菓子袋

菓子袋』(かしぶくろ、原題:Sacks)は、アメリカ小説家レイモンド・カーヴァー短編小説

概要[編集]

『パースペクティブ』1974年冬号に「浮気The Fling というタイトルで掲載された。短編集『怒りの季節』(キャプラ・プレス、1977年11月)に収録。

編集者のゴードン・リッシュによって、「浮気」は「61パーセント」の削除を受け[1]、かつタイトルも「菓子袋」に変更され短編集『愛について語るときに我々の語ること』(クノップフ社、1981年4月20日)に収録された。

オリジナル原稿は2009年刊行の短編集『ビギナーズ』(ジョナサン・ケープ社)に収録された。

日本語版は、『』1983年5月号が初出。翻訳者は村上春樹。それから間もなくして、村上が作品のセレクトを行った短編集『ぼくが電話をかけている場所』(中央公論社、1983年7月25日)に収録される。カーヴァーの死後、中央公論社は個人全集の刊行を始めるが、本作品を収録した『大聖堂』は最初に配本された(1990年8月10日刊行)。

ロバート・アルトマン監督の映画『ショート・カッツ』が公開された際、元にしたとされるカーヴァーの9編の小説と1編の詩を収録した単行本『Short Cuts: Selected Stories』(ヴィンテージ・ブックス、1993年9月)が出版される。同書には収録されなかったが、「菓子袋」のストーリーの一部は、ジャック・レモン扮するポール・フィニガンの身の上話として映画の中にとり入れられている。

あらすじ[編集]

レス(Les)はシカゴに本社がある教科書の出版社に勤めている[2]。彼はロス・アンジェルスで開かれた西部出版業者協会の会合に出席した折、サクラメントにいる父親に二、三時間でも会ってみようかという気になった。父親はサクラメントの空港のゲートでレスを出迎え、二人は空港のラウンジに入った。

「相手はスタンリー・プロダクツの販売員だったんだ。とびっきりの美人というわけではないが、人好きのするところがあった」 父親はレスの母親と別れたいきさつを話した。

レスはシカゴ行きの機中で、父親からもらったみやげの菓子袋をバーに忘れてしまったことに気づく。

脚注[編集]

  1. ^ レイモンド・カーヴァー『ビギナーズ』中央公論新社、2010年3月30日、493頁。同書収録の「『ビギナーズ』のためのノート」(ウィリアム・L・スタル、モーリーン・P・キャロル)より。
  2. ^ カーヴァーは「サイエンス・リサーチ・アソシエイツ」(SRA)という、IBM傘下の教科書出版社で断続的に働いていた経験がある。SRAも本社をシカゴに持つ会社だった(『必要になったら電話をかけて』所収の「年譜」参照のこと)。