Panacom

Panacom(パナコム)は、松下電器(現・パナソニック)が販売していたビジネス向けパーソナルコンピュータ(パソコン)のシリーズ名である。1987年発売のMシリーズは富士通のパソコン「FMRシリーズ」の互換機。1993年に発売されたVシリーズよりPC/AT互換機になった。

歴史[編集]

同社は既にオフィス向けパソコンのオペレートシリーズを販売していたが、これはデファクトスタンダードでないCPUを採用したクローズド・アーキテクチャのパソコンであった[1]1982年松下通信工業から発売されたmy brain 3000は、CPUにIntel 8088、OSにMS-DOSを採用した一般市場向けのパソコンであったが、同時期に登場したPC-9801を始めとする競合機種の影に埋もれて商業的には失敗。シリーズとして続くことはなかった[2]

1987年、富士通FMRシリーズ互換のPanacomMシリーズとしてデスクトップPC「M500」「M700」を発売。富士通からFMRシリーズのBIOSやインターフェイスなどの技術情報の開示を受け、ハードウェアは独自に開発した[3]。ソフトウェアと周辺機器はFMRシリーズのものを共用できた。1988年にはラップトップパソコン「M353」を発売。同機はFMRシリーズのラップトップ化を検討していた富士通にOEM供給され、「FMR-50LT」として発売された[4]。また、1991年には逆に富士通より「FMR CARD」をOEM調達し、「PRONOTE M10N」として発売した[5]

1993年、同社初の国内向けPC/AT互換機(DOS/V機)「Panacom V21D」を発売[2]。デスクトップPCはVシリーズ、ノートPCはPRONOTEシリーズとして展開された。

1996年、モバイル用途に特化したノートPC「PRONOTE mini」シリーズをLet'snoteブランドに改めると同時に、ターゲットをモバイル市場に絞り込む戦略に変更[2]。Panacomブランドは終息した。

シリーズ[編集]

PanacomMシリーズ[編集]

FMR互換機。

Panacom Mシリーズ ハードウェア仕様一覧[6]
機種 M750 HF / HE M600 HE / FD M550 HE / FD M800 M700 HD / FD M500 HDA / FDA M530 HE / HD / FD M353 HE / HD / FD M500L HD / FD
CPU 80386 20MHz 80386 20MHz 80386SX 16MHz 80386 20MHz 80286 12MHz 80286 8MHz 80286 8MHz 80286 8MHz 80286 8MHz
メインメモリ 2MB 2MB 1MB 2MB 1MB 1MB 1MB 1MB 1MB
グラフィックメモリ 512kB 256kB 256kB 512kB 512kB 256kB 256kB 256kB 256kB
FDD 3.5インチ2基 5インチ2基 3.5インチ2基 5インチ2基 5インチ2基 5インチ2基 3.5インチ2基 3.5インチ1基 3.5インチ1基
HDD 85MB(HF)、40MB(HE) 40MB(HE) 40MB(HE) 40MB 20HB(HD) 20MB(HDA) 40MB(HE)、20MB(HD) 40MB(HE)、20MB(HD) 20HB(HD)
拡張スロット 汎用3、メモリ用2 汎用3、メモリ用2 汎用3、メモリ用1 汎用3、メモリ用1 汎用3、メモリ用1 汎用3、メモリ用1 汎用3、メモリ用1 汎用2 汎用2
外形寸法 420(W) × 400(D) × 125(H)mm 420(W) × 400(D) × 125(H)mm 330(W) × 358(D) × 125(H)mm 420(W) × 390(D) × 125(H)mm 420(W) × 390(D) × 125(H)mm 420(W) × 390(D) × 125(H)mm 330(W) × 358(D) × 125(H)mm 310(W) × 370(D) × 98(H)mm 310(W) × 370(D) × 98(H)mm
重量 本体11.6〜12.4kg 本体8.2〜9.2kg 本体14kg 本体13〜14kg 本体13〜14kg 本体8.2〜9.2kg 本体8kg 本体6.4〜6.7kg

PanacomVシリーズ[編集]

デスクトップ型PC/AT互換機。

Panacom PRONOTEシリーズ[編集]

ノート型PC/AT互換機。

Panacom PC Serverシリーズ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 小林紀興 『松下電器の果し状 : IBM・日本電気のパソコン独占を突きくずせ』 光文社、1989年、pp.145-146。
  2. ^ a b c 「パソコン―事業基盤確立への長い道のり」『松下テクニカルジャーナル』Vol.51 No.2、松下電器産業、2005年、pp.42-49。
  3. ^ 「松下、16ビットで富士通と連携―11月に互換パソコン発売」『日本経済新聞』 1987年9月8日朝刊、8面。
  4. ^ 「富士通、松下と提携強化―ラップトップパソコン、OEM調達」『日本経済新聞』 1988年8月26日朝刊、8面。
  5. ^ 「松下、富士通から16ビットノート型機調達―PCメモリーカード採用」『日経産業新聞』 1991年8月16日、5面。
  6. ^ マイコンBASICマガジン 1990年10月号付録「パソコン・ガイドブック 1990年秋号」掲載のもの。

関連項目[編集]