1994年の日本競馬

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1994年の日本競馬(1994ねんのにほんけいば)では、1994年平成6年)の日本競馬界についてまとめる。馬齢は旧表記で統一する。

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概要[編集]

ナリタブライアンが牡馬クラシック三冠馬に[編集]

中央競馬ではナリタブライアンが史上5頭目、戦後4頭目の牡馬クラシック三冠馬となった[1]。同馬は三冠達成後に出走した有馬記念でも優勝し、年間GI4勝を達成した。前年の朝日杯3歳ステークスを制していた同馬は共同通信杯4歳ステークスから始動し、降雪の影響で一日順延となったがお構いなしの完勝[注 1]。続くスプリングステークスも楽勝して迎えた皐月賞では3馬身半差、1分59秒0のレコードタイムで圧勝。東京優駿では皐月賞に出走できなかったナムラコクオーエアダブリンヤシマソブリンと対決したが、5馬身差の圧勝で単勝オッズ1.2倍の圧倒的な支持に応えた。秋初戦の京都新聞杯[注 2]では単勝1.0倍の支持を受けながらスターマンの末脚に屈し、2着に敗れた。三冠のかかった菊花賞ではヤシマソブリンに7馬身差、前年に兄ビワハヤヒデが樹立したレコードを破る完勝で、いずれも圧勝しての三冠馬となった。故障して引退した兄ビワハヤヒデをはじめ、ジャパンカップ勝ち馬マーベラスクラウンウイニングチケット(引退)、ナリタタイシンといった古馬の強豪が軒並み不在の有馬記念でもヒシアマゾン以下に4馬身差の圧勝で締めくくり、この年の年度代表馬に選出された。

武豊が日本の騎手として初の海外G1競走優勝を達成[編集]

中央競馬所属の騎手武豊が、9月4日フランスムーラン・ド・ロンシャン賞においてスキーパラダイスに騎乗して優勝し、日本の騎手として初の海外G1競走を優勝した。同馬では、京王杯スプリングカップ安田記念アスタルテ賞(フランスG2)、ジャック・ル・マロワ賞(フランスG1)、クイーンエリザベス2世ステークスイギリスG1)、ブリーダーズカップ・マイルアメリカG1)にも騎乗し、京王杯スプリングカップでは優勝し、アスタルテ賞では2着に入線している。

また、ホワイトマズルにも騎乗して、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスでは僅差2着に入線。しかし、期待された凱旋門賞では6着に敗れる。さらに、凱旋門賞の後に行われたG2オペラ賞でエリンバード[注 3]に騎乗し、1位入線も5着に降着となる苦難も味わう。ホワイトマズルでは引き続きブリーダーズカップ・ターフも騎乗する予定であったが騎乗できず、ブリーダーズカップではマイルのスキーパラダイスとディスタフのエリンバードに騎乗した。

外国人騎手への短期免許の交付が始まる[編集]

この年から中央競馬の騎手免許制度が一部改正され、外国人騎手への臨時試験制度を整備し、短期免許が交付できるようになった[2]。開放初年度にはリサ・クロップアラン・ムンロオリビエ・ペリエの3名が取得し、なかでもムンロは府中牝馬ステークスを優勝した。

また6月15日には、地方競馬全国協会は当時日本での免許を持っていなかった道川満彦に短期免許を交付している[3]

ビワハヤヒデの活躍と引退[編集]

ナリタブライアンと共に中央競馬を盛り上げた立役者は、前年の年度代表馬であるナリタブライアンの半兄・ビワハヤヒデであった。年明け初戦の京都記念を圧勝し、天皇賞・春でも、前年の皐月賞で屈したナリタタイシンの末脚を寄せ付けず、さらに宝塚記念では2200mで初めて2分12秒を破る2分11秒2のレコードで5馬身差の圧勝。秋にはジャパンカップを回避するレースプランを組んで物議を醸したが、初戦のオールカマーでもライバル・ウイニングチケット以下に完勝し、ここまで15戦10勝、2着5回と極めて安定した成績を残す。しかし、天皇賞・秋ではネーハイシーザーの5着に敗れて初めて連(2着以内)を外し、競走中に屈腱炎を発症したため、そのまま引退。弟ナリタブライアンとの兄弟対決はかなわなかった。なお、ライバルのウイニングチケットもやはり天皇賞・秋の競走中に屈腱炎を発症し、引退した。

ヒシアマゾンの快進撃と4歳牝馬路線[編集]

前年の阪神3歳牝馬ステークス勝ち馬ヒシアマゾンは外国産馬でクラシックに出走できないため、春期は「裏街道」を驀進した。年明け初戦の京成杯[注 4]ではビコーペガサスに敗れて2着に終わったが、クイーンステークスクリスタルカップ[注 5]ニュージーランドトロフィーと3連勝。特にクリスタルカップは残り100mで4馬身あった差を追い込んで、逆に1馬身差をつける驚異の末脚を見せた。ヒシアマゾン不在のクラシックは、桜花賞オグリローマンが、優駿牝馬チョウカイキャロルが優勝した。 ヒシアマゾンは秋もクイーンステークスローズステークスと連勝し、迎えたエリザベス女王杯ではチョウカイキャロルとの叩き合いをハナ差制し、重賞6連勝で名実ともに4歳最強牝馬となった。さらに有馬記念ではナリタブライアンの2着に入線。

京都競馬場の改修[編集]

この年、京都競馬場はスタンド一部改修(後のグランドスワン)と馬場の改造工事を行い、例年の第1回~第4回の開催を阪神競馬場に振り替えた[1]。GI天皇賞・春も14年ぶりに阪神競馬場で開催された。阪神競馬場も例年の第1回・第4回の開催は中京競馬場に振り替え、さらに一部の中京競馬場の開催は小倉競馬場に振り替えられた。なお、改修中の京都競馬場でも場外発売は行われていた。改修が竣工した開催の第一週には菊花賞が行われ、ナリタブライアンが三冠を達成した。

できごと[編集]

1月 - 3月[編集]

4月 - 6月[編集]

7月 - 9月[編集]

10月 - 12月[編集]

その他[編集]

競走成績[編集]

中央競馬・平地GI[編集]

中央競馬・障害[編集]

地方競馬主要競走[編集]

表彰[編集]

JRA賞[編集]

  • 年度代表馬・最優秀4歳牡馬 ナリタブライアン(牡4・栗東
  • 最優秀3歳牡馬 フジキセキ
  • 最優秀3歳牝馬 ヤマニンパラダイス
  • 最優秀4歳牝馬 ヒシアマゾン
  • 最優秀5歳以上牡馬 ビワハヤヒデ
  • 最優秀5歳以上牝馬 ノースフライト
  • 最優秀短距離馬 サクラバクシンオー
  • 最優秀父内国産馬 ネーハイシーザー
  • 最優秀ダートホース フジノマッケンオー
  • 最優秀障害馬 ブロードマインド
  • 最優秀アラブ 該当馬無し
  • 最多勝利騎手・最高勝率騎手 武豊
  • 最多賞金獲得騎手 岡部幸雄

NARグランプリ[編集]

リーディング[編集]

リーディングジョッキー[編集]

分類 騎手の氏名 勝利数
中央競馬 武豊 134
地方競馬
ばんえい競走

リーディングトレーナー[編集]

分類 騎手の氏名 勝利数
中央競馬 松山康久 40
地方競馬
ばんえい競走

リーディングオーナー[編集]

順位 中央競馬 地方競馬
1 社台レースホース
2 山路秀則
3 平井豊光
4 さくらコマース
5 サラブレッドクラブ・ラフィアン
6 吉田照哉
7 阿部雅一郎
8 松本好雄
9 西山正行
10 松岡正雄

リーディングブリーダー[編集]

順位 中央競馬 地方競馬
1 社台ファーム
2 早田牧場新冠支場
3 西山牧場
4 下河辺牧場
5 シンボリ牧場
6 谷岡牧場
7 川上悦夫
8 大塚牧場
9 谷川牧場
10 白井牧場

リーディングサイアー[編集]

順位 中央競馬 地方競馬
1 トニービン パークリージェント
2 リアルシャダイ
3 ノーザンテースト
4 ブライアンズタイム
5 サクラユタカオー
6 シンボリルドルフ
7 トウショウボーイ
8 ブレイヴェストローマン
9 モガミ
10 リヴリア

リーディングブルードメアサイアー[編集]

順位 中央競馬
1 ノーザンテースト
2 テスコボーイ
3 トウショウボーイ
4 ノーザンダンサー
5 マルゼンスキー
6 アローエクスプレス
7 ファバージ
8 パーソロン
9 ハードツービート
10 シルバーシャーク

誕生[編集]

この年に生まれた競走馬は1997年のクラシック世代となる。

競走馬[編集]

人物[編集]

死去[編集]

競走馬[編集]

人物[編集]

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 競馬歴史新聞編集委員会『新版競馬歴史新聞』日本文芸社、2004年。ISBN 4-537-25205-7 
  • 一般社団法人 中央競馬振興会『日本近代競馬総合年表』中央競馬ピーアール・センター、2018年。 

注釈[編集]

  1. ^ 共同通信杯が順延となったため、兄ビワハヤヒデ(京都記念)との兄弟同日重賞制覇はならなかった。
  2. ^ 京都競馬場が改修中のため、阪神競馬場で開催された。
  3. ^ オークス馬エリンコートの母。
  4. ^ 当時は芝1600m
  5. ^ 芝1200mのGIII、2005年を最後に廃止された。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f 『総合年表』p.232
  2. ^ a b c d 『総合年表』p.230
  3. ^ a b c d e f g 『総合年表』p.231