阿曽温泉

阿曽温泉
日帰り入浴施設「阿曽温泉」 地図
温泉情報
所在地 三重県度会郡大紀町阿曽429
座標 北緯34度20分19.0秒 東経136度24分32.6秒 / 北緯34.338611度 東経136.409056度 / 34.338611; 136.409056座標: 北緯34度20分19.0秒 東経136度24分32.6秒 / 北緯34.338611度 東経136.409056度 / 34.338611; 136.409056
交通 JR紀勢本線阿曽駅から徒歩15分
泉質二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-塩化物炭酸水素塩温泉
泉温(摂氏 27.1 °C
湧出量 80 L/分
pH 6.6
液性の分類 中性
浸透圧の分類 等張性
温泉施設数 1
出典 温泉分析書[1]
外部リンク 阿曽湯の里
テンプレートを表示

阿曽温泉(あそおんせん)は、三重県度会郡大紀町阿曽にある温泉廃校となった小学校校舎を再利用した温泉施設が特徴で[2][3][4][5]、一帯は阿曽湯の里(あそゆのさと)として整備されている[6][7]

泉質[編集]

三重県観光保全事業団の「温泉分析書」によると、泉質は「含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-塩化物炭酸水素塩温泉」であり、中性・等張性の湯である[1]。空気に触れると酸化して赤茶けた温泉水になる[8]。湯は「まろやか」で[9]、肌がすべすべになるという[2]効能冷え症、慢性皮膚炎、慢性婦人病[2]神経痛、慢性消化器病、疲労回復などである[10]

源泉[編集]

阿曽温泉の源泉は入浴施設のある阿曽湯の里ではなく、宮川支流の大内山川沿いにあり[2]、施設まで引湯している[2][4]。また阿曽温泉の泉源は1か所ではなく複数あることから、阿曽温泉群とも呼ばれ、阿曽集落北部の紀勢本線沿いには3つの泉源が集中している[11]。温泉水により、阿曽には大規模な石灰華(トラバーチン)が形成されており、大紀町の天然記念物に指定されている[12]

歴史[編集]

江戸時代にはすでに発見されていたと伝えられる[2][13][8]。その後、1960年代から1970年代にかけて1軒の温泉宿(阿曽温泉ホテル)があったが、廃業した[2]。阿曽温泉ホテルの別棟(山賊亭)で野菜などを炭火で串焼きにする「山賊焼」を名物としていた[14]

阿曽温泉ホテルは、プール・パーゴルフ場・打ちっぱなしを備えたホテルで、渡鹿野島にあった朝潮ホテルの系列であった。

1990年代には阿曽に隣接する滝原に「阿曽温泉大滝峡グリーンヴィレッジ」という施設があったが、これも廃業した[15]。温泉宿が長続きしなかったのは、温泉水が酸化しやすく、赤茶色になってしまうからだと役場職員は考えていた[8]2001年(平成13年)時点では源泉に飛散防止措置を施して利用できない状態であったが、源泉の所有者と当時の大宮町当局との間で使用権契約が取り交わされた[8]

一方、2003年(平成15年)3月に阿曽小学校が滝原小学校と統合して廃校になる[16]と、住民の間で使われなくなった校舎を活用しようという動きが起きた[2][10]。大宮町当局は住民の意向を受け、旧阿曽小学校の校舎を浴室・休憩室・食堂として整備し、2005年(平成17年)7月に町営の温泉施設「阿曽温泉」として開業した[2]。食堂は地元の女性が運営し、調理器具を各自持ち寄って経営に取り掛かった[10]。開業当時、紀勢自動車道は未開通であり、国道42号名古屋大阪京都方面から尾鷲方面へ向かう釣り客が道中に立ち寄る温泉として受け入れられた[2]。1日の平均来湯者数は120人であった[8]

2006年(平成18年)10月には全県的な飲酒運転撲滅を目指す動きの中で、売店・食堂での酒類(缶ビール)販売を中止することになった[17][18]2008年(平成20年)からは、大紀町の人的資源や地域資源を活用した体験事業を開始した[13]

2020年(令和2年)3月3日よりコロナウイルス感染症の流行に伴い、4月30日までの予定で臨時休業を継続している[19]

2021年(令和3年)4月29日から5月9日にかけても臨時休業が続いている。[20]

阿曽湯の里[編集]

阿曽湯の里は日帰り入浴施設「阿曽温泉」を核とした「ふれあい総合施設」と位置付けられている[6][7]。入浴施設のほかに、阿曽温泉あすなろ会が運営する「あすなろ食堂」、農産物直売所「四季の店 旬彩」、交流体験室、エコミュージアムセンター「宮川流域交流館たいき」で構成する[6]。四季の店 旬彩は旧講堂を改修したもので[21]祝日のみ営業し、壁には阿曽小学校の校歌を掲げている[13]

町民以外では、釣り客や登山客の来湯が多いため、登山マップを用意している[21]

入浴施設[編集]

阿曽温泉の建物は、2003年(平成15年)に廃校となった大宮町立阿曽小学校[16]木造校舎[4]を再利用している[2]。この校舎は阿曽温泉開業時点ですでに築50年を超えるものであった[8]。中央玄関から入ってすぐのところに受付があり、左側に入浴施設、右側に食堂がある[7]。入浴施設は大紀町が運営し、阿曽小学校のOB・OGが運営を支えている[10]

廊下や手洗い場は現役当時のまま利用し[5]、食堂と休憩室に黒板オルガンを残すなど、校舎であったことを偲ぶことができるようになっている[3]。廊下は町民の作品を展示するスペースとして利用し、学校図書館として使われていた教室は、そのまま地域の図書室として活用している[5]。浴室は男女それぞれ1つずつであり[13]、各室15人ほど収容でき[2]、洗い場は6席ある[7]

6年生の教室として使われていた[7]食堂は、地域の女性で結成された阿曽温泉あすなろ会が[6]、地域の食材を使った味ご飯(炊き込みご飯[7][10][13]伊勢うどんセットなどの料理を提供する[5]。食堂のメニューは黒板に貼られている[5]

2000年代以降、日本各地で廃校が増加していることから、廃校の有効活用事例として紹介されることがある[3][4]

交通[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 三重県観光保全事業団 (2010年6月29日). “温泉分析書”. 大紀町. 2020年4月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 中津川健男"湯ったり 大紀町営「阿曽温泉」 懐かしい校舎に体癒やされ"読売新聞2006年5月25日付朝刊、愛知版32ページ
  3. ^ a b c 松永佳伸「空き校舎、自治体困惑 企業誘致・再利用の条件厳しく」朝日新聞2009年5月14日付朝刊、三重版21ページ
  4. ^ a b c d 斎藤健一郎「学舎、生まれ変わって 足助の自然 ユースホステル “第二の人生” ユニーク施設に」朝日新聞2016年4月5日付朝刊、名古屋版24ページ
  5. ^ a b c d e 阿曽温泉”. 里の物語. 一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構. 2020年4月19日閲覧。
  6. ^ a b c d ふれあい総合施設 阿曽湯の里”. 阿曽湯の里. 2020年4月19日閲覧。
  7. ^ a b c d e f 食べて・見て・入浴して・泊まることも? 三重の廃校が地域の魅力の場に変身!後編”. つづきは三重で. 三重県庁 (2019年8月). 2020年4月19日閲覧。
  8. ^ a b c d e f 内田敬子 (2005年10月26日). ““学び舎”が温泉に転身 大紀町の旧阿曽小 憩いの場として好評 地元有志が“もてなし””. 東海経済新聞. 2020年4月19日閲覧。
  9. ^ a b c d 阿曽温泉”. 観光三重. 三重県観光連盟. 2020年4月19日閲覧。
  10. ^ a b c d e 三重テレビ放送 (2009年3月15日). “廃校した小学校が、天然温泉と地域交流施設に!『阿曽湯の里』”. ゲンキ3ネット. サルシカ. 2020年4月19日閲覧。
  11. ^ 植木 2015, p. 21.
  12. ^ 植木 2015, pp. 21–22.
  13. ^ a b c d e 阿曽温泉”. 三重の里いなか旅のススメ. 三重県農林水産部農山漁村づくり課農山漁村活性化班. 2020年4月19日閲覧。
  14. ^ 「三重・阿曽温泉の炭焼き料理 巨石の上で肉・野菜串刺し」日本経済新聞1990年2月27日付夕刊、大阪版Next関西29ページ
  15. ^ 阿曽温泉”. 心を癒す日本温泉ネットワーク. 2020年4月19日閲覧。
  16. ^ a b 「大宮小の船出飾る新校舎 滝原、阿曽小を統合し7日開校」読売新聞2003年4月5日付朝刊、三重版A 35ページ
  17. ^ 丸林康樹「酒類販売 津以外の市町直営3温泉でも、レストランや売店で 自販機はなし」毎日新聞2006年10月7日付朝刊、三重版18ページ
  18. ^ 「公的な施設での酒類販売 県内の市町、自粛広がる 飲酒運転撲滅」読売新聞2006年10月21日付朝刊、北勢版25ページ
  19. ^ 新型コロナウイルス感染症拡大防止にかかる臨時休業等(4月14日現在)のお知らせ”. 大紀町 (2020年4月14日). 2020年4月14日閲覧。
  20. ^ 阿曽湯の里 | 大紀町役場”. www.town.taiki.mie.jp. 2021年5月6日閲覧。
  21. ^ a b c d 廃校活用の「温泉」「工房」 三重県大紀町”. 中日新聞社 (2011年2月10日). 2020年4月19日閲覧。

参考文献[編集]

  • 植木岳雪「三重県中部,大紀町阿曽の石灰華に含まれる植物遺体のAMS 14C 年代」『地質調査研究報告』第66巻1・2号、産業技術総合研究所地質調査総合センター、2015年、21-24頁、NAID 130005118971 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]