
ビートルズ・メドレー
イン・マイ・ライフレディ・マドンナレット・イット・ビー
作曲:レノン=マッカートニー
振付:佐藤有香ジェレミー・アボット
2018-2019 月の光
作曲:クロード・ドビュッシー
振付:佐藤有香
2017-2018 映画『ニュー・シネマ・パラダイス』より
作曲:エンニオ・モリコーネ
振付:佐藤有香
2016-2017 フラメンコ・ア・ゴー・ゴー/Dementia
作曲:スティーヴ・スティーヴンス
振付:佐藤有香
2015-2016 ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
作曲:ヨハネス・ブラームス
振付:川越正大
2014-2015 組曲『惑星』より木星
作曲:グスターヴ・ホルスト
振付:川越正大
2011-2012 ジャンピン・ジャック
演奏:ビッグ・バッド・ブードゥー・ダディー
振付:佐藤紀子、曽我清子、佐竹由香
Rattle and Burn/Toca Orilla
演奏:Jesse Cook
振付:佐藤紀子、佐竹由香
2010-2011 運命の力
作曲:ヴェルディ
振付:佐藤紀子、曽我清子、佐竹由香

脚注[編集]

  1. ^ ACS Publication「Ultrarapid Cationization of Gold Nanoparticles via a Single-Step Ligand Exchange Reaction」
  2. ^ 北大時報No781
  3. ^ a b NumberWeb「羽生結弦と同郷で同い年、鈴木潤。ソニーのエンジニアに華麗なる転身。」
  4. ^ Sportie.com[大学受験も最終盤!氷上を舞う国立大生・鈴木潤が受験で得たものとは」
  5. ^ 朝日新聞デジタル「北大生、全力で舞う、跳ぶ フィギュア」
  6. ^ Yahoo!ニュース【フィギュアスケート】北大生 鈴木潤の飽くなき挑戦
  7. ^ 朝日新聞デジタル「平昌への3枠、狙う羽生世代 フィギュアスケート・全日本選手権、きょう開幕」
  8. ^ Yahoo!ニュース【フィギュアスケート】鈴木潤 4分半に込める集大成の思い
  9. ^ World Standings”. web.archive.org (2018年2月28日). 2022年3月23日閲覧。
  10. ^ Yahoo!ニュース【フィギュアスケート】インスパイアこそ本望。鈴木潤「月の光」にある世界観
  11. ^ 日刊スポーツ「北大大学院の鈴木潤「今を生きている」文武両道15位」
  12. ^ ウォーカープラス「フィギュアスケート全日本選手権、最後の大舞台に臨む、引退を決めた選手達」
  13. ^ 朝日新聞デジタル「羽生と同い年、万感のビートルズ 迷い越えありのままに」(有料会員登録記事)
  14. ^ 【フジテレビ公式】全日本フィギュアスケート選手権2019<男子フリー第2G/鈴木 潤 インタビュー>
  15. ^ 4years.工学部の実験プロセスをスケートの練習に応用 北大大学院工学院・鈴木潤(上)
  16. ^ 4years.フィギュアスケートも仕事も「人を喜ばせたい」北大大学院工学院・鈴木潤(下)
  17. ^ 鈴木潤が引退を報告 羽生結弦と同郷同学年の25歳「青春を謳歌し、今を生き抜けた」
  18. ^ Challenge Cup MEN SENIOR SHORT PROGRAM JUDGES DETAILS PER SKATER
  19. ^ 【公式】フジテレビスケート『SKATE LiNK フジスケ』全日本選手権DAY4
  20. ^ 第41回札幌フィギュアスケート選手権大会兼2017SAPPORO CUP Judge's Detail per Skater - Free Skating / 選手権男子
  21. ^ 第74回国民体育大会冬季大会スケート競技会北海道予選会 Judge's Detail per Skater - Free Skating / 成年男子
  22. ^ 第88回全日本フィギュアスケート選手権大会 Judge's Detail per Skater - Free Skating / 男子
  23. ^ 第86回全日本フィギュアスケート選手権大会 Judge's Detail per Skater - Free Skating / 男子
  24. ^ 第43回東日本選手権大会第34回東日本ジュニア選手権大会
  25. ^ 第86回全日本選手権大会
  26. ^ Challenge Cup MEN SENIOR FREE SKATING JUDGES DETAILS PER SKATER

関連項目[編集]

外部リンク[編集]