Open Shortest Path First

Open Shortest Path First (オープン・ショーテスト・パス・ファースト、略称:OSPF) は、小規模から大規模のネットワーク向けのリンクステート型ルーティングプロトコルである。

概要

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自律システム (AS) 内のルーティングを行うInterior Gateway Protocol(IGP)の通信プロトコルである。 (対して、自律システム (AS) 間のルーティングを行う通信プロトコルBGP4などのEGPである)

RIPにおける制約を解消するためにIETFにおいて提唱され、スタティック・ルーティングやRIPでは実現できなかった冗長経路構成を容易に実現できる。

OSPFは、リンクステート型(LSA)のルーティングを行うリンクステート型ルーティングプロトコル(リンク状態型ルーティング)である。 各ルータは隣接するルータとリンクしてアドバタイズ(周囲に通知)することでネットワーク・トポロジーデータベースを構築し、ダイクストラのアルゴリズムで最短経路ツリーを「コスト」という距離(メトリック)の単位で計算してルーティング・テーブルを作成する。

ネットワーク規模の増大に対処するため、OSPFはネットワークを複数のエリアに分割することを可能としており、フラッディングや経路計算をエリアごとに効率よく実現できる。 エリア間の通信はエリア境界ルータ (area border router; ABR) を介して行われ、エリア間のルーティングは特定のバックボーン・エリアが中継することで実現される。 また、マルチアクセス[注 1]セグメントにあっては、ルーティング情報更新の負荷を軽減するため、セグメントごとに代表ルータ (designated router; DR) とバックアップ代表ルータ (backup designated router; BDR) が選出されハブとして働く。

OSPFv2はIPv4、OSPFv3はIPv6にそれぞれ対応している。[1] OSPFv3は、これを定めているRFC 5340の正式なタイトルがOSPF for IPv6となっていることから分かるようにIPv6専用であり、IPv4向けのOSPFv2を置き換えるものではない。

OSPFのパケットはIPプロトコル89にて送受信される。パケットの宛先はセグメントの種類、セグメントにおけるマルチキャストのサポート、パケットの内容により以下のように選ばれる。宛先がマルチキャストアドレスとなった場合、そのパケットはルータにてフォワードしてはならず、TTLは1としなければならない。

宛先ルータのユニキャストアドレス
マルチアクセスセグメントにおける、マルチキャストとする必要がないパケット全て。
マルチアクセスではあるがマルチキャストをサポートしていないセグメントの場合、Helloパケットはルータに予め設定した、DRになり得るルータへユニキャストで送信する。
バーチャルリンクにおけるHelloパケットは、リンク先のルータへ1ホップでは到達しないのでユニキャストにて送信する。
マルチキャストアドレス (AllSPFRouters)
全てのOSPFルータが受信するマルチキャストアドレス。
マルチキャストをサポートしているマルチアクセスセグメントにて、OSPFルータの発見や生存確認のために送信するHelloパケットはこの宛先へ送信する。
ポイント・ツー・ポイントセグメントにあっては、全てのOSPFパケットをこの宛先へ送信する。これにより、unnumberedインタフェース上でOSPFを運用することができる。
マルチキャストアドレス (AllDRouters)
DRおよびBDRに選ばれたOSPFルータが受信するマルチキャストアドレス。
あるセグメントにてDRでもBDRでもないルータがリンクステートの更新を知った場合、それをそのセグメントのAllDRoutersへ送信するとDRがこれを改めてAllSPFRoutersへ送信することにより全てのルータへリンクステートの更新を知らせる。

主なRFC

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  • RFC 1131 (1989年) - 最初の標準化提案
  • RFC 1584 (1994年) - OSPF マルチキャスト拡張 (MOSPF)
  • RFC 2328 (1998年) - OSPFv2、STD 54 に
  • RFC 3101 (2003年) - OSPF NSSA オプション
  • RFC 3630 (2003年) - OSPF-TE
  • RFC 5340 (2008年) - OSPFv3、IPv6対応(RFC 2740(1999年)のアップデート)

その他多くの関連RFCがある。

出典

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  1. ^ OSPFとは”. www.infraexpert.com. 2019年11月5日閲覧。

脚注

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  1. ^ OSPFにおけるマルチアクセスは「ポイント・ツー・ポイントではない」の意。

関連項目

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外部リンク

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