(225088) 2007 OR10

(和名未詳)
(225088) Gonggong 🝽
Gonggongとその衛星
Gonggongとその衛星
仮符号・別名 2007 OR10[1]
見かけの等級 (mv) 21.34[2]
分類 太陽系外縁天体[1]
軌道の種類 共鳴外縁天体 (3:10)
散乱円盤天体[3]
軌道要素と性質
元期:TDB 2460200.5 (2023年9月13.0日)[1]
軌道長半径 (a) 067.19397573288882 au[1]
近日点距離 (q) 033.69534966125395 au[1]
遠日点距離 (Q) 100.6926018045237 au[1]
離心率 (e) 0.4985361515859613[1]
公転周期 (P) 201184.2295265683 日[1]
(550.8124011678804 年[1])
平均軌道速度 0.001789404670769478 度/日[1]
軌道傾斜角 (i) 030.67888021843377 度[1]
近日点引数 (ω) 207.0883734006217 度[1]
昇交点黄経 (Ω) 336.8531785544021 度[1]
平均近点角 (M) 109.5619496658643 度[1]
前回近日点通過 JED 2398972.343252901177[1]
(1856年1月23日)[1]
次回近日点通過 JED 2599261.4857096
(2404年6月7日)
物理的性質
直径 1535+75
−225
 km
[4]
スペクトル分類 [5]
絶対等級 (H) 1.86[1]
アルベド(反射能) 0.185+0.076-0.052[6]
0.18[5]
表面温度 26 から 46 K[7]
(-247 から -227 ℃)
発見
発見日 2007年7月17日[1]
発見者 M. E. Schwamb
マイケル・ブラウン
デイヴィッド・ラビノウィッツ[1]
他のカタログでの名称
225088[1][8]
2007 OR10[1]
Template (ノート 解説) ■Project

(225088) 2007 OR10[1]とは、散乱円盤天体に属する小惑星の1つである[3]。名称はGonggong (共工)で、2022年現在公式資料におけるカナ表記は不明。2007年の発見から2020年の命名まで、固有名が付いていない太陽系の天体としては最も大きかった。

軌道の性質[編集]

Gonggongの軌道(黄、OR10)
海王星との3:10の軌道共鳴

Gonggongは、軌道長半径がほぼ100億km (66.95au) の軌道を持ち、離心率0.50というかなりゆがんだ楕円軌道を持つ[1]。このため、遠日点距離は約150億km (100.56au) にも達する[1]。公転には実に547.8年もかかる[1]。前回の近日点通過は1856年8月1日[1]のことであり、次回の通過は2404年6月7日になると算定されている。この公転周期は、海王星と3:10の軌道共鳴をする共鳴外縁天体となっている[8]

物理的性質[編集]

直径[編集]

地球月カロンカロンニクスニクスケルベロスケルベロスステュクスステュクスヒドラヒドラ冥王星冥王星ディスノミアディスノミアエリスエリスナマカナマカヒイアカヒイアカハウメアハウメアマケマケマケマケMK2MK2S/(225088) 1S/(225088) 1GonggongGonggongウェイウォットウェイウォットクワオアークワオアーセドナセドナヴァンスヴァンスオルクスオルクスActaeaActaeaサラキアサラキア2002 MS42002 MS4ファイル:10 Largest Trans-Neptunian objects (TNOS).png
冥王星エリスマケマケハウメアGonggongセドナクワオアーオルクス2002 MS4サラキアの大きさの比較

Gonggongは、視等級が21.34等級[2]の地球から極めて遠くにある天体である。標準等級(小惑星としての絶対等級)としては2.0等級[1]である。アルベドは0.18程度[5][6]と推定されており、そこから直径は1000kmから1500km[5][6]と見積もられていたが、後にハーシェル宇宙天文台ケプラーの観測から1535kmという値が導き出された[9][10]。この大きさは準惑星とされる要件である「自分自身の質量によって静水圧平衡形状になっている」値であることから、Gonggongは準惑星候補天体である。この直径は冥王星衛星であるカロンより大きく、太陽系外縁天体の中で3番目[11](長軸を比較するならハウメアに次いで4番目)、太陽系の中でも20番目に大きな天体となる。

表面の様子[編集]

スペクトル観測の結果から、Gonggongの表面は水とメタンの氷に覆われていることが示唆されている[5]メタンが宇宙からの放射線によって重合した赤色の有機化合物へと変化した霜である可能性が挙げられている[5]。表面温度は最大で46K[7](-227℃) になると推定され、表面のメタンが蒸発し薄い大気を作る可能性がある[5]。Gonggongは、メタンの薄い大気を保持するだけの重力を持つ[5]。逆に、冥王星で見られるような窒素一酸化炭素は、Gonggongの重力では保持できず、数億年の時間を経るうちに蒸発してしまっていると考えられている[5]

衛星[編集]

2017年5月、ハッブル宇宙望遠鏡による観測から、衛星の存在が確認された[12][13]。衛星の直径は240kmから400km程度と見積もられている[12][13]。約45時間というGonggongの自転周期は、24時間未満の周期を持つものが多い太陽系外縁天体の中では特に遅いものであり、衛星の潮汐効果による影響が示唆されていた[12][13]。ただし、今回の観測では衛星の軌道は精査されておらず、本当に衛星の影響によるものか否かは定かでない[12][13]

名称[編集]

Meg Schwamb ら発見者チームの提案した名称Gonggongが、2020年2月5日、国際天文学連合小天体命名委員会により承認された[14]

発見者の1人マイケル・ブラウンは当初、Gonggong(まだ2007 OR10と呼ばれていた)のあだ名として「白雪姫」(Snow White) という名称で呼んだ[15]。これは当初Gonggongがかなり大きな氷の天体と思われていたことに由来する。しかし実際には、Gonggongの色は白ではなく赤みをおびている(赤みをおびた太陽系外縁天体は珍しくないが、Gonggongは特に赤い)ことから、不適切な名称として取り下げられている。しかし、Gonggongは白雪姫にはなれないが、七人の小人 (dwarf) = 準惑星 (dwarf planet) になる可能性はある。

その後2019年に、発見者のMeg Schwamb、Mike Brown、David Rabinowitzは「Gonggong」、「Holle」、「Vili」という候補を提案し、4月9日6:00(PDT)から5月10日23:59(PDT)まで、特設サイトで投票を募った[16][17]。その結果、Gonggongが1位となり、彼らにより国際天文学連合に正式に提案された[18]

候補 地域[17] 由来(要約)[17] 得票率[18]
Gonggong 中国 赤い髪と蛇に似た尾をもつ水神、共工 46%
Vili 北欧 オーディン、ヴェーと共にユミルを倒したヴィリ 31%
Holle ヨーロッパ 多産・再生・女性をつかさどる冬の女神ホレ 23%

彼らは衛星の発見者ではないため、衛星の命名には関わっていない[18]が、衛星は、共工に仕え9つの頭を持つ毒蛇の怪物相柳からXiangliuと名づけられた[14]

Gonggongの命名後、太陽系で最大の無名の天体の地位をどの天体が得たかは、正確なサイズが不明な太陽系外縁天体が僅差で並ぶため明確ではないが、おそらく、直径934±47kmの(307261) 2002 MS4である[19][20]


出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 225088 (2007 OR10)”. JPL Small-Body Database Browser. ジェット推進研究所. 2016年5月閲覧。
  2. ^ a b (225088) 2007OR10 AstDyS-2
  3. ^ a b List Of Centaurs and Scattered-Disk Objects”. 小惑星センター. 2016年5月閲覧。
  4. ^ Pushing the Limits of K2:Observing Trans-Neptunian Objects S3K2: Solar System Studies with K2”. 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月13日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i Brown, M. E. et al. (2011). “THE SURFACE COMPOSITION OF LARGE KUIPER BELT OBJECT 2007 OR10”. The Astrophysical Journal 738 (2): L26. arXiv:1108.1418. Bibcode2011ApJ...738L..26B. doi:10.1088/2041-8205/738/2/L26. ISSN 2041-8205. 
  6. ^ a b c Santos-Sanz, P.; Lellouch, E.; Fornasier, S.; Kiss, C.; Pal, A.; Müller, T. G.; Vilenius, E.; Stansberry, J. et al. (2012). ““TNOs are Cool”: A survey of the trans-Neptunian region”. Astronomy & Astrophysics 541: A92. arXiv:1202.1481. Bibcode2012A&A...541A..92S. doi:10.1051/0004-6361/201118541. ISSN 0004-6361. 
  7. ^ a b Planet Equilibrium Temperature HEC: Calculators
  8. ^ a b Orbit Fit and Astrometric record for 225088 Southwest Research Institute Planetary Science Directorate
  9. ^ Pál, András et al. (2016). “Large Size and Slow Rotation of the Trans-Neptunian Object (225088) 2007 OR10 Discovered from Herschel and K2 Observations”. The Astronomical Journal 151 (5): 117. arXiv:1603.03090. Bibcode2016AJ....151..117P. doi:10.3847/0004-6256/151/5/117. ISSN 1538-3881. 
  10. ^ 無名の太陽系天体としては最大、太陽系外縁天体2007 OR10”. AstroArts (2016年5月17日). 2017年5月22日閲覧。
  11. ^ 塚本直樹. “新発見! 冥王星やErisに次ぐ「大型準惑星」が太陽系に潜んでいた”. sorae 宇宙へのポータルサイト. 2021年12月17日閲覧。
  12. ^ a b c d Kiss, Csaba et al. (2017). “Discovery of a Satellite of the Large Trans-Neptunian Object (225088) 2007 OR10”. The Astrophysical Journal 838 (1): L1. arXiv:1703.01407. Bibcode2017ApJ...838L...1K. doi:10.3847/2041-8213/aa6484. ISSN 2041-8213. 
  13. ^ a b c d 大型の太陽系外縁天体2007 OR10に衛星”. AstroArts (2017年5月22日). 2017年5月22日閲覧。
  14. ^ a b M.P.C. 121135”. Minor Planet Circular. Minor Planet Center (2020年2月5日). 2020年2月19日閲覧。
  15. ^ Astronomers Find Ice and Possibly Methane On Snow White, a Distant Dwarf Planet”. Science Daily (2011年8月22日). 2017年5月23日閲覧。
  16. ^ 松村武宏 (2019年4月10日). “候補は3つ。どれにする? 太陽系外縁天体の命名投票スタート!!”. sorae.jp. https://sorae.info/030201/2019_4_10_or10.html 2019年4月12日閲覧。 
  17. ^ a b c Meg Schwamb, Mike Brown and David Rabinowitz (2019年). “Help Name 2007 OR10”. https://2007or10.name/ 2019年9月18日閲覧。 
  18. ^ a b c Meg Schwamb (2019年5月29日). “The People Have Voted on 2007 OR10's Future Name!”. http://www.planetary.org/blogs/guest-blogs/2019/or10-vote-results.html 2019年10月2日閲覧。 
  19. ^ Wm. Robert Johnston. “List of Known Trans-Neptunian Objects”. 2020年2月22日閲覧。
  20. ^ Vilenius, E.; Kiss, C.; Müller, T.; Mommert, M.; Santos-Sanz, P.; Pál, A. et al. (April 2014). “"TNOs are Cool": A survey of the trans-Neptunian region. X. Analysis of classical Kuiper belt objects from Herschel and Spitzer observations”. Astronomy and Astrophysics 564: 18. arXiv:1403.6309v1. Bibcode2014A&A...564A..35V. doi:10.1051/0004-6361/201322416. https://arxiv.org/pdf/1403.6309v1.pdf 2019年12月31日閲覧。. 

関連項目[編集]


前の小惑星
(225087) 2007 LZ8
小惑星
(225088) 2007 OR10
次の小惑星
(225089) 2007 PG28