電信方程式(でんしんほうていしき、英: telegraphic equation)とは、波動や信号の伝播を記述する2階の線形偏微分方程式のこと。分布定数回路における電流や電圧の分布、導体中の電磁場の伝播、減衰のある弦の振動などの現象を記述する。
空間変数x と時間変数t と実数値関数u (x, t )に対し、

で与えられる双曲型の2階偏微分方程式を電信方程式という。特にγ=0である場合は、通常の波動方程式に相当する。
より一般的にn次元の空間変数x=(x1,…,xn) と時間変数t の実数値関数u (x, t )に対し、

で与えられる偏微分方程式も電信方程式という。但し、∇2はn次元におけるラプラス作用素

である。
- 標準形
- 電信方程式は、時間t についての一階の導関数や物理的な係数を含んだ形で、
![{\displaystyle \left[{\frac {1}{c^{2}}}{\frac {\partial ^{2}}{\partial t^{2}}}-\nabla ^{2}+{\frac {1}{\kappa ^{2}}}{\frac {\partial }{\partial t}}+\mu ^{2}\right]u({\boldsymbol {x}},t)=0}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/0da8ead4ad23c53319f435bf089c20d087bdfef6)
- という形式で表現される場合が多い。このような場合でも

- という変換にて、

- となり、上記の形式に帰着される。
伝送線路などの分布定数回路において、位置x、時刻t における電圧をV(x, t )、電流をI(x, t )とすると以下を満たす。


ここで、L は伝送線路のインダクタンス、R は伝送線路の抵抗、C は伝送線路の容量、G は伝送線路の漏洩コンダクタンスである。狭義の意味では、電信方程式は分布定数回路における、この連立微分方程式そのものを指すことが多い。
上式から互いの変数を消去すれば、


を得る。
電気伝導率σ、誘電率ε、透磁率μの導体中において、電場E(x,t )と磁場H(x,t )は、次の形の電信方程式を満たす。


減衰ある弦の振動において、位置x と時刻t における弦の変位をu (x, t )とすると、u (x, t )は

で与えられる電信方程式を満たす。ここで、T は張力、ρは弦の線密度、κは減衰の効果を表す比例係数である。
場の量子論において、クライン-ゴルドン場φ(x,t )の満たすクライン-ゴルドン方程式は、電信方程式と等価である以下の形で与えられる。
![{\displaystyle \left[{\frac {1}{c^{2}}}{\frac {\partial ^{2}}{\partial t^{2}}}-\nabla ^{2}+{\biggl (}{\frac {mc}{\hbar }}{\biggr )}^{2}\right]\phi (\mathbf {x} ,t)=0}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/79e1bc48d77466ab3264eef96df47abed8fc52c8)
ここでc は光速度、m はクライン-ゴルドン場の粒子の質量である。
- R. Courant, D. Hilbert, Methoden Der Mathematischen Physik , R. クーラン, D. ヒルベルト(著)、丸山滋弥、斎藤利弥(翻訳)『数理物理学の方法』東京図書