長老院 (ソマリランド)

House of Elders
Golaha Guurtida
مجلس الشيوخ
Seal of the House of Elders of Somaliland.
種類
種類
沿革
設立1993年
役職
議長
サレバン・マハムド・アダン英語版
2004年8月28日より現職
構成
定数82 人
任期
6 年 [1]
議事堂
ハルゲイサ
ウェブサイト
www.govsomaliland.org/hoe
脚注
長老院 (somalilandparliement.net) - Facebook

ソマリランド長老院 (House of Elders, ソマリ語: Golaha Guurtida, アラビア語: مجلس الشيوخ‎) はソマリ語で「グルティ (guurti)」とも言われ、ソマリランドの上院に当たる。議員はいわゆる長老であり、伝統的な氏族の族長が多い。1993年に制度化されて以来、全面的な改選はされておらず、議員が死亡した時には議席が世襲されることが多い。

それに対してソマリランドの下院に当たるソマリランド衆議院英語版の議員は民主選挙で選ばれる。

ソマリランド憲法によれば、長老院には衆議院の決議を否決する権限があるものの、衆議院の2/3以上の賛成で再可決されれば衆議院の意思が優先される[2]

ソマリランドの政治形態はまだ安定しているとは言い難く、衆議院の任期は憲法で5年とされているものの、実際の議員選挙は各種事情で2005年、2021年の2回しか行われていない。衆議院の任期延長に関して長老院は重要な役割を果たしている。また、大統領の任期も5年とされているが、過去に必ず任期が延長されており、これにも長老院は重要な役割を果たしている。

歴史[編集]

ソマリランド長老院の前身に当たる長老会議「グルティ」は、ソマリランド建国のはるか前から存在していた。ただし、事案が発生するたびに関係氏族の長老が集まる形のもので、制度化はされておらず、常設の組織でもなかった。

1991年、ソマリア北西部に住むイサック氏族主体の軍閥ソマリ国民運動 (SNM)」がソマリランド共和国の建国を宣言した。しかし軍閥による支配では国内がまとまらず、1993年にSNMは各氏族の長老に派閥間の調停を依頼した[3]。長老たちはグルティを開き、シェイク・イブラヒム・シェイク・ユスフ・シェイク・マダー英語版がグルティの代表となった[4]

1993年にボラマで行われた「国民和解の大会議」にてグルティは長老院として制度化され、82人の議員がソマリランドの各地から選出された[5]。グルティは常設されることとなった[6]。そして長老院は、新しいソマリランド大統領にイブラヒム・エガルを指名した[7]。ただしこの時には150人の長老が投票している[6]:406

1997年の暫定憲法で、長老院の任期は6年と決まった[8]。2001年に発効したソマリランド憲法英語版にも長老院について明記された[9]

2003年に長老院は任期切れとなったが、大統領令によって「衆議院の任期の1年後」と変更された。衆議院の任期も2003年5月に切れたが、長老院は衆議院の任期を2年延長することを決定した[8]

2004年7月、長老院の議長シェイク・イブラヒム・シェイク・ユスフ・シェイク・マダーが治療で訪れていたロンドンで亡くなった。後任はサレバン・マハムド・アダン英語版が選ばれた[10][11]

2005年にソマリランド衆議院選挙が行われたので、長老院の任期は2006年になった。しかし2006年5月、ソマリランド長老院自身が長老院の任期を4年延長すると決定した[8]

ソマリランド憲法に定められた大統領任期は5年だったが、2008年4月、ソマリランド長老院は大統領任期を1年延長したいという大統領の要請を承認した。その後、ソマリランド選挙管理委員会英語版が技術的課題が残っているとしてさらに1年の延長を要請し、ソマリランド長老院はこれも承認した。結局大統領選は2年遅れの2010年6月に行われ、ダヒル・リヤレ・カヒンが当選した[12]

2010年9月、長老院は自身の任期を3年8ヵ月延長、さらに衆議院の任期を2年8か月延長した[8]

2013年4月、長老院は5月に任期切れとなる衆議院の任期を2015年まで延長すると決定した。これにより、長老院の任期は2016年まで延長されることになった[8]

2015年5月16日、ソマリランド長老院は自身の任期を2018年6月まで延長すると発表した[8]。さらに同じく2015年に任期が切れるダヒル・リヤレ・カヒン大統領の任期を2年間延長すると発表した。ソマリランド選挙管理委員会英語版はその数日前に技術的理由から大統領選挙の1年延長を発表しており、それに対する挑戦と見なす人もいた[13]。(結局、大統領選挙は2017年11月に実施され、ムセ・ビヒ・アブディが当選した。)

2017年11月、ソマリランド長老院は衆議院議会選挙を2019年まで延期すると発表した[14]。長老院はさらに2019年1月、選挙の延期を発表した[15]。この時は一旦、衆議院の選挙は2022年1月、長老院の改選は2023年1月と決められた[16]。これに対して国際連合ソマリア支援ミッション(UNSOM)は懸念を表明[17]

2020年7月、ソマリランドの主要3党が選挙方法について合意に達し、10月、ソマリランド長老院は、これに基づいた議会選挙と地方選挙を実施する協定に署名した。これにより、11月から選挙を開始し、2021年2月に新大統領が選出される見込みとなった[18]

ソマリランド選挙管理委員会は予定通り2020年11月から有権者登録を開始した[19]。2021年1月、ソマリランド選挙管理委員会は5月31日に国会議員選挙と地方議員選挙の同時選挙を実施する案を大統領に提出し、大統領は了承[20]。2021年2月、長老院も満場一致で同意した[21]

議長[編集]

評価[編集]

2021年5月、ソマリランド正義開発党の党首ファイサル・アリ・ワラベ英語版は長老院に対して「長老院議員が亡くなると息子が後を継ぐ仕組みになっており、民主的ではない」と評している[22]

参考文献[編集]

  1. ^ Somaliland Constitution”. www.somalilandlaw.com. 2021年11月9日閲覧。
  2. ^ “The Other Somalia: An Island of Stability in a Sea of Armed Chaos”. nytimes.com. (2007年3月7日). https://www.nytimes.com/2007/03/07/world/africa/07somaliland.html 2021年11月7日閲覧。 
  3. ^ Redie Bereketeab (2012年). “Self-Determination and Secessionism in Somaliland and South Sudan”. 2021年11月7日閲覧。
  4. ^ HASSAN FARAH MOHAMED (2015年1月). “THE LEADERSHIP ROLE OF THE GUURTI (THE UPPER HOUSE) IN SOMALILAND STATE BUILDING”. 2021年11月7日閲覧。
  5. ^ Carolyne Gatimu (2014年). “Traditional Structures in Peace and Security Consolidation: The Case of the House of Elders (Guurti) in ‘Somaliland’”. 2021年11月7日閲覧。
  6. ^ a b 高野秀行 (2013). 謎の独立国家ソマリランド. 本の雑誌社. p. 281. ISBN 9784860112387 
  7. ^ Redie Bereketeab (2012年). “Self-Determination and Secessionism in Somaliland and South Sudan”. 2021年11月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e f somalilandlaw.com (2015年5月11日). “HOUSE OF ELDERS S/ELECTION LAW”. 2021年11月12日閲覧。
  9. ^ Berouk Mesfin (2009年9月). “The political development of Somaliland and its conflict with Puntland”. 2021年11月7日閲覧。
  10. ^ Markus Virgil Hoehne (2011年). “No Easy Way Out: Traditional Authorities in Somaliland and the Limits of Hybrid Political Orders”. 2021年10月16日閲覧。
  11. ^ “UNICEF Somalia Review Jul 2004”. reliefweb.int. (2004年8月5日). https://reliefweb.int/report/somalia/unicef-somalia-review-jul-2004 2021年11月9日閲覧。 
  12. ^ “Unrecognized Vote: Somaliland’s Democratic Journey”. boell.org. (2021年5月5日). https://ke.boell.org/en/2021/05/05/unrecognized-vote-somalilands-democratic-journey 2021年11月7日閲覧。 
  13. ^ “Somaliland’s Guurti Sparks a Crisis”. reliefweb.int. (2015年5月21日). https://reliefweb.int/report/somalia/somaliland-s-guurti-sparks-crisis 2021年11月7日閲覧。 
  14. ^ “International Partners Disappointed by Somaliland Electoral Delays”. so.usembassy.gov. (2017年3月9日). https://so.usembassy.gov/international-partners-disappointed-somaliland-electoral-delays/ 2021年11月7日閲覧。 
  15. ^ “Somaliland’s fragile democracy faces more election delays”. issafrica.org. (2019年3月19日). https://issafrica.org/iss-today/somalilands-fragile-democracy-faces-more-election-delays 2021年11月7日閲覧。 
  16. ^ “On delays to Somaliland Parliamentary and Local Council Elections”. somalia.un.org. (2019年11月27日). https://somalia.un.org/en/34285-delays-somaliland-parliamentary-and-local-council-elections 2021年11月7日閲覧。 
  17. ^ UNSOM (2019年11月27日). “ON DELAYS TO SOMALILAND PARLIAMENTARY AND LOCAL COUNCIL ELECTIONS”. 2021年11月11日閲覧。
  18. ^ “Somaliland parliament approves electoral pact”. hiiraan.com. (2020年10月6日). https://www.hiiraan.com/news4/2020/Oct/180196/somaliland_parliament_approves_electoral_pact.aspx 2021年11月11日閲覧。 
  19. ^ “Somaliland: We are Ready for Unregistered Voters-NEC”. somalilandsun.com. (2020年11月8日). https://somalilandsun.com/somaliland-we-are-ready-for-unregistered-voters-nec/ 2021年11月12日閲覧。 
  20. ^ “Somaliland: NEC Schedules 2021 Municipal, Parliamentary Elections”. menafn.com. (2021年1月16日). https://menafn.com/1101444157/Somaliland-NEC-Schedules-2021-Municipal-Parliamentary-Elections 2021年11月12日閲覧。 
  21. ^ “Somaliland: Guurti endorses the Election timeline set by the Electoral Commission”. somalilandstandard.com. (2021年2月2日). https://somalilandstandard.com/somaliland-guurti-endorses-the-election-timeline-set-by-the-electoral-commission/ 2021年11月12日閲覧。 
  22. ^ “Somaliland elections: Could polls help gain recognition?”. bbc.com. (2021年5月31日). https://www.bbc.com/news/world-africa-57255602 2021年11月12日閲覧。 

外部リンク[編集]