ゆうこう

ゆうこう
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ムクロジ目 Sapindales
: ミカン科 Rutaceae
: ミカン属 Citrus
和名
ゆうこう              

ゆうこうミカン科ミカン属常緑小高木で、ユズダイダイなどと同じ香酸柑橘類の一つ。その名前から、徳島県で栽培されているユズの近縁種であるユコウとの関係が連想されるが別種であり、長崎県長崎市の一部地域だけに実生している独自の在来種である[1]

特徴[編集]

外見はユズに似ていて、成熟すると外皮・果肉ともに鮮やかな黄色になり、果皮はユズまたはザボンに似た甘い香りがする。果肉には口当たりの良い酸味があって、水分・種は多く、また、果皮の白い部分も食べることができる[2]

分布[編集]

ゆうこう(果実)

長崎県長崎市の土井ノ首地区と外海地区に実生している。農研機構によるとユズとザボンの自然交配で偶発したものと推測されているが[3]、その来歴は明らかになっていない。樹齢100年を超える実生樹が複数本現存していることから、江戸後期から明治初期にはすでにあったのではないかと考えられている[4]

土井の首地区と外海地区の山奥にはいずれも江戸時代に潜伏キリシタンの集落があったことから、その関連性が考えられるが、その他の潜伏キリシタンの集落ではゆうこうの生息が確認されていないので、因果関係は不明である。現在でも多くのキリスト教徒が住んでいる外海地区では、その昔当時の村人たちの貧困を見かねて、その生活向上に尽力したフランス人司祭(神父)のマルク・マリー・ド・ロ(1840年-1914年)により広められたと考える人は多い[4][注 1]

長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産として世界遺産に登録された外海の出津集落大野集落では、文化財保護法重要文化的景観としてもゆうこうの畑作景観文化的景観として捉えられている[要出典]

利用法[編集]

香酸柑橘類としては最高の糖度12度以上を測定したものもあり、生食用の果実としても楽しむことができる。その他、酢の物や調味料、香り付け、薬味、おやつや飲料などの食用にとどまらず、化粧水やのど薬の代わりにしたり、風呂に浮かべたりなど、幅広く人々に愛用されている[5]

長崎市内の日本料理店が独自に開発した「ゆうこう」を使ったポン酢が、国際味覚審査機構 (iTQi)による優秀味覚賞を2013年-2017年に連続受賞した[6]。2014年より長崎県ブランド農産加工品認証制度「長崎四季畑」にも認証されている[7]。また、伝統的な食文化や食材を見直すための活動を行う世界的なNPOであるスローフードが提唱する、希少食材を守るためのプロジェクト「味の箱舟」に2008年10月31日に認定された[8]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 因みに外海地区では現在でも、ド・ロ神父により栽培・普及が進んだクレソンは「ド・ロさまセリ」と呼ばれ、その技術が伝えられたそうめんは「ド・ロさまそうめん」と呼ばれている。

出典[編集]

  1. ^ 徳嶋知則、林田誠剛、小川一紀、根角博久「香酸カンキツ‘ゆうこう'の果皮および果汁中のフラボノイド」『園芸学会雑誌』第73巻別冊2、p.397(2004)
  2. ^ 根角博久、川上正徳、高見寿隆「長崎周辺の特定地域に分布する香酸カンキツ“ゆうこう”」『園芸学会雑誌』第73巻別冊2、p.293(2004)
  3. ^ 長崎歴史文化協会 会報誌「ながさきの空」No.10 みさき道と「ゆうこう」の果樹(2003.03) Archived 2015年9月26日, at the Wayback Machine.2013年6月12日閲覧
  4. ^ a b 根角博久「ゆうこう探訪(2話)「ゆうこう」の古木分布の謎」長崎県果樹試験場『かつらぎ通信』No.3(2005)
  5. ^ 東京財団 食のたからもの再発見プロジェクト 第6弾「ゆうこう」2013年6月6日閲覧 (English version: The Yuko, a Native Japanese Citrus)
  6. ^ 長崎市公式ウェブサイト2014年2月28日閲覧
  7. ^ 長崎県ブランド農産加工品認証制度「長崎四季畑」公式ウェブサイト 2020年8月19日閲覧
  8. ^ スローフードジャパン「味の箱舟」 Archived 2012年3月16日, at the Wayback Machine.2013年6月6日閲覧