2018年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月2日に開幕した。アメリカンリーグの第49回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 49th American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、13日から18日にかけて計5試合が開催された。その結果、ボストン・レッドソックス(東地区)がヒューストン・アストロズ(西地区)を4勝1敗で下し、5年ぶり14回目のリーグ優勝および13回目のワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのは、前年の地区シリーズに次いで2年連続2度目。そのシリーズに敗れたレッドソックスは、アストロズのシーズンが終わらないうちから、同球団ベンチコーチだったアレックス・コーラを新監督に招聘した[注 1][3]。コーラは今シリーズで古巣との対決を制し、監督としてチームをワールドシリーズ進出へ導いた史上初のプエルトリコ出身者となった[4]。奇しくも今シリーズが決着した10月18日は、コーラ43歳の誕生日でもあった[5]。シリーズMVPには、第2戦と第4戦でいずれも逆転・決勝の一打を放つなど、5試合で打率.200・2本塁打・9打点・OPS 1.067を記録したレッドソックスのジャッキー・ブラッドリー・ジュニアが選出された。このあとレッドソックスは、ワールドシリーズでもナショナルリーグ王者ロサンゼルス・ドジャースを4勝1敗で下し、5年ぶり9回目の優勝を成し遂げた。
今シリーズの冠スポンサーは、Google開発のバーチャルアシスタント "Google アシスタント" が務める[6]。したがって大会名はアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ presented by the Google アシスタント(英語: American League Championship Series presented by the Google Assistant)となる。
両チームの2018年[編集]
10月8日にまずアストロズ(西地区優勝)が、そして9日にはレッドソックス(東地区優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
アストロズは前年のワールドシリーズを制したあと、主力野手の顔ぶれはほとんど変えず、先発ローテーションにはゲリット・コールを加えた。2018年は開幕から、ジャスティン・バーランダーやコールら5人で構成されたローテーションが安定した働きを見せる。前半戦で先発登板した投手が5人のみだったのはMLB全30球団中アストロズだけ、しかも先発投手の防御率・被打率・消化イニング数も全て1位だった[7]。これが原動力となって、前半戦終了時には64勝35敗で地区首位に立ち、2位シアトル・マリナーズを5.0ゲーム差離した。7月31日のトレード期限までには打線の補強をし損ねたが、救援投手陣にはロベルト・オスナとライアン・プレスリーを、捕手には好守のマーティン・マルドナードを獲得した[8]。後半戦に入るとマリナーズに代わってオークランド・アスレチックスが浮上し、6月24日時点で11.5に開いていたゲーム差が徐々に縮まって、8月18日には同率首位に並ぶ[9]。しかしアストロズは逆転を許さず、最後はアスレチックスに6.0ゲーム差をつけて103勝59敗で地区2連覇を果たした。平均得点4.92はリーグ5位、防御率3.11はリーグ最高。前年の強みだった打線はホセ・アルトゥーベらの故障離脱により得点力を落としたものの、この年は先発投手4人が個人防御率でリーグ15位以内に入り、救援防御率もリーグ1位と投手力が際立っていた[10]。地区シリーズではクリーブランド・インディアンスを3勝0敗で下した[11]。
レッドソックスは前年の地区シリーズでアストロズに敗れると、そのアストロズでベンチコーチを務めていたアレックス・コーラを新監督に招聘し[12]、本塁打数リーグ最少と長打力不足の打線にJ.D.マルティネスを加えた。しかしメディアの予想では、ニューヨーク・ヤンキースよりも下とする声が大多数を占めていた[13]。こうしたなかでレッドソックスは、開幕戦で敗れたあと9連勝→1敗→8連勝で最初の19試合を17勝2敗とし、1920年のライブボール時代突入後5例目の高勝率でシーズンを始める[14]。その後も勝利を積み重ねて地区優勝争いを優位に進め、前半戦終了時には68勝30敗として、2位ヤンキースに4.5ゲーム差をつけた。シーズン途中のトレードでスティーブ・ピアースやネイサン・イオバルディ、イアン・キンズラーを補強すると、8月2日からのヤンキースとの直接対決4連戦では初戦でピアースが3本塁打、第3戦でイオバルディが8回無失点の好投など新戦力の活躍もあって4連勝した[15]。これでゲーム差を9.5まで広げてからは独走状態となって、最終的には108勝54敗で地区優勝のみならず30球団最高勝率、さらには球団118年の歴史上最高勝率も達成した。平均得点5.41はリーグ最高、防御率3.75はリーグ3位。マルティネスやムーキー・ベッツら中心選手の活躍に加えて、首脳陣と選手の間の雰囲気が前年から一転して良くなったことも、好成績の要因として挙げられる[16]。地区シリーズではヤンキースを3勝1敗で下した[17]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、レッドソックスがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、アストロズが4勝3敗と勝ち越していた[18]。
ロースター[編集]
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
アストロズは地区シリーズのロースターから、投手をひとり増やすかたちで2選手を入れ替えた。外れたのは外野手のマイルズ・ストローと投手のウィル・ハリスで、加わったのはともに投手のヘクター・ロンドンとジョー・スミスである。チームは今シリーズへ向けて、投手を増やす方針を予め明かしていた[19]。ストローは地区シリーズで第1戦・第2戦の2試合に代走として出場していたが、代走要員はジェイク・マリスニックやトニー・ケンプで賄えることから、今シリーズのロースターからは漏れた[20]。投手ではハリスやロンドンのほか、ジョシュ・ジェームズらが当落線上にいた[19]。この年のアストロズは球速95mph(約152.9km/h)以上の速球でストライクゾーン高めを突く投手を多く揃えており、今シリーズからロースター入りのロンドンや地区シリーズで登板機会なしのジェームズもそうした特徴に合致する[21]。そして残り1枠には対戦相手の打線との相性を考慮し、地区シリーズではカーブやカッターを持ち味とするハリスを、リーグ優勝決定戦では右サイドスローのスミスを、それぞれロースター入りさせた[20]。地区シリーズでのハリスの登板機会は第3戦、9点リードの9回裏に登板して1.0イニング1失点で試合を締めたのみだったが、ロースター入れ替えの判断にこの成績は影響していないと監督のA.J.ヒンチは述べている[22]。これに対してレッドソックスのロースターは、地区シリーズ第1戦終了後に投手のスティーブン・ライトが怪我のためヒース・ヘンブリーと入れ替わったところから、今シリーズでも変更がない[23]。
アストロズの内野手アレックス・ブレグマンとレッドソックスの捕手ブレイク・スワイハートは、ともにニューメキシコ州アルバカーキ育ちで、ティーンエイジャーの頃からお互いを知る仲だった。2011年春、当時高校生だったスワイハートをレッドソックスのスカウトが視察した際に、スワイハートの練習相手をブレグマンが務め、これがきっかけでレッドソックスはブレグマンへの関心を高めた[24]。スワイハートは同年のドラフト1巡目・全体26位指名を受けてレッドソックスに入団、これに対しブレグマンは翌2012年のドラフト29巡目・全体901位でレッドソックスから指名されたがプロ入りせず、ルイジアナ州立大学へ進学した。のちにブレグマンはアストロズへ入団し、今シリーズではともにメジャーリーガーとして相まみえることとなった。9月にアストロズがマサチューセッツ州ボストンへ遠征した際にふたりは会食したが、今シリーズでは決着するまでそのような機会を持つつもりはないという[19]。
開幕前の予想[編集]
CBSスポーツが自社の記者6人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、アストロズ勝利予想が5人に対しレッドソックス勝利予想がひとりという結果となった[25]。『スポーツ・イラストレイテッド』も同様の企画を記者6人で実施し、CBSスポーツと同じくアストロズ支持が5人、レッドソックス支持がひとりとなった[26]。
試合結果[編集]
2018年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月13日に開幕し、途中に移動日を挟んで6日間で5試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 | 試合 | ビジター球団(先攻) | スコア | ホーム球団(後攻) | 開催球場 |
10月13日(土) | 第1戦 | ヒューストン・アストロズ | 7-2 | ボストン・レッドソックス | フェンウェイ・パーク | |
10月14日(日) | 第2戦 | ヒューストン・アストロズ | 5-7 | ボストン・レッドソックス |
10月15日(月) | | 移動日 | |
10月16日(火) | 第3戦 | ボストン・レッドソックス | 8-2 | ヒューストン・アストロズ | ミニッツメイド・パーク |
10月17日(水) | 第4戦 | ボストン・レッドソックス | 8-6 | ヒューストン・アストロズ |
10月18日(木) | 第5戦 | ボストン・レッドソックス | 4-1 | ヒューストン・アストロズ |
優勝:ボストン・レッドソックス(4勝1敗 / 5年ぶり14度目) |
第1戦 10月13日[編集]
第2戦 10月14日[編集]
第3戦 10月16日[編集]
第4戦 10月17日[編集]
第5戦 10月18日[編集]
- ^ "Umpires announced for 2018 League Championship Series," MLB.com, October 12, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Ian Browne, "Sox finalize 3-year deal with Cora to manage," MLB.com, October 22, 2017. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Reuters Staff, "Red Sox manager's first-year success goes beyond the diamond," Reuters, October 23, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Mark Feinsand, "Cora's birthday party is one for the ages / Red Sox rookie skipper celebrates with trip to World Series," MLB.com, October 19, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ "Google teams up with MLB to sponsor 2018 ALCS and NLCS," MLB.com, October 11, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Tyler Kepner, "If the Astros Stop Underachieving, They Could Be Terrifying," The New York Times, July 21, 2018. 2022年9月27日閲覧。
- ^ Brian McTaggart, "Key moves prepare Astros for postseason run / Houston adds depth to bullpen, catcher prior to non-waiver Trade Deadline," MLB.com, August 1, 2018. 2022年9月27日閲覧。
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- ^ 宇根夏樹 「30球団通信簿 全選手最終成績+編成トップの通信簿 ヒューストン・アストロズ 黄金期到来を感じさせる地区2連覇」 『隔月刊スラッガー』2018年12月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2018年、雑誌15509-12、68頁。
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- ^ 出野哲也 「仁義なき戦い再び THERE WILL BE BLOOD ヤンキース×レッドソックス」 『隔月刊スラッガー』2018年5月号、日本スポーツ企画出版社、2018年、雑誌15509-05、20-23頁。
- ^ David Adler, "10 eye-popping facts from Red Sox's historic start," MLB.com, April 21, 2018. 2022年9月27日閲覧。
- ^ Andrew Mahoney, "Here’s how the newest Red Sox contributed to the sweep of the Yankees," The Boston Globe, August 7, 2018. 2022年9月27日閲覧。
- ^ 久保田市郎(SLUGGER) 「30球団通信簿 全選手最終成績+編成トップの通信簿 ボストン・レッドソックス 主力がきっちり仕事をして球団新の108勝」 『隔月刊スラッガー』2018年12月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2018年、雑誌15509-12、59頁。
- ^ Associated Press, "Red Sox hold off Yanks in Game 4, face Astros in ALCS," ESPN.com, October 10, 2018. 2022年9月27日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2022年4月21日閲覧。
- ^ a b c Brian McTaggart, "Hinch will wait to reveal ALCS roster / Astros to add pitcher, remove position player; two 'pen spots up for grabs," MLB.com, October 12, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ a b Chandler Rome, "Astros set 25-man ALCS roster against Red Sox," Chron, October 12, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Mike Axisa, "Red Sox vs. Astros ALCS: Why Boston may be uniquely qualified to handle Houston's pitching staff," CBSSports.com, October 13, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Brian McTaggart, "Astros set ALCS roster, opt for 12th pitcher / Hinch adds Rondon, Smith for 8-man bullpen against Sox," MLB.com, October 13, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Ian Browne, "Sox announce ALCS roster with Moreland on it / Boston sticks with 11-man staff for best-of-seven series vs. Houston," MLB.com, October 13, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Rob Bradford, WEEI 93.7, "Bradford: How Alex Bregman almost became a Red Sox," WEEI 93.7 FM, October 12, 2018. 2022年4月21日閲覧。
- ^ Dayn Perry, "Red Sox vs. Astros prediction, preview: MLB playoffs schedule, bracket, live stream, TV, and things to know," CBSSports.com, October 13, 2018. 2022年9月27日閲覧。
- ^ SI.com Staff, "NLCS, ALCS Predictions: Which Teams Are Headed to the World Series?," Sports Illustrated, October 12, 2018. 2022年9月27日閲覧。
外部リンク[編集]
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