KTM・RC16

基本情報
エンジン 1,000 cm3 4ストローク
最高出力 275hp
乾燥重量 157 kg
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RC16(アールシーじゅうろく)は、オーストリアのオートバイメーカーKTMが開発した競技用オートバイである。2017年よりロードレース世界選手権MotoGPクラスに参戦している。

概要[編集]

KTMのMotoGPクラスへの参戦は、2005年ケニー・ロバーツ率いるプロトンKRにV4エンジンを供給して以来(この時はシーズン途中に撤退)。車体も含めての、マニュファクチャラーとしては初参戦となる。5年計画でプロジェクトを進めており、2019年は4,000万ユーロ(約50億円)の予算を計上するという[1]

他社のMotoGPマシンはアルミニウム合金(もしくはカーボン)製のツインスパーフレームを使用しているが、KTMはスチールパイプで組んだトレリスフレームを選択している(2008年まではドゥカティ・デスモセディチも同形式だった)。サスペンションも定番のオーリンズ製ではなく、グループ企業のWP製のものを搭載している。KTMの首脳陣は市販車セールス上の共通点や、ダカールラリーなど他の分野で培ってきたアドバンテージを挙げて、鋼管トレリスフレームを使い続けると断言している[2][3]

元GPライダー青木宣篤は、KTMのマシンはフレームの特性上フロントに頼ることができず、リアをスライドさせながら向きを変えるようなコーナリングが要求される。ブラッド・ビンダーミゲル・オリベイラのようなKTM育ちのライダーはそういった走り方が身についている、と分析している[4]

沿革[編集]

2016年の最終戦バレンシアGPにて、開発ライダーのミカ・カリオワイルドカード枠でテスト参戦。2017年より「レッドブルKTMファクトリー・レーシング」としてワークス参戦を始める。

2017年はヤマハテック3チームからポル・エスパルガロブラッドリー・スミスが移籍して来てコンビを組み、ミカ・カリオも数戦スポット参戦した。決勝の最高成績はエスパルガロの9位2回。

2018年バレンシアGPにて、王者マルク・マルケスと争うポル・エスパルガロ

2018年の最終戦バレンシアGPは雨による赤旗中断を含むサバイバルレースとなり、エスパルガロは一度転倒しながらも順位を上げ、KTM初の3位表彰台を獲得した[5]

2019年はヤマハのサテライトとして活動してきたテック3チームが新たにKTMのサテライト「レッドブルKTMテック3」となり、2チーム4台体制で参戦する[6]。また、通算54勝(MotoGPクラス31勝)を挙げ、2018年限りで引退したダニ・ペドロサと開発ライダー契約を結んだ[7]。ワークスはスミスに代わりヨハン・ザルコが加入するが、成績不振のためシーズン途中に契約解除。第13戦サンマリノGPでエスパルガロが予選2位を獲得し、初めてフロントローに並んだ[8]

2020年はMoto2クラスランキング2位のブラッド・ビンダーが昇格してワークス入りする[9]。ビンダーは3戦目のチェコGPで優勝し、KTMはMotoGPクラス参戦4年目で初勝利を実現した。さらに、地元レッドブル・リンクで行われた第5戦スティリアGPでテック3のミゲル・オリベイラも優勝。オリベイラは最終戦ポルトガルGPでポール・トゥ・ウィンも達成した。エースのエスパルガロは優勝に手が届かなかったが、ポールポジション2回・表彰台5回を記録し、ランキング5位と健闘した。

2021年は前年の好成績によりコンセッション(優遇措置)を喪失し、他のメーカーと同条件で戦うことになる。レプソル・ホンダに移籍したエスパルガロに代わり、オリベイラがワークス入り。テック3にはベテランのダニロ・ペトルッチが加入した。

成績[編集]

シーズン チーム 車番 ライダー 出走回数 勝利数 表彰台数 PP FL ポイント 順位
2016年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 36 フィンランドの旗 ミカ・カリオ 1 0 NC
2017年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 36 フィンランドの旗 ミカ・カリオ 4 11 24th
38 イギリスの旗 ブラッドリー・スミス 17 29 21st
44 スペインの旗 ポル・エスパルガロ 18 55 17th
2018年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 36 フィンランドの旗 ミカ・カリオ 2 6 25th
38 イギリスの旗 ブラッドリー・スミス 18 38 18th
44 スペインの旗 ポル・エスパルガロ 15 1 51 14th
76 フランスの旗 ロリス・バズ 0 0 NC
2019年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 5 フランスの旗 ヨハン・ザルコ 13 27 18th
44 スペインの旗 ポル・エスパルガロ 18 100 11th
82 フィンランドの旗 ミカ・カリオ 6 7 26th
レッドブルKTMテック3 27 スペインの旗 イケル・レクオナ 1 0 NC
55 マラヤ連邦の旗 ハフィス・シャーリン 19 9 23rd
88 ポルトガルの旗 ミゲル・オリベイラ 16 33 17th
2020年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 33 南アフリカの旗 ブラッド・ビンダー 14 1 1 0 2 87 11th
44 スペインの旗 ポル・エスパルガロ 14 0 5 2 1 135 5th
レッドブルKTMテック3 27 スペインの旗 イケル・レクオナ 11 0 0 0 0 27 20th
88 ポルトガルの旗 ミゲル・オリベイラ 14 2 2 1 1 125 9th
2021年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 33 南アフリカの旗 ブラッド・ビンダー 18 1 1 0 0 151 6th
88 ポルトガルの旗 ミゲル・オリベイラ 18 1 3 0 1 94 14th
KTMテック3ファクトリー・レーシング 9 イタリアの旗 ダニロ・ペトルッチ 18 0 0 0 0 37 21st
27 スペインの旗 イケル・レクオナ 18 0 0 0 0 39 20th
2022年 レッドブルKTMファクトリー・レーシング 33 南アフリカの旗 ブラッド・ビンダー 20 0 1 0 0 188 6th
88 ポルトガルの旗 ミゲル・オリベイラ 20 0 0 0 0 149 10th
KTMテック3ファクトリー・レーシング 25 スペインの旗ラウル・フェルナンデス 18 0 0 0 0 14 22nd
87 オーストラリアの旗 レミー・ガードナー 20 0 0 0 0 13 23rd

脚注[編集]

  1. ^ マルケスの獲得より開発費に……KTM、MotoGPの予算は50億円!”. motorsport.com (2019年2月24日). 2020年2月10日閲覧。
  2. ^ トラスフレームは捨てない! KTM、独自路線の継続を強調”. motorsport.com (2019年3月25日). 2020年2月10日閲覧。
  3. ^ ドゥカティの道は辿らない! KTM、トラスフレームでのタイトル獲得を諦めず”. motorsport.com (2019年5月18日). 2020年2月10日閲覧。
  4. ^ 青木宣篤の上毛GP新聞 後輪を流しながら倒し込む!? そんなライダーを育てたKTMのちょっと特殊な走らせ方”. ヤングマシン (2020年10月12日). 2021年4月6日閲覧。
  5. ^ エスパルガロ弟、最終戦でKTMとしてMotoGPクラス初の表彰台獲得。「赤旗は“メッセージ”だった」”. autosport web (2018年11月19日). 2020年2月10日閲覧。
  6. ^ KTM、2019年MotoGP参戦体制を発表。テック3がKTM RC16のカラーリングを初公開”. モーターファン (2019年2月14日). 2020年月日閲覧。
  7. ^ MotoGP:現役引退のダニ・ペドロサ、2019年からKTMのテストライダーに就任”. autosport web (2018年10月26日). 2020年2月10日閲覧。
  8. ^ MotoGPサンマリノGP:ビニャーレスが開幕戦以来のポール。KTMのポル・エスパルガロ、2番手獲得の快挙”. autosport web (2019年9月14日). 2020年2月日閲覧。
  9. ^ KTM、ザルコ後任にブラッド・ビンダーを起用。テック3にはレクオナが昇格”. motorsport.com (2019年10月24日). 2020年2月10日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]